最終日開催の背景には、コース課の努力があった
10月11~13日に静岡県の東名カントリークラブで行われた「スタンレーレディストーナメント」は、11日の初日を終えた後、大型で強い台風19号の影響を考慮して2日目の競技中止が発表されました。
初日は105名がプレーして、予選カットは47位タイ。1オーバー以上で回った61名が決勝ラウンドに残りました。そして土曜日の時点で最終日のプレーを9ホールに短縮し、史上初の無観客試合にすることが発表されました。
約ひと月前、千葉県で大きな被害を出した台風15号の例もあり、コースの被害状況を考慮して9ホールでの決戦、そして危険回避からギャラリーの入場を制限した無観客試合という判断となりました。
金曜日の初日終了後にはスタンドをお化粧するカバーやテントが外され、風の影響を最小限に留める処置が行われました。途中中断はあったものの全選手がホールアウトできたため、初日の成績で予選カットが行われました。
2日目の土曜日の中止が発表された時点で、選手たちはホテルに缶詰めが予想され、スマホアプリのゲームをしたり、動画を見たり、ストレッチしたり、素振りしたりすると口々に話していました。我々取材陣も同じ。土曜日はホテルで「待機」です。
その土曜日は、予報通り激しい雨と風が静岡県裾野市の会場付近を襲い、コースの状況が心配されます。明けて日曜日は少し早めにコースに向かい、6時半に会場入り。コースを見てみると幸い倒木などの大きな被害はなく、18番ホールのバンカーではコース課の作業員が整備に追われていました。
彼らの奮闘の甲斐あり、最終日が9ホールに短縮されたこともあってコースは普段の姿を取り戻し、選手のプレーにはまったく差し支えない状態に戻っていました。会場の東名CCコース課の“ナイスリカバリー”です。
10時30分からのスタート時間が近づくにつれて選手が次々にコースにやってきます。しかしギャラリーのいない日曜日は、通常行われる最終日の朝の雰囲気とはまるで違っていて、コースは練習日のような静かな空気。スタート前の選手やキャディに話を聞いてみると、
「試合感がないですね。やっぱりギャラリーさんがいないと気合が入らない」(大城さつき)
「最終日の雰囲気がなくて練習ラウンドに戻ったような感じ。気が締まらないですね」(笠りつ子のキャディを務める先崎洋之プロキャディ)
と、みな違和感を覚えているようでした。とくに前週が盛り上がった日本女子オープンでしたので、それと比較すると、災害時で仕方のないこととはいえ、コース全体の熱気や騒がしさのギャップが大きく感じられたのだと思います。
最終日の9ホール決戦についても、選手やキャディに聞いてみました。
「出だしの10番、11番、12番はやさしくないから、残りの6ホールでどれだけ伸ばせるかがカギ」(菊地絵理香の川口淳キャディ)
「守らずに攻めるしかないですよね。積極的にピンを狙っていきます」(大城さつき)
と、やはりビッグスコアが出しにくいぶん、普段以上に攻めなければならないと感じていたようです。
そして9ホールの決戦を終えたホールアウト後に選手に感想を聞くと
「ギャラリーの声がないとさみしいですね。『ナイスショット!』とかの声も当たり前のように感じていましたが、やっぱりそういうのって大きいんだって改めて感じました。キャディとプレーヤーの6人で盛り上げようとプレーしていました」(菊地絵理香)
「去年まで出ていたステップアップツアーを思い出しました。普段ギャラリーさんが『ナイスオン!』と言ってくれている声が今日はないので、打った地点から乗ったのか乗らなかったのかわかりませんでした。私はやっぱりギャラリーさんがいたほうが燃えるし楽しいです」(渋野日向子)
との声。普段当たり前のようにあるギャラリーの歓声に背中を押されていたのだということを改めて感じされられたとの声が多く聞かれました。
実際、「デサントレディース東海クラシック」で渋野選手が演じた8打差の大逆転のようなドラマは、9ホールではほぼ不可能。先行逃げ切りの有利さは、普段以上に強調されることとなったと思います。最終結果は、初日に7アンダーのビッグスコアを出した黄アルム選手が、最終日も1つスコアを伸ばして逃げ切り。やはり初日のスタートダッシュが生かされた結果となりました。
大会スポンサーやテレビ局など関係者各位にとっては、3日間競技がフルにできてギャラリーにも喜んでもらえる大会がベストだとは思いますが、台風の影響を最小限におさえ最良の判断になったものと思います。
選手たちにとっては改めてギャラリーがいることで成り立っているトーナメントの大切さも感じられたようですし、次週のトーナメントは新鮮な気持ちでプレーできるのではないでしょうか。