三井住友VISA太平洋マスターズは過去2勝と相性がいい大会
先週に比べると良くなっているという本人のコメントの通り、現地でチェックした石川遼選手は、かなり復調しているように感じました。
昨日の練習日に9ホールを共にしたアンソニー・クエイルに聞いても「遼のドライバーは安定していたし距離も出ている。2勝しているし遼に合っているコースだと思う」と話してくれました。それでも本人は「修正点はすべて」と言います。
「どうしてもドライバーに引っ張られると他がおろそかになってしまう。そこが自分の良くないところ。先週の2日目にドライバーを抜いて3番ウッド以下でプレーしたことによって、強制的にドライバーのことを考えない環境に置いたので、そこから気持ちが切り替わって、このスウィングで打てればドライバーは大丈夫かなというところまで行って、(今週)ドライバーを打ってみたら、大丈夫でした」(石川)
石川が調子を崩したのは10月初週の「トップ杯東海クラシック」の頃から。風が強かったことでアイアンでパンチショットを多用したことをきっかけに、アイアンショットが悪くなりドライバーも右へのミスが少しづつ出るようになっていったようです。
予選落ちした先週、弾道計測器のトラックマンでドライバーショットを計測すると、アタックアングル(入射角)が2連勝するなど夏場の調子が良かったころは3度アッパー軌道であったものが0度になっていたそうで、それが今回の不調の大きな原因のひとつと考えていると言います。
画像Aは昨日の練習場で計測した石川選手のドライバーショットのトラックマンデータですが、アタックアングルは3.8度と、アッパー軌道でボールをとらえられています。スピン量は2143回転/分と少なく、キャリーで300ヤードを超える数値が出せています。
アタックアングルが0度でも悪いことはありませんが、3度のアッパー軌道と比べるとスピン量は増えることで曲がりの幅も増しますし、同じ現象がアイアンショットでも起きていたとすると球筋をコントロールすることが難しくなっていたことは容易に想像できます。
とはいえ、完璧にコントロールできているというわけではなく、練習ラウンドの9番ホールでは右の林に打ち込む様子も見られました。そこから枝の下を通し、花道を使って1メートル弱のバーディチャンスにつけたショットがお見事でしたので、そのことを会見で聞いてみました。
「曲がらないことも大事ですが、曲がることを恐れる必要はまったくないと思いました。曲がったところからどうリカバリーするか。ただ、曲がることを恐れないから曲がってもいいというわけではなく、曲がることを恐れないということはありつつも、曲がらないスウィングを探求するということ。とくにドライバーでは一日一回でも曲げてしまうとダメだという感覚が今でもある。いろんなクラブがあってのゴルフなのでそこは上手く付き合ってやっていきたい」(石川)
素振りでは切り返しで左のひざを割るように動かしクラブを寝かせる動きを繰り返します。できるだけ回転を止めずにクラブを体から遠ざけるようなイメージです。実際のスウィング(画像B)を見てみると、インパクト(画像B左)では腰の位置はスタンスの真ん中にあり左への移動は少なくその場で回転しています。
そのことでややアッパー軌道で振れています。そこからフォロー(画像B右)を見ると左足が少し動いていることが見てとれます。これは左サイドの回転を邪魔しないようにあえて動きを止めないようにしている動きです。
昨年の優勝者は飛距離の出る額賀辰徳でしたが、松山英樹監修によるコース改修で生まれ変わった太平洋クラブ御殿場コースは飛距離のある選手に有利なコースとも言えます。今週は竹安俊也の帯同を務めるベテランの守谷一隆プロキャディによるとグリーンは止まるけど速いと言います。
「10年以上ここでバッグを担いでいますが、コンディションは素晴らしいです。今日の雨のせいもあってフェアウェイからであればボールを止められます。でも転がすと速い。1日2アンダー、4日間で8アンダーにすれば上位で争えると思います」(守谷)
絶好のコンディションで大会を迎える復調の兆しをつかんだ石川遼がどんなプレーを見せてくれるのか。期待して見守りたいと思います。
最後にミニ情報。今大会は、5番、6番、7番ホールの一部に「無料観戦エリア」を設けるそう。復調した石川遼選手の300ヤード超ショットを見物に、気楽に足を運んでみてはいかがでしょうか。