1コマ「6万円」でも受けられないほどの人気ぶり
私は年に数回取材や勉強会などで、海外のゴルフコーチに話を聞きに行きます。そのほとんどはアメリカやヨーロッパですが、何度か中国にも訪れたことがあります。国の政策によって一般人のプレーが制限されていると言われていますが、ナショナルチームを設置して選手の育成に力を入れ、規模は大きくはありませんが国内プロツアーも存在しています。
以前と比べピラミッドのすそ野が格段に拡大して、頂点のレベルも上がっている中国のゴルフシーン。それを支えているのが欧米からやってくるコーチたちです。ゴルフのレベルではまだまだ発展途上の中国。そこに教えに行くというと一見都落ちのように思うかもしれませんが、実態はその逆です。
教えに来るのは主に欧米でスキルを学んだティーチングプロです。彼らは自らの経験と知識を持って、中国の富裕層や成長が期待できるプロにティーチングを行っています。
中国ナショナルチームのコーチを務めるマイケル・ディッキーもその1人です。マイケルはスコットランド出身のコーチで、もともとはレッドベターアカデミーでティーチングを学んでいました。中国にわたってはや14年。今では国内に3カ所のレッスン拠点を構える売れっ子コーチです。
マイケルが中国に来たころには、スウィングを体系的に理論立てて教えられるコーチが少なかったそうで、彼はそれまでに学んだことを惜しみなく伝えていきました。そうしているうちにレッスン生が増え、プロやジュニアを教えるようになり今では国内トップレベルの選手のティーチングを行うまでになりました。
中国を代表する男子選手リー・ハオトンや、中国ツアーの賞金女王となり、日本のプロテストにも合格したばかりのセキ・ユウティンはジュニア時代にマイケルの指導を受け基礎を築きました。スウィング理論は解析システムや道具の進化で日々アップデートされています。そうしたことを学び続けながら後進の育成にも力を注ぎ、今や彼のレッスンは1コマ6万円では受けられないほどの価値を得るまでになりました。
アジアではコーチも成長ができる
マイケルは現地の言葉をほぼネイティブのレベルで話すことができます。また自らは情報の量や質で優位な立場にありますが、それを一方的に教えているという感覚はありません。レッスン生やさまざまなプレーヤーから、常に学べることはないかという姿勢を持っています。先進国の人間が情報弱者に啓蒙するという、宣教師のような姿勢ではありません。
「いいコーチでいるには、いい生徒が必要だと思うんだ」
レベルの高いティーチングを行うためには、教えたことをしっかりと実行できるレッスン生の存在が不可欠だといいます。コーチの助言を正確に理解して吸収する。分からないことがあれば自分の言葉で質問ができる。当たり前のように聞こえますが、こういったことができるプレーヤーは意外と少ないものです。
そして、一般論ではありますがアジア人はそのようなコミュニケーションができる人が多い気がします。欧米のプレーヤーはいい意味でも悪い意味でも、効率を重視するのでプロセスに重きを置くことが少ないからです。
ゴルフ後進国のアジアはビジネス的な観点でブルーオーシャンですが、教わる側の気質も欧米のコーチを引き付ける要因になっているのかもしれません。異国の地でどん欲に学び続けるコーチを見てそう感じました。
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