170センチの長身で腕を高く上げるスウィングが特徴
昨年のCATレディースでプロ入会から23日という超スピード優勝を果たした大里桃子選手でしたが、今シーズンはここまで未勝利。日本女子オープン開幕前の賞金額は約1500万円ほどでシード権確保には1000万円ほど足りない状況でした。
開幕戦は予選を通過したものの、その後は6試合連続で予選落ちを喫するなど、上位に食い込むことも少なく、苦しいシーズンを送っていましたが、日本女子オープンでは最終日最終組でプレーし、畑岡奈紗プロに勝利をゆずったものの、堂々の2位タイでプレーを終えました。
なにかきっかけはあったのでしょうか。最終日のホールアウト後、キャディを務める父・充(みつる)さんに話を聞くと、こんな答えが返ってきました。
「ずっとパットで悩んでいて、パットが悪くなったらショットも悪くなったりと、もがいていました。パットが悪いと公言しいろんな人からアドバイスをもらい、クロウグリップを4月のバンテリンの試合中に試してみました。すると、翌週のフジサンケイで予選を通過して連続予選落ちをストップできました」(父・充さん)
7試合中6試合予選落ちしていたのが、その後は24試合で予選落ちは5度。改善の糸口を見つけようと必死に日々の練習と試合を繰り返していたことでしょう。そして、あることがきっかけとなり、日本女子オープンでは一気に好調になったようです。6アンダー5位タイと絶好のスタートを切った初日の記者会見でのコメントを見てみましょう。
「クラブを契約するブリヂストンのツアー担当者からドライバーのトップの位置が上がりすぎていることを指摘され、修正すると、安心して振れるようになり、アイアンショットもよくなってきました」(大里)
初日はフェアウェイキープ14回中12回、パーオンは17回で1回はカラー。驚異的にショットが好調だったことを示しています。優勝まであと一息でしたが、3人で並んだ2位タイの賞金1185万円を加えて今季の獲得賞金額が2746万9800円と、賞金シードを確実にしました。
勝てなかったことは悔しかったと思います。しかし、シードも確定させ、ショットも復調したこの秋は、さらなる活躍を期待していいのではないでしょうか。
さて、そんな大里選手は170センチの長身を生かしたアップライトな(手の位置が高い)スウィングが持ち味です。アップライトなトップは腕だけが上がって体と腕の運動量がマッチしないと手打ちになり、力んだときにミスが出やすい傾向にあります。
大里選手の場合はどうか、最終日の練習場で撮ったスウィングを見てみましょう。
画像Aをご覧ください。オーソドックスなスクェアグリップからクラブを縦に使うアップライトなトップです。トップでのフェースの向きは正面よりでややオープン。左手首の角度も、最近流行りの手の平側に折るのではなく、甲側に角度がついています。フェースを開いて閉じる動きを入れながら打つタイプのスウィングです。
調子が悪かったころは手だけが上がり、少し背中がそっくり返る印象がありましたがトップの姿勢が良くなってバランスが良くなっています。
続いては画像B。ダウンスウィングでは左ひざを流さないように踏ん張りクラブを縦に引き下ろします。左腕を胸に当てたまま体を回転させていきます。右の画像でもまだフェースはボールを向いていないので、やや開いた状態でインパクトゾーンへと入ってきています。
画像Cのインパクトゾーンでも左腕と胸がくっついたまま振っていることがわかります。再現性を高めどちらかというと飛距離よりも方向性を重視した使い方と言えます。縦にクラブを使い、体を中心に長い腕とクラブを体の前で振るような大きなスウィングです。そして、調子の悪いときと比べると、腕の位置がやや低くなり、そのことで腕と体の連動性も増しています。
「大振りして左へ引っかけるミスはジュニア時代からのクセ。敵は外にいない、自分の中にいるんだよ」と親子で転戦しキャディを務めてきた充さんは娘に言い聞かせていたそうです。日本女子オープンでは、自分と戦うことをやり通せた、やっと満足できる結果を出せてご褒美をもらえたかなと喜びます。
富士通レディースまでの賞金ランク35位までの選手には、日米共催の「TOTOジャパンクラシック」への出場資格が与えられます。その試合への出場、そして今回手に入れられなかったツアー2勝目を目指して、頑張ってもらいたいですね。