PGAツアーアジア3連戦の初戦、韓国で行われたCJカップ at ナインブリッジズはジャスティン・トーマスがライバル、ジョーダン・スピースに並ぶ通算11勝目を挙げ幕を閉じた。最終日のチャージで松山英樹が3位タイに食い込むなど見ごたえのある大会だったがその裏で起きていたこととは?

妻が2カ月の早産で出産。保育器の中の第二子を案じながらのプレーだった

第3ラウンドの終了間際ダニー・リーは起死回生のイーグルを奪って首位を行くトーマスに並びかけ
た。

08年の全米アマチュアゴルフ選手権でパトリック・リードを破り18歳でチャンピオンに輝き一躍注目を集めたリーは、15年のグリーンブライヤークラシックでツアー初優勝。それ以来勝星から遠ざかっているが着実に実績を積み重ね今回ツアー2勝目のチャンスが目の前に広がっていた。

しかし3日目を終了したとき彼はツアーの担当者にある事実を打ち明けている。

「妻が第二子を出産しました。予定日はクリスマスの前だったのでかなり(2カ月)の早産でした。いま子供は保育器に入っています」

画像: CJカップ at ナインブリッジズを制したダニー・リー(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

CJカップ at ナインブリッジズを制したダニー・リー(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

担当者は「おめでとう!」という言葉を呑み込むしかなかった。そんな家族の事情をリーは「試合が終わるまで他言しないで欲しい」と念を押し最終ラウンドをスタートさせた。

前半はトーマスとともに3アンダー33をマークし一歩も譲らぬ展開。12番をバーディで分け合ったがそこからリーのショットが微妙に狂い始める。

「入れてはいけないバンカーにつかまってパーを拾えず、その隙にトーマスにバーディを奪われてしまった。後半のいくつかのティショットが悔やまれます」

それでも最終ホールを迎えトーマスとは2打差。前日のイーグルシーンが脳裏に甦る。2オンに成功したリーが放ったイーグルトライ。「絶対にショートはしたくなかった」と強気で打ったパットはラインに乗った。そしてカップへ……。

「入った!」と思った。だが勢いがついた打球はカップに蹴られた。バーディフィニッシュ。同じくバーディで締めくくったトーマスとの2打差は縮まることはなく単独2位での終戦となった。

ウィニングパットを入れたトーマスは優勝を派手に喜ぶかと思いきやガッツポーズすらしなかった。「タフな1日だった。ダニー(リー)は本当に手強かった。素晴らしいパットを決めたり、信じられないようなパーをセーブしたり。彼のプレーに翻弄された」と、勝者には似合つかわしくない疲労困憊の体だった。

妻の早産という切迫した事情を抱えながら世界ランク4位を追い詰め優勝まであと一歩と迫ったリー。ツアー2勝目はそう遠くはなさそうだ。

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