ピンがあることで狙いやすい? 弾かれそう?
「だいぶ慣れました。私は結構抜く派なんですけど、ロングパットとかは差しっぱなしでもいいから、楽なのかなとは思いますね。それでもやっぱりピンが差してあると気になることもありますね。風が吹いていて、影が出ているとめっちゃ揺れて、ショートパットだととくに視界に入るから私絶対無理です」
こう語るのは吉本ひかる。旗竿の影がラインにかかったり、風のときに揺れたりするのが気になるというのは、ゴルファーなら共感する人も多いのではないだろうか。
成田美寿々も、ロングパット、ミドルパットまではピンを差したままだが、ショートパットはピンを抜いてパッティングすることが多いそうだ。
「プロがピンに弾かれるのはみたことはないんですけど、なんか嫌だなっていうのがあるので抜きますね。先週(日本女子オープン)とかがそうだったんですけど、結構ピンが太いときがあって、そういうときはなおさら抜きます」(成田)
勝みなみも「大事なパットでは抜きたい」という。
「微妙なラインのパーパットとか、神経つかうときはやっぱりいつも通りの感覚でやりたいので抜いたりとかはしますね」(勝)
一方、日本女子オープンを2位タイでフィニッシュした際、ピンを差したままパッティングを行う姿が印象的だった大里桃子は、“差す派”だ。
「ピンを差すと、差しているところがセンターになるわけじゃないですか。狙い目ができていいな~と思うので、基本的には差しますね」(大里)というのがその理由。
ここまでの話をまとめると、ピン差しパットに選手たちはだいぶ慣れてきたものの、ショートパットだけはやっぱり抜きたいというのが多数派のようだ。プロゴルファー・石井忍はその背景をこう分析する。
「ピンを差したままパッティングすることによる悪い理由が今はもうないと言われているのです。ピンに弾かれるというのも、グラファイト製のピンフラッグなら可能性は極めて低いというエビデンスも出ています。一方でピンを差していることでカップが小さく見え、抜くと大きく見える。その(カップが大きく見える)ほうが狙いやすいという選手は抜く派なんではないかと思います。ピンを差していたほうが狙いやすい選手もいるので、どちらにしても狙いやすいほうを選んでいると思います」(石井)
たしかにプロの試合中継を観ていても「ピンに弾かれて入らなかった」という例は少ないような気がする。そういったデータが蓄積するにつれ「弾かれそう」という先入観が薄れ、「じゃあ差したままでもいいか」という意識に変化しつつあるのが現状と言えるかもしれない。
現実的なメリット・デメリットの議論が出尽くし、違和感があるか・ないかといった感覚的な部分が判断基準になってきたピン差しパット。今後も、折に触れてウォッチしたい。
取材大会/スタンレーレディスゴルフトーナメント