「自分でもできる」「イケる!」「絶対大丈夫!」3人とも自分を信じていた
今年のLPGAプロテストに参加したのは100人。安田祐香、西村優菜らプラチナ世代、現高校3年生世代、そして今季レギュラーツアーで戦った選手たちも参加し、大激戦となった。
プロの仲間入りを果たしたのは21名。そのなかには今季レギュラーツアーで戦った田中瑞希、山路晶、石井理緒の名前もあった。彼女たちにプロテストに合格した要因について聞くと、どうも話す内容が似ている。
「レギュラーツアーで戦うようになって、経験値が上がったんだと思います。空気にも流されずに自分のペースでプレーができるようになって、(プロテストも)イケる! と思っていました」(田中瑞希)
「(プロテスト合格は)レギュラーに出場しているというのが一番大きいです。成長できているから絶対大丈夫! という気持ちがありました」(山路晶)
「1年のほとんどレギュラーで戦ってみて、もしかしたら自分もできるかもしれないと思って臨みました。自信が去年と全然違いました」(石井理緒)
田中は33試合、山路は35試合、石井は28試合を戦い抜いた“レギュラーツアーでの経験”そのものがプロテストを受けるにあたって自信になったというわけだ。このテスト合格者3名に共通するコメントを、メンタルコーチ・池努に解説してもらった。
「できると思ってゴルフするのか、できるかどうかわからないと思って半信半疑でプレーするのかで当然、パフォーマンスの発揮度合いは変わります。そして、なぜ自信が持てたかというと三者三様で『レギュラーツアー』での経験と言っています。強豪選手とのプレー、メディア・ギャラリーなど注目度が高い環境での試合を何度も体験することでの技術面、精神面の成長を実感することが『自分への信頼』につながっているように思えます」(池努)
もちろん技術面での成長もあるだろうが、「プロの世界で1年やってきた」その経験が「去年の自分とは違う」という自信に変わり、石井は1度、田中、山路は2度跳ね返されたプロテストの壁を乗り越える原動力となったようだ。
テストが楽しみ! 「ゲームに夢中になる子ども状態」が好結果を生んだ
また、さらに話を聞くと、田中と山路の2人にはもうひとつ共通点があった。
「緊張とかまったくしなくて、どちらかというと楽しみで仕方なかったんです。終わったらやっとプロになれるので、そっちのワクワクのほうが大きかったですね」(田中瑞希)
「元々試合で緊張することもないんです。プロテストも同じで、その時その時集中して楽しんでプレーしようといつも思っているんです」(山路晶)
プロテストといえば「もう二度と受けたくない」など、普段より緊張するとよく聞くが、田中と山路はテスト前に「やっとテストだよ!」「やっとここまできたよ!」と、テストを楽しみに待っていたのだとか。プロテストにここまで前向きな選手はかなり稀ではないだろうか。再びメンタルコーチ・池努に話を聞いてみた。
「山路選手と田中選手は多くの選手が極度の緊張をする中、『楽しむ気持ち』でプレーできていたと語っていますね。スポーツ選手が最高のパフォーマンスを発揮できている状態を『フロー』と呼びますが、このフロー状態はよく例えで『子供が時間を忘れてゲームや遊びに没頭している状態』にたとえられます。子供が遊びに没頭できているとき、それはその遊びを心から楽しめているときです。つまり、フローの条件のひとつとして『楽しむ気持ち』があるのです。山路選手も田中選手も『楽しむ気持ち』が良いパフォーマンスにつながったのではないでしょうか」(池努)
現在QT(来季の出場優先順位を決める予選会)に出場している田中瑞希、山路晶、石井理緒。プロテスト同様、レギュラーツアーでの経験を活かし、楽しむ気持ちでQTでも好結果を出せるか、今後の彼女たちの活躍を楽しみにしたい。