優作、松山、勇太……賞金王も多数輩出
大学ゴルフ界で当代随一の強豪校であるだけなく、東北福祉大で特筆すべきは宮里優作、松山英樹、池田勇太らツアー賞金王も数多く輩出していること。在学中の金谷に加え、今年も比嘉一貴が「RIZAP KBCオーガスタ」で初勝利を飾るなど、毎年のようにツアーで「勝てる」選手を輩出しているが、そこにはどんな要因が働いているのか?
今季、プロ初勝利を挙げた比嘉一貴は、ゴルフ界で在学中はもちろん、その後もプロで活躍できる理由に、おもに3つのポイントを挙げた。
まずは、他の大学にはない恵まれた環境と仲間の存在があるという。
「みんなプロ志望で入ってくる人間ばかりですし、みんながそのために『この4年間をどう過ごすか』しか考えていない。練習も自分で考えてやるものがほとんどで、練習環境はどこにも負けないものがあるので、練習しようと思ったらいくらでもできるし、サボろうと思ったらいくらでも遊べる。自主性はすごく磨ける環境でした」
2つめは競争レベルの高さ。高い志を持ったエリートが全国から集い、大会ごとの団体戦メンバーに選ばれるのも簡単なことではなく、部員内での切磋琢磨を経て強い精神力が養われるという。
「大会前に必ず合宿がありますし、最後にメンバー決めの『選考会』があります。ある意味では、ナショナルチームに入るよりも厳しい、と感じたのを覚えています。選ばれたら、今度は『絶対にアンダーで回らないといけない』というプレッシャーもすごい。選ばれなかった人間がサポートに回るわけで、その前で下手なプレーはできない。『絶対にスコアを出さないといけない状況で、スコアを出しに行く』という経験はすごく今に生きています」
興味深いのは3つ目の「世代を超えたバックアップ体制」だ。
「合宿などはプロの方も来て、一緒に練習してくれたり、アドバイスを下さったりする。プロの技術を見て『自分に何が足りないのか』とかを考えることができたのは、いい経験でした。プロに入ってみないと分からないことも学生時代に知ることができました」
これは単に学生時代の比嘉だけに起きたことではなく、同大のゴルフ部に所属していれば全員が経験する過程でもあるという。
「福祉大ゴルフ部の場合は、これが在学生にとどまらず、年代も全く異なる世代超えたネットワークとして機能しているところが、素晴らしいところです」
そう付け加えたのが同大ゴルフ部OBで現在はレッスンプロでおなじみの伊丹大介氏だ。
「プロに限らず、ゴルフ業界の福祉大出身者は誰もがそういった世代を超えたOBの協力を得て、活躍しています。選手に近い存在で言えば、キャディやトレーナー、用具メーカーなど選手をサポートするスタッフ。そのなかにもOBは数多くいて、ゴルフ部出身者には『いつ卒業した』という年代にしばられることはありません。若い20代のOBが30台の先輩をサポートすることもあれば、もちろんその逆も。卒業生全員でフォローし合える伝統がもう何十年に渡り、根付いているのです」
相互協力の関係性は現役部員からOBまで「福祉大出身」であれば誰でも、というわけだ。そのスタンスは世界的なゴルファーになった松山英樹であっても不変だ。
「ダンロップ フェニックス」の練習日には、先輩の谷原秀人と後輩の佐藤大平の「福祉大トリオ」でラウンド。
「谷原さんには海外のツアーで合うたびにご飯に誘って頂いたりしていますし、大平や比嘉、金谷であったり、僕も後輩にはそういうことを、これからもっとやっていきたいなと思っています」と国内ツアーで活躍する後輩への気遣いを口にした。
脈々と受け継がれてきたゴルフ部OBによる「福祉大愛」。創部30年を超え、その勢力はゴルフ界の一大ネットワークにまで発展している。