約500名が最終ホールで藍を守った2005年
国内女子ツアーでは歴代3位となる4万6165人が詰めかけた今年の「日本女子オープン」。初日、2日目と連日、大会史上最多記録を更新していただけに‟新記録樹立“の期待も大いに膨らんだ。これまでの歴代最高は2005年の同大会の4万8677人。‟藍ちゃんフィーバー”の真っただ中で樹立されたものだった。
歴代1位のギャラリーを集めた2005年戸塚CC(神奈川県)と、今年のココパリゾートC白山ヴィレッジC(三重県)では立地を筆頭とした諸条件が異なるため単純比較はできないが「日本女子オープン」を切り口に、その盛り上がりぶりを比較した。
共通するのは両コースともに、しっかりと対策を練っていた点。戸塚CCは総勢759名、ココパリゾートCは同約450人のボランティアスタッフを確保し、当日の駐車場の警備やチケットもぎり、コース内の誘導やロープ係に配置し、大会運営にあたってもらったという。
2つの大会で異なったのが「どこに重点的に人を配置したか?」という点。
まずは戸塚CC。当時、ボランティア本部で陣頭指揮を執っていた同コースの中川幸広営業部長兼管理部長は、3日目まで首位で最終日、最終組スタートだった宮里藍の‟周辺“の警備を強化したという。
「通常、各組につくボランティアさんは4,5人程度でしたが、宮里プロの組だけは10倍の50人態勢を敷いていました。最終日は1番ホールから宮里プロの組に2000人のギャラリーがついて、大移動しましたから」(中川さん)
宮里が2位以下を大きく引き離していた展開もあり、中川さんは「これだけでは最終的に警備の手が回らなくなる」と、感じていたという。そこで、フィーバーが沸点に達する最終ホールに、当日のボランティア509名のうち、駐車場など場外警備を除く全員を投入。
「前の組についていたボランティアさんがクラブハウスに上がってくるんですけど『悪いけど、もう1回、18番に行って下さい』って言って、全員に協力してもらいました」(中川さん)
来場したギャラリー全員が18番ホールのグリーンに殺到することを見越してのこと。クライマックスへ向かうギャラリー2万1018人の‟民族大移動“の大波を、当日の509名のボランティアで対応にあたったという。
しぶこフィーバー真っ最中。警察官20名がスタンバイし、私服警官も巡回
一方で今年開催のココパリゾートCは「場外」の環境整備に力を入れた。
9月に開催された公式戦「日本女子プロゴルフ選手権」の舞台となったチェリーヒルズGCの周辺ではプレーヤーや大会関係者も、立ち往生を余儀なくされるほどの大渋滞が発生したのを教訓に、管轄する津南警察署と連携。駐車場や最寄りの久居IC、ギャラリーバスなど、コース周辺の道路などの渋滞緩和に力を入れた。
「まずは近隣住民の方に迷惑がかかってはいけない。木曜、金曜は普通にコース周辺の道は仕事に向かう方々が通勤にも使う道路なので、交通機動隊の方々のご協力、ご指導のもと、駐車場やコース周辺の道にボランティアの方々について頂き、ギャラリー・関係者の方々がコースまでの円滑にクルマで来場して頂けるよう工夫を致しました」(東本裕治支配人)
ココパリゾートCでは、コース内でも警察官と1日あたり約400人を配置したボランティアスタッフが随時、連携を取れる体制を取った。
「起きては欲しくないのですが、これだけ大勢のギャラリーの方々が来られるとどうしても起きてしまうケースがあるため、警察官の待機所を作りました」(東本支配人)と防犯対策を強化。常時20人がスタンバイし、夜間も2時間に1回のペースで周辺をパトカーが巡回。プレー中は3人の私服警官がコース内を回り、不測の事態に備えていた。
4日間合計で歴代1位(2005年)と3位(2019年)のギャラリー動員を記録した日本女子オープン。戸塚CCは延べ1842名、ココパリゾートCは約1400人(いずれも各コース調べ)が大会ボランティアとして運営に尽力。
未曽有の大フィーバーを成功裏に治めた”影の立役者“の存在も、ゴルフツアーのファンであれば「フィーバーの記憶」としてとどめておきたいところだ。