曲がらないクラブは、身体能力の高いほうに有利に働く
世代交代とギアの進化は浅からず関連していると唱えるのが、市原弘大や浅地洋佑といったツアープロがそのウェッジを使用していることでも話題の新興クラブメーカー・ジューシー代表の松吉宗之氏だ。
「大型ヘッド化が進んだドライバーや、ストロングロフト化が進むアイアンなど現代のギアはオートマチックに直進性の高い球が打つことができます。それは、スウィングスピードなど使う人の『運動能力』の影響を受けやすく、それが弾道や飛距離にも跳ね返りやすいクラブでもあるんです。プロの場合、その傾向がより顕著になるのではないでしょうか」(松吉)
スポーツの世界では、体力的に衰えが見え始める30歳前後から一線を退く選手が出始めるのはむしろ常識だ。しかし、ゴルフでは身体能力だけでなく、経験や、キャリアによって培われる技が重要とされてきた。
しかし、ギアの進化により、ゴルフの世界でも「技」ではなく「身体能力」がモノを言う時代が到来したのではないか、と松吉氏は危惧する。技術ではなく身体能力を争う競技というのは、たしかに“ゴルフらしくない”という気はする。
そして、その波はアマチュアゴルファーとも無関係ではないという。
「これまでは、そんな運動能力で優れたゴルファーに技で対抗して変わらぬ飛距離やスコアを出していた熟年のゴルファーがいよいよ及ばなくなるのは、プロで起きた構図と変わりません。この傾向が定着してしまうと、中高年のゴルファーがクラブを置く、またはゴルフを『ゆくゆくはできなくなるもの』と思い兼ねないのでは、というのが心配です」
ゴルフは技でパワーを補えるところにも魅力がある。実際、飛距離では50ヤードの差があっても、上がってみれば“飛ばないほう”が勝つこともあるのがゴルフの醍醐味だ。しかし、その差が100ヤードになってしまっては、よほどのことがない限り“飛ぶほう”が圧倒的に有利になるだろう。
メーカーは、1ヤードでも遠くに! というゴルファーの思いに応えるべく、毎年技術の粋を集めてクラブを開発してくる。それはアマチュアにとっても、プロにとってもありがたい話なのだが……。