6番アイアンは「長いアイアン」になっている
6番アイアンはかつてはミドルアイアンと呼ばれ、アイアンセットの文字通り中心に位置する番手だった。しかし、それはアイアンセットが3番アイアンからのセットだったころの話。3番アイアンがセッティングから消え単品になり、同じく4番が消え単品になり、今まさに5番が少しずつ消えようとしている。アイアンを6番から入れる女子プロも珍しくなくなった昨今、6番アイアンは「もっとも長さのあるアイアン」になりつつある。

6番アイアンの上手な打ち方は?
以上のような理由から、6番アイアンに対して難しい番手という印象を持つゴルファーは増えているのではないだろうか。以前は6番アイアンが得意番手だったのに、最近はどうも上手く打ちこなせない。そう考えるゴルファーもいるはず。では、それはどうしてだろうか?
6番に限らず、アイアンは「ストロングロフト化」している
理由はいくつか考えられる。まず、アイアンそのもののストロングロフト化だ。たとえば、大ヒットモデルである「ゼクシオ」の2000年に発売された初代のスペックを見ると、6番アイアンのロフト角は29度、長さは37.5インチとなっている。そして、2019年発売の「ゼクシオ11」では同じ6番でもロフト角は25度と4度立ち、長さも37.75インチと長くなっている。

大ヒットモデル「ゼクシオ」を例に挙げれば、初代から11代目にかけて、ほぼ1番手分ロフト角がストロングになっている
もちろん、その間にヘッドの構造自体が進化し、同じロフト角でも現代のクラブは上げやすく、振りやすいようになっているが、ロフトの面から見た場合、20年前の5番アイアンに相当するスペックとなっていることがわかる。これが、6番アイアンを難しいと感じる一因として挙げられる。
6番アイアンとユーティリティの関係
もうひとつあるのが、ユーティリティの進化、ならびにバリエーションの増加だ。かつてユーティリティは主に17〜23度といったロフト帯、すなわち2〜4番アイアンのロフト帯をカバーするクラブだったが、その打ちやすさからゴルファーに受け入れられていくのに従って、徐々にロフト帯を広げていき、現在では26〜28度前後のユーティリティも珍しくなくなっている。
アイアンの代わりにユーティリティはヘッドサイズが大きく、重心を低く、深くしやすいため、ボールを上げやすく、ミスに強く、飛距離も出しやすい。同じロフト帯ならば、やさしさという点でアイアンよりもユーティリティに分がある。5番アイアンを抜いて6番からセットに入れているというゴルファーにとって、6番はもっとも長さのあるアイアンであり、スペック的にも心理的にも難しいと感じるのは時代の流れで仕方のないことと言えるかもしれない。
実際、「アイアンは7番から」という女子プロも珍しくはない。アマチュアに比べて技術的にはるかに上のプロゴルファーが、6番アイアンよりもユーティリティに優位性を感じているわけだから、我々が難しいと感じるのはむしろ当たり前と言える。
というわけで、ビギナーや100を切りたいレベルのゴルファーにとっては、そもそも6番アイアンを無理に使う必要性がない。「林の中からの脱出に使うから必要性がある」といった意見もあるだろうが、それでも他のクラブで代替は可能で、どうしてもということはないだろう。20年前は、「林の中からの脱出に使うから3鉄(あるいは4鉄)は抜けない」という声があったものだ。
6番アイアンを難しいと感じるならば、まずはスペックをチェック
とはいえ、じゃあ6番アイアンは必要性がないかといえばそんなことはない。ある程度パワーのあるゴルファーであれば、6番アイアンの代わりにユーティリティで代替するとボールが上がりすぎてしまうというケースもあるだろうし、そもそもアイアンのほうがイメージが出やすい、打ちやすいと感じる層も少なくない。では、どうすれば6番アイアンを打ちこなせるだろうか。
まず確認したいのはクラブのスペックだ。たとえば、アイアンだけ20年前から変えていないといったケースの場合、周辺のクラブに比べてアイアンだけが重い、といったケースも考えられる。たとえばその上のユーティリティには50グラム台の軽量カーボンシャフトが装着されているのに、アイアンだけ120グラム台の重量級スチールといったセッティングだと、さすがに重さのギャップがありすぎて、使いにくくなっている可能性がある。

カーボンシャフトか、スチールシャフトか。他の番手からかけ離れていないか、打ちにくく感じるなら重量もチェックしたい(撮影/戸村功臣)
もうひとつ確認したいのが6番アイアンのロフト角だ。いま、6番アイアンとして市販されているモデルには、おおよそ22度から31度といったように、約9度もの幅がある。番手間のロフト角の差は4度が基本と考えると、同じ6番でも2番手以上のロフト角の差があるということ。
その是非はここでは問わないが、同じ6番でも性能が大きく異なることは頭に入れておくべきだろう。たとえば、22度の6番アイアンで「上げよう!」と頑張ったり、31度の6番アイアンで「飛距離を出そう!」と振り回すのはあまり意味がない。それぞれ、代わりにもっとロフト角の寝たクラブ、立ったクラブに任せればいいからだ。

同じ番手でもモデルごとに長さ・ロフト角は変わる。目的に合ったクラブ選びも大切だ
両者の中間、26〜27度前後を現代の標準的な6番アイアンのロフト角とするならば、ドライバーのヘッドスピードが40m/sの平均的な飛距離のゴルファーが打った場合、その飛距離は150〜160ヤードくらいがおおよその目安となるはず。それくらいの飛距離を狙うのであれば、飛ばそうとせずに、アプローチの延長線上くらいのイメージでの打ち方がおすすめだ。
6番アイアンの打ち方・おすすめの練習方法
6番アイアンのおすすめの練習法としてはプロゴルファー・坂田信弘が主宰する「坂田塾」の基本ドリル“ショートスイング”が有名だが、これは、低くティアップしたボールを、6番アイアンを使ってトップでは左腕が時計の文字盤の9時を指し、フィニッシュでは右腕が3時を指す振り幅で打つことで、スウィングの土台を作るというもの。
この練習に限らず、6番アイアン、あるいは7番アイアンといったパターを除いた13本の中間のクラブを使って小さい振り幅でボールをとらえる打ち方の練習をおすすめするプロは多い。6番はそもそも飛ばすクラブではないので、力任せに振らず、小さい振り幅でボールをとらえる練習を積み重ね、最大飛距離を出す意識ではなく、狙った飛距離をきっちりと打つ意識が必要になってくる。普段150ヤード打つ6番で170ヤード飛んだとしたら、それはミスショットだ。
6番アイアンで上手く打てない、芯でとらえるのが難しいという場合は、ボールの位置を確認しておきたい。6番であれば、ボールは体の中心からやや左足寄りといったところが基本的なボール位置。ドライバーと同じようにボール位置を左にしすぎるとミスの原因となる場合があるので、注意したい。また、26〜27度のロフト角は十分に上がりやすいロフトといえるため、ボールを上げようという意識は必要ない。そのため、クラブを短く持ってミート重視で打っていくことも6番アイアンの打ち方のひとつと言えるだろう。
「アイアン」という形状のクラブに限ったことでいえば、今やかつてのロングアイアン的役割を代わりに担っている現代の6番アイアン。その最大のメリットは、なんといってもアイアンならではの爽快な打感だろう。ユーティリティなどウッド系のクラブでは味わえない、ボールを押しつぶすようなアイアンならではの打感を存分に楽しむためにも、しっかりと自分の使用モデルのスペックや状態を把握し、ナイスショットしたいものだ。
以下の各記事でアイアンの種類ごとに紹介しているのでぜひご覧ください。初心者の方にも参考になりますよ。