方向をたしかめつつ、自分のスウィングのクセも矯正している
ツアーの練習場は芝の上からボールを打つため、街のいわゆる打ちっ放しのように足元にマットがない。そのため、体の向きやターゲットラインを確認するためのスティックを足元に置いて練習するのだが、女子プロたちはそこにさらに“ひと工夫”を加えている。

(画像A)藤本麻子はボールの先にスティックを置いている
藤本麻子は、ボールの先、ターゲットラインにスティックを置いて練習している(画像A)。これは、「目標とボールに対して目線とフェースを合わせやすいんですよね」(藤本)という。
目標に対してより正確に構えるために、このような使い方をしているようだ。

ボールの先、ターゲットラインにスティックを置くことで”目線”と”フェース”が合わせやすく、よりショットのイメージがしやすくなると藤本麻子
自分から見てボールの奥側にアライメントスティックを置いている江澤亜弥は「方向の確認」をしつつ、自分のクセをチェックもしているという(画像B)。

(画像B)江澤はボールの“奥側”に置く派
「テークバックでクラブがアウトサイドに上がっちゃうことが多くて。ボールの外にスティックを置くことで、体の近くを通すように確認しています」(江澤亜弥)

「ターゲット方向の確認」と「テークバックの上がり方の確認」のふたつを意識しているという江澤
江澤のようにアライメントスティックを複数の目的で活用する選手は他にもいる。
ドローヒッターの大西葵は「ドローが強すぎてしまうことがあるので、ボールの手前にスティックを置いて、ヘッドが下から入らないように意識していますね」(大西)という(画像C)。

(画像C)見ての通り、大西はボールの手前、かなりボール寄りのところにスティックを置いている
見てみると、大西が置いているのはかなりボールの近く。正確なインパクトができる女子プロならではの練習法で、矯正効果は高そう。
先週の「三菱電機レディス」の練習日では、インパクトで手元が浮いてしまうのが悩みという江澤に対し、大西がアライメントスティックを使った練習法を教える一幕もあった。それが、アライメントスティックを斜めに差し、その下に手元を通すようにするというもの(画像D)。

(画像D)アライメントスティックがインパクト時の手元の上にくるように芝に差すことで、手元の浮きが抑えられるという練習法を江澤に伝授する大西
江澤は「え、怖い(笑)。難しい!」と言いながらも、動画を撮ってもらいながらトライ。手元が浮かないインパクトの感覚をつかんでいた。

初めてこのドリルを取り入れた江澤。最初は手元が当たるかもという不安から恐る恐る試していたが、何度か打つうちに手元の浮きを抑えられるように修正をしていた
一方、あくまでも方向の確認のためにアライメントスティックを使っているのが三ヶ島かな。三ヶ島は、スタンスとボールの間に棒を置くというスタンダードな使い方をしているが、ユニークなのは日によって1本だけ置く場合と、2本置く場合があること。ちなみに取材日は、足元に2本の棒を置いて練習していた。
「調子が毎日変わるので、その日の調子で1本なのか2本なのか決めています。朝の練習で1本スティックを置いて(方向を)確認してもよくわからないなというときは2本置いてレールみたいにしたほうが、わかりやすくなるんです。本当、日替わりですよ」(三ヶ島かな)

完全に「方向の確認」のみに使用しているという三ヶ島かな。2本使うことでより確認しやすくなるのだとか
と、このようにたかだか1本か2本の棒だが、その用途は様々。アライメントスティックは、女子プロの練習を支える縁の下の力持ち的アイテムであることがわかる。
アマチュアゴルファーでも、ナイスショット! と思った球が右に飛んで行って、同伴プレーヤーに「いま、右向いてたよ」なんて言われた経験のある人は多いはず。ターゲットに対して正しく構えることはゴルフの基本であり、プロでもそれをおろそかにはしていない。
アマチュアの場合は芝の上から練習するよりマットの上で練習する機会のほうがはるかに多いはずだが、それでもしっかりと自分がどこを向いているかは確認しておいたほうがいいだろう。
ちなみに、アベレージゴルファーである記者も自分の練習にものは試しと今回女子プロに教えてもらった方法を試してみたところ、一番おすすめしたいなと思ったのは三ヶ島式。
三ヶ島がレールのイメージといったように1本では線だったものが2本になると「面」となり、非常に方向がとりやすいと感じた。ぜひ、試してみていただきたい。
撮影/小林司