レディースモデルをツアープロが使うのは超異例!?
「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」で、シン・ジエとのデッドヒートを制し、今季5勝目となる勝利をあげた鈴木愛。鈴木と言えば、なんといってもパッティングの上手さが最大の武器。この試合でも、最終日の16番、17番で入れごろ外しごろの距離をねじ込み、18番でもウィニングパットとなるしびれる1.5メートルを沈めた。まさに圧巻のパット名手ぶりだった。
しかし、自身は今季、パッティングに不調を感じていたという。昨年の最終戦、ツアー選手権リコーカップの最終日に、18番で1メートルのパーパットを外したことも思い出される。平均パットのスタッツは、2016年から1位、2位、1位ときて、今年は6位だ。それでも上手いことには変わりないが、たしかに、以前よりも短いパッティングを外すことが多くなったようにも見える。
そんな中、力を発揮していたのが、鈴木が使用したパター、「G Le2エコー」だ。鮮やかなマゼンタのカラーリングが目を引くこのパターは、ピンのレディースモデル。ツアープロがレディースのクラブを使うケースは非常に珍しいが、鈴木はひと目見て、ピンだけに文字通りピンときたらしく、すぐに試合に投入している。
このパターの使用を開始した直後に、「ニトリレディスゴルフトーナメント」で勝利を上げ、早くも2つ目の優勝をこのパターで勝ち取った。鈴木自身は、ヘッドに安心感があること、打感が軟らかく、スライスラインが打ちやすいことが気にいっているという。
お値段4万3000円とチトお高いが……
ならば、打ってみないわけにはいかない。早速、このレディースパターを試打してみた。鈴木は32インチで使用しているが、標準仕様は33インチだ。もちろん長さはカスタム対応可能だ。
まず構えてみると、丸っこくて思った以上に大きさを感じる。ボディはアルミ製、ソールのウェイトがステンレス素材ということだが、細やかに作り込まれていて、レディースにありがちな安っぽさとは無縁だ。ヘッド重量は360グラムもあって、ずっしりと重みを感じるが、ヘッドのバランスが良いのか、ストロークはスムーズに出来る。
ボールを打ってみると、直進性とミスへの強さに驚く。多少雑に打っても、まっすぐに転がり、ショートパットのカップイン率が高い。良く言えば安心感があり、悪く言えばやや鈍感にも感じる。実にやさしいパターで、ツアー屈指のパターの名手である鈴木が使うには、やさしすぎるとさえ感じる。
スライスラインが打ちやすいというコメントも面白い。フェースの開閉が少ない「G Le2エコー」のようなフェースバランスの大型パターは、ボールがつかまりきらないことがままあるのだが、軟らかい打感でボールが乗ってくれるので、しっかりと狙ったラインに打ち出せているようだ。
このパターは、高速グリーンへの対応用という話もあるが、この性能から推測されるのは、パッティングへの不安を解消、特にショートパットでの安心感を求めているということだ。事実、勝負どころの上がり3ホールでは、傍目には危なげなく、パットを流し込んだ。パターのやさしさが、さらに自信を与えているのではないだろうか。
魔法のようにカップインする鈴木のパッティングを真似するのは難しいが、良いものなら先入観なく使う姿勢は、アマチュアにも参考に出来るだろう。価格が4万3000円税抜(※長さ調整機能付き)と、やや高額ではあるが、試してみる価値はありそうだ。