静岡側から見るか、山梨側から見るか
秋のビッグトーナメント、「三井住友VISA太平洋マスターズ」が開幕した。筆者が取材に行った火曜日は晴天で、富士山が素晴らしく綺麗に見える幸運に与った。会場である「太平洋クラブ御殿場コース」は昨年、リース・ジョーンズ氏によってコース改修が行われたが、“世界遺産である富士山の景観がより映えるように”ということが、そのリノベーションのコンセプトのひとつに上げられていた。
富士山の麓にある静岡県御殿場市は、街のどこからでも富士山が見える、いわば生活の中に富士山がある街だ。「太平洋クラブ御殿場コース」も多くのホールで印象的な富士山の姿を見ることができる。御殿場からの富士は、至近地域ならではの格別の存在感が特徴だ。
ゆったりとしたレイアウトのOUTコースから見る富士山や、17番ホールのグリーンからティグラウンド側を振り返った時に見える大きな富士山は、この国内屈指の名コースの中でも、とりわけ印象的な景観だ。天気が良ければ、今週のトーナメント観戦をより楽しめる要素になるだろう。
ゴルフの内容はともかくも、ゴルフ場の美しい景色は後々まで記憶に残るものだ。富士山麓のゴルフ場にはそんな印象的な景色が多くある。富士山は、曇ってしまうと至近からでも見えないことが多い。しかし、季節によって雪の量が変わり、雲があることでまた様々に印象的な姿を見せる。天候との一期一会がまた、そんな景色との邂逅を特別なものに感じられる。
静岡側の雄大な富士も素晴らしいが、山梨側の無骨な存在感がある富士も格別の美しさがある。「富士クラシック」や「鳴沢ゴルフ倶楽部」など、力強い自然のなかに、より豪壮な富士の景色を見ることができるコースが数多くあるのだ。
表富士の代表格が「太平洋クラブ御殿場コース」とするなら、山梨県側の富士山は、「富士桜カントリークラブ」を推したい。パー5の6番ティイングエリア付近の池に見える逆さ富士は絶景で、富士山だけが持ち得る印象的な景観を楽しむことができる。コースの大改造があって久しいが、18番ホールは特にグリーン周りがガラリと変わり、雄大な富士山の景観とスケールの大きなグリーンコンプレックスが見事に調和している。
富士山は、周辺のゴルフ場でも山の角度などによって上手く見えないときもあれば、少し離れたゴルフ場から美しく見えることもある。神奈川県の平塚富士見カントリークラブもそのひとつで、平塚コース18番のティイングエリアからは、末広がりの見事な稜線を描く富士山を一望できる。距離があるからこそ、かえってその雄大さがわかるというものだ。
11月に入り、富士山はちょうど美しい雪景色が楽しめるようになった。太宰治の「富嶽百景」ではないが、見る場所によって姿を変える富士山の景色を楽しむにはいい季節だろう。