パターとはどんなクラブか
まずはパターとはどのような道具かを知るところからはじめよう。
ゴルフでは、グリーンにオンしたらそこからはパターを使うことになる。実際はローカルルールで規定されていることがほとんどではあるものの、ルール上「パターを使わなければならない」わけでは実はないのだが、パターは他の13本と異なり、ボールを「上げる」のではなく「転がす」ことに特化したクラブであり、他のクラブよりも圧倒的にグリーン上で扱いやすいため、パターを使う場合がほとんどなのだ。
なぜパターがボールを転がすのに特化しているのかといえば、その少ないロフトが主な要因だ。通常、パターには3度前後のロフトがつけられており、14本のなかでもっとも「上がりにくい」クラブとなっている。
転がすだけならロフト0度でもいいのでは? とも思えるが、ボールは厳密には芝の上にわずかに沈んだ状態にある。少ないロフトで沈んだ状態のボールを一度わずかに空中に上げ、そこから転がしたほうがよりスムーズに回転するというのが定説。なかには、5度以上のロフトがあるパターも存在する。
パターはどう選ぶべきか?
後述するが、形状もさまざま。ドライバーやアイアンといったクラブは、モデルによって特徴は異なるものの、おおよそ似たような形状をしているが、パターの場合は別。長方形のものもあれば半円状のものもあり、大型で特殊な形状をしたものもたくさんある。グリップも太いもの、細いもの、扁平なもの……と様々ある。
「パットに型なし」という格言があるように、パターの形状も千差万別ならば、握り方も選手によって異なる。パットに型なしならばなにを選んでもいいんじゃないかとも思えるが、やはりある程度知識があったほうが選びやすい。
パターの形状にはどのようなものがあるか、それぞれにはどのような特徴があるかを把握し、「自分にはこれが合う」という基準を見つけることが大切になってくる。多くのプロゴルファーが、パターを1本に決めて変えないのは、まさにこの「自分にぴったり」を知っているからだろう。
パターの長さ
さて、パターの長さは33〜35インチが一般的。何インチがいいかはその人の身長や腕の長さはもちろん、どのように構えるかによっても適正な長さは異なる。たとえば、両ひじを曲げて構えるタイプの人は、両腕を伸ばして構えるタイプの人に比べて長めのパターが合うといったようなイメージだ。
フィッティングが受けられればそれがベストだが、いずれにしても、好きなプロが34インチだから俺も34インチ、という決め方ではなく、体型やパッティングスタイルを勘案し、構えやすい長さを選ぶといいだろう。
適度にフェースを開閉するストロークに合う「ピン型」
形状についてだが、大きく分けて、ピン型、マレット型、ネオマレット型に分かれる。最初のピン型とは、正確にはピンのアンサー型。名器として知られるピン社の「アンサー」というパターを原型にしたパターの総称で、四角い形状のトウ、ヒールに重量が配されているのが特徴。ブレード型と呼ばれる場合もある。
ピンのアンサーシリーズがもちろんその代表選手で、タイガー・ウッズの使用するスコッティ・キャメロンの「ニューポート2」なども非常に有名だ。
ネック形状によって性能は変化するが、基本的には適度にミスヒットに強く、それでいてストロークを自分でコントロールもしやすいバランスの良さが魅力。基本的には、適度にフェースを開いて閉じるようなストロークに合う場合が多い。
ピン型と大型マレットの中間的な機能「マレット型」
マレット型とはカマボコ型とも呼ばれ、後方が丸く、後ろにふくらんだような形状となっている。ピン型に比べるとややフェースの開閉の抑えたストロークに合いやすい。一方で、ネックがヘッドの手前側につけられフェースを開閉させやすい「L字マレット」も人気だ。
マレット型パターとしては谷口徹が使うオデッセイの「#5(ホワイト・ホット #5)」や石川遼の使うオデッセイの「#9(ブラックシリーズiX #9)」といったモデルが有名で、定番として人気を集めている。
フェースをターゲット方向に向けたままストロークしやすい「ネオマレット型」
最後のネオマレット型は、大型マレット型ともいわれ、今現在では大型パターの総称として用いられている。パターを大型にするメリットは、慣性モーメントを大きくし、打点がズレた場合のミスの幅を小さくすることや、直線的にストロークしやすいことなどが挙げられる。
オデッセイの「2ボール」シリーズや、テーラーメイドの「スパイダー」シリーズが有名。とくに「スパイダーX」はショートスラントネックを採用したことで操作性がアップしたことで、多くの海外プロの支持を集めている。
ネオマレットはフェースバランスが多い
また、多くのネオマレット型パターはフェースバランス(ヘッドがフリーな状態でシャフトを机などに横たえた場合に、フェースが上を向く)となっている。これは、それだけフェース面が“開きにくい”ことを示し、それだけフェースをターゲット方向に向けたままストロークしやすいということになる。
以上の3つが代表的な形状となるが、他にもT型、L字、その他諸々、パターの形状には様々なものがある。似たような形状でも重いもの、軽いものがあり、そもそもの素材(多くの場合はステンレス)やインサートと呼ばれるフェース面に複合された異素材などによっても性能は変化する。
ドライバーやアイアンであれば、上級者向けは初心者には使いこなせないものも多いが、パターの場合ストロークすること自体は誰にでもできるので、なかなか合う・合わないを見極めるのは難しい。最終的には形状の好みで選ぶか、あるいは専門店でフィッティングを受けて「合う」というお墨付きをもらったものを選ぶか、ふたつにひとつとなる。
パターの構え方・打ち方・練習法
さて、続いてはプロゴルファー・中村修に打ち方を教わろう。中村によれば、パッティングでまず気をつけたいのはスタンスだ。
「パッティングでは、再現性の高いストロークを行うことが求められます。なので、できるだけ余計な動きが入らないようにスタンスはなるべく狭めにしたいですね。両足の間は靴一足ぶん程度開いて、体の中心でクラブを構えましょう」(中村、以下同)
また、パター以外のクラブは、右手の小指を左手の人差し指と中指の間に乗せる「オーバーラッピング」グリップを採用する人が多くいるが、パターの場合は、左手の人差し指を右手の小指と薬指の間に乗せる「逆オーバーラッピング」を採用する人が多いなど、通常のクラブと違ってグリップも様々。いろいろな握り方を試してみて、しっくりくるものを探そう。
ボールとの距離感でいえば、「目の真下」がひとつの基準とされる場合が多い。それを基準に、自分の目の位置が真下よりも離れすぎていないか、確認しておこう。
グリーン上には傾斜があるため、多くの場合ボールは右に曲がったり、左に曲がったりする。それを読むのがいわゆる「ライン読み」だが、そもそも狙ったラインに打ち出せなければラインを読んでも意味がない。そのため、なにより毎回同じようにボールを打ち出すこと、それが大切になるわけだ。
そして、しっかりと構えた位置にフェース面を戻し、ボールをできるだけ芯でヒットするためには「自分が極力動かないこと」が大事だと中村。ストロークで気をつけるべき点も、体、とくに手首を動かしすぎないことだ。
「パットの場合は手だけでも打ててしまいますが、それでは安定しません。手首はなるべく動かさないように意識して、両肩と手元で作った三角形を維持したままストロークしたいですね」
このとき重要なのは、手元ではなく、お腹などの筋肉を動かす意識だ。手首だけで打ってもボールは転がるし、それでパットが入ることも当然ある。しかし、なるべく再現性が高いほうが上達やスコアアップにより近づけるだろう。
パターの正しいストロークを身につける練習法
正しいストロークを身につける練習として、ドライバーやシャフトなどを胸とパターヘッドで抑えつけるようにして、胸と一緒にクラブが動く感覚を視覚的にもわかりやすくしながら振ってみるのがオススメだと中村。鏡や窓の映り込みでチェックしながらストロークするのも、シンプルながら有効な練習法だ。また、シャフトなどの細い棒をわきに挟んでストロークすると、手先ではなく肩の動きでストロークする感覚がわかりやすい。
もう一点、中村が挙げた注意点はストロークの速さだ。
「初心者ゴルファーにありがちなミスとして、パチンと叩くようにパットしてしまう方をよく見かけます。これでは毎度距離が変わってしまって安定したパッティングができません。原因はストロークのどこかで動きが止まってしまうこと。ストローク中は常に同じ速さで振ることを心がけましょう」
グリーン上で距離を合わせるには、まず「観察」する習慣から
18ホールの中では毎ホールごとに異なるグリーン、異なる距離からのパッティングが要求されるが、距離の調節はどのようにすればいいのだろうか。
「身も蓋もない話ですが、パターの距離感に関しては実際にいろんな距離を打ってみてそれぞれどれくらい転がるのかというのを肌感覚でつかむほかないと思います。もちろんグリーンによっても変わってきますし、ある程度の経験はどうしても必要です。ただ、距離が短くても長くても、ストロークのテンポは一緒にしたいですね。長い距離を打とうとすれば自然とクラブのスピードも速くなるし、短ければ遅くなります」
グリーン上には傾斜があり、上りの傾斜であればボールのスピードは遅くなり、下りの傾斜であればスピードは速くなる。そのため、同じ距離を打つのでも、傾斜次第でパットの力加減は大きく異なるのだ。これがまた、最初のうちは今から自分が打つのが上りか下りかいまいちわからない、ということもままあり、難しい。
おすすめなのは、余裕があればグリーンにオンしたらグリーンに向けて歩きながらグリーンの全体的な形状を確認しておくことだ。多くの場合、グリーンは奥から手前にかけて傾斜している(受けている)場合が多く、ピンの奥から手前には下りのパット、手前から奥に打つ場合は上りのパットが残りやすいなど、傾向はつかめる。その際、他のプレーヤーのボールとカップを結んだラインを踏まないように注意しよう。
また、これまた余裕があればだが、ボールの後ろから見るだけでなく、カップの反対側からラインを見ると、傾斜の状況はよりわかりやすくなる。もうひとつ、他のプレーヤーのパットをよく見ておくと、自分のパットの参考になるので、見る習慣をつけよう。最初はなにがなんだかわからなくとも、やがて、「あの人のボール、思ったよりも転がったな」といった情報が蓄積し、自分のパッティングの力加減を判断する重要な目安とすることができるようになるはずだ。
パターでボールを転がすだけ。たったこれだけのことなのだが、パッティングは道具、打ち方、ライン読み、スピード……と考えることが非常に多くある。ショットの爽快感とはまた違うゴルフの妙味がグリーン上にはあるので、「覚えることがたくさんあって面倒だなあ」と感じずに、奥の深さを楽しめたら、なによりだ。
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