「3球まで」がツアーのルールだが……なぜ1球、2球じゃないのか
まず前提として、LPGAのツアーでは練習グリーンで使っていいのは3球までと決められている。ただ「3球使いなさい」というルールでは無論なく、1球でも2球でも問題はない。それなのになぜ3球なのか? まずは蛭田みな美に聞いてみた。
「自分の場合は2メートル、4メートル、6メートルから3球連続で入れるのをノルマとしているので、3球でやっています。そういった練習のほうがメリハリもあっていいんですよね」(蛭田)
渋野日向子がカップの周りに仮想の9ホールをつくり、9ホールすべてを1パットで上がるまで続ける(ただし、2回までミスしてもOK)というパット練習を行っているのは有名だが、その練習法に少し似ている。3球連続でカップインさせることをノルマとすることで、実戦感覚で、プレッシャーをかけて練習をしているようだ。
「試合と同じ緊張感でできますし、反復性を高めて試合で使えるパッティングができるかなと思って『3球入るまで』練習しています」(蛭田)
また、単純に球数を多く打つためという理由も大きいようだ。
「タッチを合わせる練習をしているときは、3球の(数が多い)ほうが練習できるから、練習日は3球ですね」(吉本ひかる)
「LPGAで3球と決まっているからですが、沢山ストロークしたいのもあって最大の3球を使っています。でも、カップに入れる練習のときや、実戦を想定した練習のときは1球でやりますね」(諸見里しのぶ)
プロの場合キャディがカップ付近でボールを打ち返してくれることも多く、ひたすら打って距離感を体に叩き込むには球数が多いほうがいいのだろう。
女子ツアー選手を複数指導するプロゴルファー・石井忍は3球使う理由をこうまとめてくれた。
「練習日に3つ使う選手が多いのは練習と本番を切り離しているからですね。1つの場合は打つ前のルーティンを含めて本番と同じようにやるときですが、3つのときはドリルの練習をしていることが多いです。演劇に例えると、3つ使う練習は一つのシーンを繰り返し練習するイメージ。ボールひとつでの練習は最初から最後まで“通し”で練習するゲネプロ(通し稽古)のイメージでしょうか」(石井)
我々アマチュアゴルファーはなんとなく1、2球をカップに入れる練習をしがちだが、プロの場合、実戦感覚を養うためには1球、ドリルをこなす場合は3球と明確に使い分けているようだ。冒頭に挙げた蛭田や渋野の練習は、その“ハイブリッド型”といったところだろうか。
“練習”と“本番”を切り離して練習に臨むことで、より意味のある練習になるはず。みなさんも状況に合わせた練習をしてみてはいかがだろうか。