三浦桃香やアン・シネらレギュラーツアーで戦う選手たちに、安田祐香、西村優菜らプラチナ世代、そして現高校3年生世代も加わって例年にない大激戦となった今年のLPGA(日本女子プロゴルフ協会)最終プロテスト。そこに挑んだのが、今年レギュラーツアー27試合を戦った石井理緒。「1年間、プロテストのことしか考えていなかった」という19歳に、伊藤園レディスの練習日に話を聞いた。

残り7ホール。外したら不合格のパーパットをすべて沈めた

100人が参加し、20位タイまでの少ない椅子を争った今年のプロテスト。2度目の挑戦となった石井は、初日を2アンダー8位タイと順調に滑り出すと、2日目も2アンダー、3日目も1アンダーと順調にスコアを伸ばし、5アンダー5位タイという絶好の位置で最終日を迎えることになる。

「3日目までは100点でした。毎日2つずつ伸ばそうと目標を立てていて、ほぼ完璧にできていました」(石井理緒、以下、石井)

画像: プロテストに見事合格した石井理緒(写真は2019年のアースモンダミンカップ 撮影/矢田部裕)

プロテストに見事合格した石井理緒(写真は2019年のアースモンダミンカップ 撮影/矢田部裕)

3日目終了時点での20位タイのスコアはトータルイーブンパー。石井は「テストを通過するには(最終日)3オーバーまでなら大丈夫」と、最終日のプレーに向かう。

理想的展開から大幅リードを持って臨んだプロテスト最終日。そこで、石井はゴルフの恐ろしさと直面する。あれよあれよと6つスコアを落とし、気がつけば11番を終えてスコアはトータル1オーバーにまで後退。

あとになってわかることだが、もしその7ホールで1つでもスコアを落としていたら石井はプロテストに落ちていた。その土壇場、崖っぷちの状況から石井は7連続でパーをセーブ。18位タイ、通過した中での“最下位”で見事プロテストを通過した。

崖っぷちからの脅威の粘り。それができた背景には、ふたりの人物の影響があったと石井はいう。

一人は、鈴木愛を育てたことでも知られるコーチ・南秀樹。

「実はプロテストの1カ月前から南秀樹先生にお願いして、前半戦から課題としていたアプローチとパターをぎゅうぎゅうに詰め込みました」

という1カ月間の特訓の成果が、7連続パーの技術的背景。そしてもう一人、南秀樹のアカデミーのインストラクターであり、前半戦で石井のキャディを務めた栗永遼からは、気持ちの面で教わったことがあった。

画像: 「伊藤園レディス」の練習日もアプローチとパッティングを徹底して練習していた

「伊藤園レディス」の練習日もアプローチとパッティングを徹底して練習していた

「私は自分の意志があまりなくて、自分がこういう風にしたいとか、こういう球が打ちたいとか、そういうのがあまりなかったんです。そのことを前半戦ずっとバッグを担いでくれた栗永さんが指摘してくれて、そこからちょっと変わったかなと思います」

栗永が石井に伝えたのは、「その1打はお前だけの1打じゃないぞ」ということ。ファン、スポンサー、家族、キャディ、コーチ……様々な人の思いが、ツアーを戦う選手の1打には乗っかる。そのことを自覚したことで、1打に対する時間のかけ方、思いの乗せ方に変化があったのだという。

また、レギュラーツアー27試合を戦う中で、鈴木愛などトップ選手の姿を見、「シビれるパットを入れて、パーをとり続けることがすごい」と感じたことも大きかったようだ。結果的に、そのうちのどれかひとつでも外していたらプロ合格は果たせていなかった7つのパーパットをすべて沈め、石井理緒は晴れてプロになった。

「(プロに合格して)全然違いますね……(気持ちが)ラクです(笑)。1年間、去年プロテストに落ちてからそのこと(次回のプロテストのこと)しか考えていませんでしたから。試合の結果が悪いと、落ち込むのではなくて『(この調子で)プロテスト大丈夫かな』って考えてしまったり。合格して、試合に集中できます」

画像: プロテストを1位通過したイ・ソルラ(写真左)と一緒に“同期”で練習ラウンドをプレーした石井

プロテストを1位通過したイ・ソルラ(写真左)と一緒に“同期”で練習ラウンドをプレーした石井

つねにプロテストのことを頭の片隅におきながら戦った27試合を終え、晴れてプロになり、プロとしての“最初の試合”に臨む石井は、明るい笑顔でそう語ってくれた。

「QT(来季の出場優先順位を決める予選会)を上位で突破して、来年は前半戦から全部の試合に出られるように頑張りたいです。今年はプロテストがあって、なんとなく気持ちが乗らなかったこともあるけど、合格して、思いっきりやれるかなと思うので、ツアーで頑張りたいです!」

年が明けたらハタチになる新星の活躍に、注目だ。

取材大会/伊藤園レディスゴルフトーナメント

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