石川遼の爆発はなるか?
南国市の宿舎ホテルから車で30分の位置に、カシオワールドオープン開催コースであるKochi黒潮カントリークラブがあります。南国市と聞くと常夏の場所かと思いきや、この時期の最低気温は一桁で、日中の日向こそ暖かいものの、朝夕は指先が痛くなるような寒さです。
初日は朝のスタートからお昼過ぎまで雨、のち晴れ。2日目3日目と快晴で、最終日は曇り空。カシオワールドの興味は、優勝争いと年間の賞金王争い、そして多くの有名選手が引退宣言をした女子ツアー「大王製紙エリエールレディス」同様の、賞金シード争いがあります。
かつては、日本シリーズの後にツアー最終戦が沖縄であって、それがシード争いのピリピリした争いでしたが、2000年初頭からカシオワールドがその舞台です。でも、沖縄時代よりピリピリ感は薄くなった気がします。色入りなデータがスマホで見られるようのなったり、選手の気質も変わったのかな。
最終日の定石で、1番ティで流してそのまま最終組を数ホール付いて行きます。単独トップのアンソニー ・クウェイルはオーストラリア出身の25歳。同じオーストラリアのジェイソン・デイのように、ボール後方で目を閉じたルーティーンをします。
2打差で追う小林伸太郎は、学生時代に中年の星・田村尚之(現在はプロゴルファー)を決勝で下し、日本アマのタイトルを取った実績のある選手。彼のルーティンはボール後方からクラブをターゲットに出す仕草です。
3打差のスンス・ハンは3年前のこの大会を制した選手。彼だけオーソドックスな始動です。
この3人による最終組を追うものの、やはり気になるのはトップとは5打差を追う石川遼の爆発です。で、5番パー5から石川組に付いて行きます。この組は石川の他、チャン・キムとショーン・ノリスと飛ばし屋が揃いました。
このホール、3人とも2オン狙いで石川とノリスはバーディ、キムはパー。ここに来てノリスが勢いづいています。石川、キムもまだまだチャンスを窺う展開です。
7番パー5は、大会3日目には2オンも可能な位置にティボックスを設けましたが、最終日はいつもの620ヤードほぼそのままです。今日ここで2オンの可能性があるのは、チャン・キムくらいかな。
この7番ティと6番グリーンを往復しながら最終組を待ちます。この時点でクウェイルがリーダーのままですが、この段階では優勝者が誰になるか、予断を許しません。
再び最終組に付いて7番をグリーンに向かいますが、気になるのはやはり10番パー5の石川です。8番9番を飛ばして10番セカンドに向かい、間に合いました。が、石川は9番でボギーを打った様です。
そしてこの10番はパー。このまま石川、ノリス、キム組に付いて行くか否か、悩みます。仮に10番で石川がイーグルやバーディならばそのまま追って行ったでしょうが、今日は今一つ勢いが感じられません。
ここは10番グリーンで、後続の選手を待ちましょう。11番ティで最終組を撮っていると、遠くから大歓声が聞こえました。情報によるとチャン・キムが、14番パー3でホールインワンを決めたとのこと。ありゃりゃ。
最終組を太平洋がダイナミックに映える13番ティまで撮り、16番グリーンへ向かいました。昨日今日とワンオン可能なパー4としてティボックスが前に設定されています。
そこにはイーグルパットを狙うノリスの姿が。で、見事イーグル! 17アンダーで首位のクウェイルと2打差に迫ります。
その直後、隣の14番パー3でクウェイルがボギーで1打差です。一気に試合が激しく動き出しました。ノリスは17番パーで最終ホールに向かいます。
18番は530ヤードパー4。ティショット次第で2オンが期待できるホールです。あわよくばイーグル、是非ともバーディ以上が欲しいホールです。
石川とノリスはフェアウェイセンター。石川が打ち、続いてノリスがグリーンを狙います。ノリス、打ち終わるとそのままフィニシュの形のまま歩き出しました。ナイスショットの現れでしょう。
そしてイーグルトライ。残念、入らずのバーディ。石川がきっちり最後を決めてイーグル、優勝争いには絡めませんでしたが、お見事です。
強い「鬼」が涙とともに帰ってきた
そうしている内に、金庚泰(キム・キョンテ)が15番パー4でバーディを取って19アンダー。トップと並んでいます。正直ノーマーク! あまり喜怒哀楽を出さないタイプなので、難しい撮影対象選手です。
こうした場合は、コースのロケーションと選手を絡めるに限ります。で、18番セカンドでバックショット撮影。ボールはグリーン右手前の様です。それを寄せてナイスバーディ。
最終組のクウェイルがイーグルならばプレーオフです。可能性は大いにあり、と思いきや18番ティショットを左バンカーに入れた様子。イーグルは絶望的です。このセカンドショットを打ち終えるのを見届けて、急ぎ金庚泰がいるであろうクラブハウスへ、ストロボにワイドレンズで向かいます。
キョンテは数人の同胞プロやキャデイとキャディバック置き場で吉報を待っていました。今にもウオーターシャワーが降り注がれそうな事態ですが、ちょっと待ってとキョンテ。まだ確定ではありません。
無線を持つ運営スタッフが、クウェイルの最終ホール3打目を打ち終え、それがカップインならなかったことを伝え、ここでようやく仲間からの祝福のシャワーです。
ペットボトルからのシャワーに濡れた顔をぬぐう仕草なのか、涙をぬぐう仕草なのか。鬼とまで言われた強い金庚泰が、涙とともに戻ってきたようです。
撮影/姉崎正