野芝や高麗芝が多い日本のコースでは冬に突入すると緑色の芝が枯れ、黄みを帯びた枯れ芝に変化する。そんな「枯れ芝」に緑の着色を施すコースは多いが、これが芝の発育、プレー環境、コース運営の全てにプラスに働いているという。どういうことか?

千葉県夷隅郡にある本格的なアスリートコースとして有名な「マクレガーカントリークラブ」。同コースは首都圏にあるコースのなかでは、冬でも比較的温暖な気候である程度、太陽の温もりを感じながらプレーできることで知られているが、それでも本格的な冬到来となる12月以降は野芝、高麗芝からなるティイングエリアやフェアウェイ、ラフなども枯れ芝に装いを変える。

画像: マクレガーCCでは、冬の到来とともにフェアウェイなどを中心に「緑」の着色剤を散布する

マクレガーCCでは、冬の到来とともにフェアウェイなどを中心に「緑」の着色剤を散布する

このタイミングになると同CCでは、枯れた芝に芝の養生に有効な成分を配合した緑色の着色剤を散布する。

これにより景観の美しさが保たれるのは周知の通り。ただ、実はメーンの目的はあくまで芝の養生にあるという。マクレガーゴルフの松下健氏が、こう説明してくれた。

「うちのコースの野芝や高麗芝は、芝の分類で言うと『暖地型芝』と言って、気温が15度以下で生育が遅くなり、10度以下で完全に生育が止まります。そんな枯れ芝に着色剤を散布することで、冬の太陽からでも光合成をしやすく、芝が摂取する栄養の吸収を高める狙いがあるのです」

単純に景観のため、というわけではなく、枯れた芝を人工的に「緑」に復元させることにより、温度の低下により枯れつつあった芝を再度、活性化させることができるというわけだ。

また、この作業をやっておくことによって、着色を行うのと、行わないのでは、翌年の春以降に自生を再開する芝の「目覚め」が、約1カ月も変わるというから驚きだ。

「外部を緑に着色した枯れ芝は、基本的には休眠中であることに変わりはないのですが、芝が休眠から目覚めるのも早くなるのです。何もしなければ、4月の本格的な春の訪れから再び生育しだす芝が、冬を超えて暖かくなりつつある3月上旬ぐらいから、再生を開始します」

「ロストボール」が減る!恩恵はプレーヤーにも

さらに「着色」の恩恵は、プレーヤーやコース運営にも還元されるという。

同CCのみならず、一般的に冬のコースでは白いゴルフボールは探しにくくなる。コースそのものに濃淡をつけることにより「『枯れ芝のコースに比べて、ボールが探しやすい』というお声はよく頂きますね」(松下氏)とロストボールを未然に防いでくれる効果も期待できるのだ。

画像: 写真左が「枯れ芝」に埋まったボール、右が着色したフェアウェイ上にあるボール。見た目にも「探しやすさ」は明らかだ

写真左が「枯れ芝」に埋まったボール、右が着色したフェアウェイ上にあるボール。見た目にも「探しやすさ」は明らかだ

ショットしたボールを発見しやすいということは、必然的に組ごとのプレー進行も速くなる。

キャディをつけない完全セルフプレースタイルの同CCにおいて、濃淡のハッキリしたコースレイアウトはプレーファストにもつながり、休日などの繁盛日でも前後の組が詰まるのを未然に防ぎ、円滑なプレー進行にひと役買っている。これは、プレーヤーにとってもコース運営においてもメリットだ。

約10年前からこの取り組みを開始した同CCでは、年間で約100万円の予算をかけて毎年、この作業を行っているという。

決して安い投資ではないが、コースの命でもある「芝」のためにもなり、お客にも、ゴルフ場を経営する側にも利点がある。まさに“一石三鳥”の「冬の着色」と言えそうだ。

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