サンドウェッジはバンカーからの脱出がもっとも得意なクラブ

バンカーからの脱出を目的として生まれたサンドウェッジ。名手ジーン・サラゼンの「9番アイアンのソール(底)に角度をつければバンカーからの脱出が容易になるのでは?」という閃きから生まれたクラブで、14本のクラブセッティングの中でも必須の1本となっている。

画像: サンドウェッジはどう選ぶ? (撮影/野村知也)

サンドウェッジはどう選ぶ? (撮影/野村知也)

なぜ必須かといえば、それはグリーン周辺のバンカーからピンに寄せる(グリーンに乗せる)のがもっともやりやすいクラブだからということになる。そして、サンドウェッジがバンカーから脱出させやすい理由、それが、サラゼンが9番アイアンのソールにハンダでつけたという膨らみ=バウンスの存在だ。

サンドウェッジのソールはなぜふくらんでいる?

たとえば、ドライバーの底面にはほぼ角度がない。空中にティアップされたボールを打つのが用途の99.9%であるドライバーは、接地させて使うクラブではないため、ソールに工夫を凝らす必要がないからだ。

そんなドライバーとサンドウェッジのソール面を見比べてみると、サンドウェッジのソールは平らではなくふくらんでいる(角度がついている)ことがわかる。このふくらみがバウンスだ。

砂地から打つ場合、ボールの手前にリーディングエッジ(フェース面の“刃”に当たる部分)が突き刺さると、ヘッドスピードが大幅に減衰し、クラブが抜けずにボールを脱出させることができない。

とはいえ、ボールだけをクリーンに拾うのは非常に難しく、距離感も合わせにくい。そこで、リーディングエッジではなくソールを先に接地させ(意図的にダフらせ)、砂ごとボールを外に運び出すように打つ技術がグリーン周りのバンカーでは求められる。

バウンスがあることで、砂の中に入ったクラブは突き刺さらずに前に進んでくれる。その結果、ボール周辺の砂ごとボールをバンカー外へと出すことができる。リーディングエッジからクラブを入れるのではなく、ソールを先に接地させるのがバンカーショットの最大のキモであり、バウンスが出っ張っていることで、それがやりやすくなるというわけだ。

クリーンショットを狙う場合バウンスは必要ないが、砂ごとボールを出す=エクスプロージョンというバンカーショットの基本を行う上では、非常に重要になってくるのだ。

画像: バンカーショットはボールを砂ごと飛ばす必要がある。それにはサンドウェッジが一番やりやすい

バンカーショットはボールを砂ごと飛ばす必要がある。それにはサンドウェッジが一番やりやすい

もちろん、バンカー以外にもラフからや、バンカー越えで球を浮かせたい場面、スピンを効かせたい場面などではアプローチ用クラブとしても大活躍するし、60〜80ヤード程度のショットで使うケースも多々ある。使うシーンが極めて多く、その多くの場合で「サンドでなければ」という替えの効かない性能を持つことから、サンドウェッジは“必須級”ということができるわけだ。

サンドウェッジのロフト選び。56度か、58度か

さて、ではビギナー、あるいは100切りを目指すレベルのゴルファーは、どんなサンドウェッジを選べばいいのだろうか。

サンドウェッジは、ショップではウェッジのコーナーにある。ウェッジのコーナーに置かれるクラブは多くの場合番手ではなくロフト角の数字がソールに刻印されており、だいたい45度程度から64度程度までが売られている。

サンドウェッジはそのなかで54〜58度程度のロフトのクラブを指すのが現在では一般的だが、54度、55度ロフトは一般的ではなく、現実的には56度か58度かの2択となる。たかが2度とあなどるなかれ、この2度には使い勝手において大きな違いがある。

多くのプロや上級者は、58度のウェッジを愛用する(PGAツアーでは最近56度ウェッジを使う選手が増えているが、彼らはその下にさらに60度や64度のウェッジを入れている)。これはなぜかといえば、58度はよりスピンをボールにかけやすく、よりボールを上げやすく、より飛ばさないショットを選択しやすいから。

ただ、ビギナーや100切りを目指すゴルファーにとっては、58度を使うことで得られるスピンや、高さは、飛距離のコントロールはほぼ無用といっていい。反対に、ロフトが寝ていることで58度は56度に対してボールの下をくぐるなどのミスが出やすく、56度に比べて「飛ばない」という問題も出てくる。

56度のサンドウェッジはボールを「前」に飛ばしてくれる

サンドウェッジは飛距離を求めるクラブではないのだから飛ばなくてもいいではないかと思われるかもしれないが、サンドウェッジが「飛ぶ」ことが重要ば場面はある。たとえばバンカーショットでアマチュアが脱出に失敗するケースは、空中に「上がらない」のではなく、前に「飛ばない」のが原因であることが多い。

画像: PGAツアー選手などに見られる「52度、56度、60度」のウェッジセッティング。アマチュアには56度のサンドウェッジが扱いやすい(撮影/増田保雄)

PGAツアー選手などに見られる「52度、56度、60度」のウェッジセッティング。アマチュアには56度のサンドウェッジが扱いやすい(撮影/増田保雄)

中上級者であれば、60度のウェッジや64度のウェッジでバンカーショットを行う“難しさ”は理解できるだろう。それは「飛ばない」難しさといえ、サンドであってもある程度ボールが前に行ってくれることはやさしさにつながるのだ。

とはいえ、もちろん58度だとダメというわけではまったくない。ただ、サンドウェッジのロフトはある程度小さいほうが、扱いやすさにつながるということは覚えておくといいだろう。一般的でないと先述したが、54度、55度のサンドウェッジでも問題はない。

もちろん、アイアンからの流れで、「S」あるいは「SW」とソールに刻印されたクラブを使っている場合、それはそのまま使用してなんの問題もない。それらのサンドウェッジはアイアンからの流れで上手く設計されていることが多く、アイアンそのものが極端に使用者に合っていないというケースを除いては、無理にそこだけ「単品ウェッジ」に変える必要はない。

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サンドウェッジ最大の特徴「バウンス角」の選び方

さて、ロフトが決まったら、次はバウンス角のチョイスとなる。56度、あるいは58度はサンドウェッジの中心的番手なので、大手メーカーのウェッジの場合、複数のバウンス角を選択することができる。

画像: 赤線で示した部分がバウンス角だ

赤線で示した部分がバウンス角だ

一般に、バウンス角8度以下のサンドウェッジをローバウンスウェッジと呼び、12度以上のものをハイバウンスウェッジと呼ぶことが多いが、オススメは迷わずハイバウンスウェッジ。8度と12度のものを選べるとしたら、後者を選んだほうがやさしく使える。

サンドウェッジのバウンス角は大きいほどバンカーショットのハードルが下がる

理由は、すでに述べたようにバウンス角が大きいほうがソールから先に地面に接地しやすく、より砂ごとボールを運びやすくなるから。つまり、よりバウンス角の大きいウェッジのほうが、バンカーショットのハードルが下がるからだ。

バンカーからの脱出はビギナーにとって非常に大きな関門となるだけに、それをやりやすくしておくのは非常に重要だ。もちろん、たとえば56度でバウンス角12度のウェッジを使っているといかにも初心者っぽくて恥ずかしいなんてこともまったくないし、ずっと使い続けることも可能だ。

ではローバウンスウェッジはなんのためにあるのかといえば、大きすぎるバウンスを「邪魔」と感じるプロ・上級者のためにある。入射角をコントロールし、テクニックを駆使したいゴルファーは、ローバウンスウェッジを好む傾向にある。

画像: バウンス角によってウェッジの使い勝手は変わる

バウンス角によってウェッジの使い勝手は変わる

また、最近は同じモデルであってもソール形状を選ぶことも可能だ。ざっくりの説明となるが、ソール幅は広いほうがやさしく、狭いほうが上級者向け。ソールが面取りされていればされているだけ上級者が好む形状となっていることが多い。

あるウェッジデザイナーが、「迷ったらフルソール(面取りされていないもの)」と発言していることからも、最初は面取りされていない、ある程度ソールに幅があるサンドウェッジを選び、腕前が上がり、その必要性を感じられるようになったら面取りされたソール形状を選ぶのがいいだろう。

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サンドウェッジのシャフト選び

最後に、シャフト選びについてだが、これは使っているアイアンと同じものをチョイスするのが一般的。カーボンシャフトであればウェッジもカーボン。スチールならスチールというのが基本だ。

ただ、もちろんカーボンでもスチールでもモデルによって重い軽いがあり、クラブセッティングの基本はクラブ(番手)が短くなるほど重くすることなので、わからなければアイアンをショップに持ちこんだり、シャフトの銘柄を写真に撮るなどして、それと合うシャフトをショップ店員に選んでもらうといいだろう。

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