スパイダー的形状のパターをオデッセイ、スコッティ・キャメロンが発表
今年登場したオデッセイのストロークラボTENは大きな話題となった。なぜかといえば、その形状がテーラーメイドの人気パター「スパイダー」によく似ていたからだ。
スパイダー的な形状と性能に、ブラックを基調とした精悍なデザイン。これが受けてヒットとなったわけだが、今度はスコッティ・キャメロンからもスパイダーを思わせるデザインのパター「ファントムX 12.5」が発表された。
アメリカでは12月12日に店頭に並ぶというこのパターは、ヘッドの中央を走るラインといい、後方に2本の羽根状の突起がある形状といい、スパイダーによく似ている。というか、むしろストロークラボTENとの共通点を多く感じるデザインだ。どことなく高級感が漂ってくるのはさすがキャメロン。
このあたり、いいものはいいとして、自社のプロダクトに取り入れる柔軟性というか度量というかはアメリカメーカーならではという感がある。
初代スパイダーは2008年、ホワイト・ホット2ボールの対抗馬として世に出た
さて、今では“追われる側”となったスパイダーだが、元々は2008年、オデッセイの大ヒットパター「ホワイト・ホット 2ボール」の対抗馬として世に出てきた。
2000年に発売された「2ボール」は、その得意な形状からパターが苦手なアマチュア向けのお助けクラブとして世に出たものの、あにはからんやプロがこれを支持。当時世界最強女王で日本でも人気のあったアニカ・ソレンスタムがエースパターとして起用し、世界中で勝ちまくる姿も印象的で、日本でも4バッグ全員2ボールという光景が散見された。
2ボールがつくった、重心深度が深く、真っすぐストロークしやすい大型パターという流行は消えることなく現代に至っているが、その進化の道筋で生まれたのが、テーラーメイドの「スパイダー」だった。
初登場は2008年。「ロッサモンザスパイダーAGSI +」という名称で世に出たスパイダーがブレイクしたのは2016年から2017年にかけてのことだった。
ジェイソン・デイが使って赤スパイダーが注目される
まずは2016年、前年に全米プロで念願のメジャータイトルを獲得し、世界ランク1位にもなったジェイソン・デイが、第五のメジャーと呼ばれるザ・プレーヤーズ選手権を「スパイダー イッツィー ビッツィー リミテッド レッド 」で勝利。
母国オーストラリアに生息する“セアカゴケグモ”をモチーフにしたという赤いパターは極めて印象的で、「赤スパイダー」としてゴルファーの脳裏に刻まれる。その後、ダスティン・ジョンソンがジェイソン・デイと同じ色は嫌だからと同じパターの黒バージョンを使って大活躍したこともあり、一気に知名度を上げた。
2017年、ガルシアが使ってマスターズを制したことで人気が爆発!
そして決定的なのは2017年のマスターズだ。当時テーラーメイドの契約プロだったセルヒオ・ガルシアが赤スパイダーで感動の優勝を果たすと、完全に大ブレーク。一時店頭から姿を消すほどの人気となった。
この人気の原動力となったのが、ショートスラントネックの採用だ。短いながらもネックがあることで、実はショートスラントネックの赤スパイダーはフェースバランスではない。これにより、慣性モーメントの大きさはありながらも、適度に弧を描くようなストロークとも相性がいいことが、プロにウケた要因と言われている。
2019年はマキロイが「スパイダーX」を使用。カラーカスタムも可能に
さらに2019年は、ボディ部分にカーボンを採用した「スパイダーX」が登場。こちらは今年のPGAツアー年間王者ロリー・マキロイがエースとして起用。このように、ここ数年のパターの“主役”はスパイダーと言っても過言ではない状況が続いているのだ。
オデッセイのストロークラボTEN、そしてスコッティ・キャメロンの「ファントムX 12.5」の登場の背景には、このようなスパイダーの歴史がある。あれほどの隆盛を極めた2ボールがあまり見かけなくなり、当時目立たなかったスパイダーは“全盛期”というほどの輝きを見せている。
最近では、好きな色にカスタムできる「マイスパイダー」なるサービスまでスタート。赤がいいか、黒がいいかという議論をすっ飛ばして自分なりのカラーに染め上げることが可能となっている。
人気が衰えるどころか加速する一方のスパイダー。ピンの「アンサー」がそうであるように、スパイダーもまた、ひとつの定番の形状となっていくのかもしれない。