自分の意思でボールをコントロールしたい。それがPGAツアープレーヤーの願い
ZOZOチャンピオンシップで日本ツアー初上陸を果たしたPGAツアーだが、世界のトッププレーヤーのクラブセッティングに注目してみると、MB(マッスルバック)アイアンが非常に多く使われていることに気づく。ロングアイアンこそミスヒットに寛容な先進モデルをチョイスしているものの、5番アイアンから短い番手は今でもオーセンティックなブレードアイアンが最も高い支持を得ているのだ。
一般的には“難しい”とされるブレードアイアンがPGAツアーで高い支持を獲得していることについて、PGAツアーで使用率NO.1アイアンブランドとなっている、タイトリストのツアーサービス担当者はこう語っている。
「ツアープレーヤーのアイアン選びはとてもシンプルなものです。自分がイメージした通りの弾道と飛距離が得られ、狙ったエリアに止められること。つまり思い通りにコントロールできる性能こそが最もアイアンに求められる性能なのです」(J・Jヴァンウェゼンビーク氏)
マッスルバックに限らず、T100アイアンなど許容性を高めたモデルであっても“ツアープロファイル”と呼ばれるコンパクトなヘッドサイズを維持することで、操作性につながる短めの重心距離をキープ。プレーヤーの意思でフェースコントロールをしやすくしているのだという。
不足を感じる番手のみ新しく。コントロール系は使い慣れたモデルを。
我々アマチュアが好む“ディスタンス系”といわれるアイアンは、これとは逆にヘッドサイズが大きく、重心距離が長くなっている。自在なコントロール性能ではなく、フルショットベースでの安定したビッグボール(飛距離アップ)を念頭において開発すると自ずと違うサイズのアイアンになるわけだ。
やさしいアイアンという定義は、球筋をコントロールしたいか、飛距離を出したいかで180度違ってくる。コントロール派にとっては、どこで当ててもボールがまっすぐ飛んでしまう“ディスタンス系”オーバーサイズアイアンは難しいモノであるし、とにかく遠くに飛ばしたいディスタンス派には、フェースコントロールがシビアで、安定しにくいマッスルバックは超絶難しいものに感じられるのだ。
やさしさとは、反対側から見れば大いなる難しさとなる。多くのゴルフメーカーが少なくても4種類のアイアンをラインナップしている背景には、ゴルファーが望む「コントロールとディスタンスのバランス」が、少なくとも4段階(種類)はあるということを示しているのである。
最新アイアンの中には、ロングアイアンは大きめのヘッドサイズで作りつつ、距離が求められていないショートアイアンは、つながりを損なわない程度にあえてコンパクト目で仕上げるモデルも登場してきている(タイトリストT200、T300がその代表)。セットの中で「コントロールとディスタンスのバランス」を考えた新しいアイアンのカタチといえるだろう。
PGAプレーヤーのように5番アイアンから狙っていく気にはなれないとしても、9番アイアンやピッチングウェッジならば、我々アマチュアでもある程度カップ付近を狙い打ちしてみたくなるはずである。飛ばしではなく、ターゲットを狙うのならばヘッドサイズは小さいままにしておく。それが世界のトッププレーヤーから学ぶべきアイアン選びのポイントだろう。
アイアンの変更というと、ロングアイアンからピッチングまでを丸ごと変えなければいけないイメージがあるが、ロングアイアンの打ちやすさのために全番手をディスタンス系にして、ショートアイアンのコントロール性を犠牲にしてしまうのはもったいない話である。サポートが必要な番手のみを替え、不足を感じないコントロール系の番手は従来モデル同等をキープする。ほとんどのPGAツアープレーヤーがそうやって自分なりのアイアンセットを構築しているのだ。それを今時はアイアンの「コンビネーションスタイル」と呼ぶ。
写真/ポジション・ゼロ