女子プロたちのなかには“長く連れ添う派”がいる一方、“最近変えたら調子がいい派”も……。なんの話かって? パター選びの話です。

これと思ったら10年使う大山、シャフトを変えて勝った藤田

「私はこれと思ったら、10年ぐらい使うタイプなんですけど、今は(替えたばかりで)まだ彼氏みたいな感じですね。旦那さんにはまだ出会ってないですね、そういう人(パター)にあったら変えないです(笑)」

画像: 今は「ピン シグマ2 アンサー」を使用している大山志保

今は「ピン シグマ2 アンサー」を使用している大山志保

そう語るのはベテランの大山志保。女子プロにパター選びについて聞いてみると、大山のように“基本は長く付き合いたい”という選手と、変えることで調子を上向きにすることに成功した選手とに意見が分かれた。

優勝こそないものの、今季何度も上位で戦った吉本ひかるは“変えない派”の一人。

「プロテスト受ける前からなので、約2年同じです。オデッセイさんのピン型タイプを使用しています」(吉本ひかる)

画像: ”変えない派”の吉本ひかるは「オデッセイ オーワークス」のピン型を使用。シャフトは31インチと自分にあったものを選んでいる

”変えない派”の吉本ひかるは「オデッセイ オーワークス」のピン型を使用。シャフトは31インチと自分にあったものを選んでいる

吉本がプロテストを受けたのは2017年。同年3月に発売された「オデッセイ オーワークス」を愛用し続けている。特徴的なのはシャフトの長さで、身長152センチと小柄な吉本は31インチと短めのシャフトを長く使用しているという。まさに自分にピッタリのものを選んでいる印象だ。

今季最高順位5位タイと存在感を示した菅沼菜々はさらに長く使っているという。

「4年ぐらい変えてないですね、グリップも4年間変えてないのでツルツルですよ(笑)。あとは元々“真っすぐ引きたい”タイプだったので、センターシャフトをずっと使っています」(菅沼菜々)

画像: 菅沼が4年間愛用しているのは「ピン CADENCE TR」。グリップの握り方が珍しく、ショットと同様インターロッキングのようだ

菅沼が4年間愛用しているのは「ピン CADENCE TR」。グリップの握り方が珍しく、ショットと同様インターロッキングのようだ

大山も長く使ったパターはグリップも変えないというが、いざ「この人(パター)!」と決めたらグリップまでも使い続けたいというのは女子プロの“乙女心”なのかも。ただ、そんな大山も最近はパターをよく替えるというから一概に言えない。

たとえば初優勝がもっとも期待される選手の一人、高橋彩華は今のエースパターの試用期間は「半年ぐらい」と短いが、今シーズンの活躍は新しい“相棒”と上手くいっている証拠とも言えそう。

画像: 高橋は半年ほど前から「オデッセイ オーワークス ツアー レッド」を使用している

高橋は半年ほど前から「オデッセイ オーワークス ツアー レッド」を使用している

もっともわかりやすく調子を挙げたのが6月に開催されたステップアップツアー「ユピテル・静岡新聞SBSレディース」を制した藤田光里。彼女の場合、エースパターのヘッドにオデッセイのストロークラボのシャフトを差したことできっかけをつかんだようだ。

「元々イップスで、中尺のパターを使っていたんですけど、見た目が変わっている(ストロークラボのシャフトはグリップ側が黒いツートン)のがいいなと思って使い始めたんですよね。見た目の雰囲気がツートンでかわったのが一番よかったのかなと思います」(藤田光里)

画像: ストロークラボのスチールとカーボン複合シャフトを採用することで好調を呼び込んだ藤田光里(写真は2019年のフジサンケイレディス 撮影/大澤進二)

ストロークラボのスチールとカーボン複合シャフトを採用することで好調を呼び込んだ藤田光里(写真は2019年のフジサンケイレディス 撮影/大澤進二)

藤田の例は、パター(藤田の場合シャフト)変更によってイメージが変わったことが、勝利を呼び込んだようだ。さて、パターを変えて勝った選手といえば、直近の試合で今季5勝目を挙げたパットの名手・鈴木愛。

「今年は重いグリーンが多くて、いいパットをしても最後に切れちゃったり、切れなかったりと、いいパットをしてても入らないということがあったんです。なにか変えるという意味で、パターを変えたいなというのと、中々思うようにストロークできなかったりすることもあったので、距離感より安定したストロークができるほうがいいかなと思って思い切って変えてみたら、良かったです」(鈴木愛)

画像: レディース向けのパター「ピン G Le2 ECHO」で今季5勝目を挙げた鈴木愛

レディース向けのパター「ピン G Le2 ECHO」で今季5勝目を挙げた鈴木愛

ちなみに鈴木は「上手い選手はあんまりいないと思うので、あんまり使いたくない(笑)」と言いつつ、好みとは違う大型パターで勝利を掴んでいる。藤田同様、大胆に替えることできっかけをつかむというパターンもあるようだ。

このように、パターを長く使う女子プロがいる一方で、あえてパターを変え、ある種の荒療治的に調子を整える選手もいるが、話を聞くと二つの派閥に分かれるというよりは、「基本的にはピン型が好き」といったような“基本”があり、それをかたくなに守るパターンと、あえてマレット型を選ぶことでガラッとイメージを変える、ふたつの“やり方”があるという印象を受ける。

我々アマチュアゴルファーは、調子が悪いからといってコロコロパターを変えたりせず、まず「自分はコレ!」という“愛妻”を見つけるところから……かも。

取材大会/樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 撮影/小林司

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