アプローチウェッジ=サンドウェッジの次にロフトが寝たゴルフクラブ
アプローチウェッジとは、文字通りグリーン周りからのアプローチに使うクラブ。アイアンセットでいえば「A」と刻印されるケースが多く、パターを除いた13本のクラブのなかではサンドウェッジの次にロフトが寝ている場合が多いクラブだ。
実はこのクラブ、そう長い歴史のある番手ではない。もともとはサンドウェッジの次にロフトの寝たクラブはピッチングウェッジだった。英語のピッチという言葉には投げるとか放るといった意味があり、要するにピッチングウェッジは上げるためのクラブだったが、アイアンがストロング化(ロフトを立たせること)したことにより、ピッチングウェッジとサンドウェッジ間のロフト差が開いてしまった。その間を埋めるために登場したのがアプローチウェッジというわけだ。
アプローチウェッジの考案者はジャンボ尾崎!?
考案者はかのジャンボこと尾崎将司。1984年、自身が監修したクラブのピッチングとサンドの間に「PS(ピーエス、ピッチングサンド)」という番手を入れたのがアプローチウェッジのはじまりというのが定説。なのだが、現在ではPSという言い方は廃れつつあり、アプローチウェッジという言い方が主流となっている。
アプローチウェッジ、基本は“52度”
アプローチウェッジのロフト角度の設定としてもっとも一般的なのが52度。このロフトでグリーン周りからのアプローチをした場合、適度に球を上げやすく、落ちてからも適度に転がるため、もっともオーソドックスなピッチ&ランのアプローチをしやすいロフト設定だ。
実際、過去にみんなのゴルフダイジェスト上で行った「ピッチ&ランに使う番手は何度か」を尋ねるアンケートでは、「52度のアプローチウェッジ」という回答が、豊富に用意した他の選択肢を抑えて回答全体の33%(1934票)という高い支持率を叩き出した。
アプローチウェッジだからといってアプローチに使う必要はないが、やはり愛用者は多いようだ。
アプローチウェッジとクラブセッティングの関係
さて、ゴルフクラブのセッティングに話を戻すと、52度のアプローチウェッジの上にはロフト角度が46~48度のピッチングウェッジ、その下にはロフト角度が56~58度のサンドウェッジがあるというのが基本的考え方。そのため、ピッチングまでをセットのアイアンで揃え、そこに単品で52度、そして56または58度のウェッジを入れるというゴルファーは非常に多い。
なのだが、昨今は少々事情が変わってきている。ジャンボの時代からさらにアイアンのストロング化は進行し、市販されているアイアンセットのピッチングウェッジのロフト角度の設定は、42~44度ほどになっているケースが多く見られるのだ。
そのため、たとえばピッチングを42度とした場合、その下に52度のアプローチウェッジを入れると、ギャップは10度となってしまう。アプローチウェッジはアプローチ専用ではなく、ショットにも使うクラブ。短いクラブで飛ばすのには限界があるしやるべきでもないため、ピッチングウェッジでロフトでいう2番手半分のレンジをコントロールする必要が出てきてしまう。
そのため、最近ではロフト角度が42~44度のセットのピッチングウェッジの下に48度前後の単品ウェッジを入れ、その下に52度のアプローチウェッジを入れるパターンも増えている。その場合、ピッチングも含めウェッジは4本がセッティングに加わることになる。
また、ウェッジではなく、ユーティリティなど上の番手を充実させたいと考えるゴルファーは、アプローチウェッジのロフトとして50度などややロフトの立ったものを選び、ピッチングとのギャップを埋めるというケースもある。
この場合、ロフト角度が48度前後の“4本目のウェッジ”は果たしてピッチングウェッジなのかアプローチウェッジなのか、あるいはロフトの差(ギャップ)を埋めるという意味でギャップウェッジと呼ぶべきかは地味に悩ましい問題だ。
48度前後は昔はピッチングウェッジのロフト帯だったこともあり、「ピッチングを2本入れている」という意識を持つゴルファーは多くいる一方、全体にロフトの立ったアイアンセットの場合は48度のウェッジを「アプローチウェッジ」と呼ぶことも増えている。
つまり、一昔前までは、アプローチウェッジとはなにかと問われた場合「ピッチングとサンドの中間で、ロフト52度前後のウェッジ」と回答しておけばひとまずOKだったが、アイアンのストロングロフト化の止まらない流れの中で、その定義も若干揺らいでいる。
ロフト角度が48度前後から52度前後までのウェッジを、ざっくりとアプローチウェッジと呼ぶというのが実態に即した現状だろうか。ともあれ、この定義にしても、ピッチングウェッジのロフトが38度といった超ストロングロフトの激飛び系アイアンの場合、43度前後のクラブを「AW」と呼んでいたりもしていることから確定的なものではない。
このように、アプローチウェッジを取り巻く状況はアイアンのストロングロフト化とともに悩ましい事態となっており、むしろ番手表記があることでかえってややこしいということになっている。未来のゴルフ界ではアイアンの番手表記は消滅し、すべて「何度」かのロフト角度で区別するようになっているかもしれない。
アプローチウェッジの打ち方を、動画で確認しよう!
話が逸れたが、最後に王道の52度のアプローチの打ち方を解説している動画を紹介しておこう。その中でも言及されているが、52度のアプローチウェッジならば、56~58度のサンドウェッジに比べて球が上ではなく前に飛びやすいことから、振り幅を小さくできる。
大きく振るのはその分ミスにつながるため、これは大きなメリットといえる(そして、ピッチングウェッジや9番アイアンならばさらにその振り幅は短くなる)。グリーン面までは空中を飛ばし、着弾してから転がし寄せるのはイメージが出しやすいので初心者にもおすすめだ。
52度ウェッジでのアプローチはゴルフの基本と言って差し支えがないはず。ぜひマスターして、ピシッと寄せよう。
以下の各記事でウェッジの種類ごとに紹介しているのでぜひご覧ください。初心者の方にも参考になりますよ。