今年の「ベスト」スウィングを本人が連続写真を見て解説
現在行われている「日本シリーズJTカップ」の開幕前、石川遼に目を通してもらったのが2018年~19年までのドライバーショットの連続写真。
用意したのは方向性が安定せず苦しんでいた18年終盤の「トップ杯東海クラシック」、腰痛に苦しみ不安を抱えながら臨んだ石川遼にとっての今季初戦「中日クラウンズ」、完全復活を印象付けた9月の「セガサミーカップ」、直近の状態にもっとも近い11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」の4大会。その中から自分でベストと思うものはどれかと聞いてみた。
大会ごとに18コマある始動からフィニッシュまでの連続写真をひととおり眺めたあと、石川遼が「やっぱり、これですね」と答えを出した。
写真に指を置いた先は9月の「セガサミーカップ」で撮影された連続写真。7月の前半戦「日本プロゴルフ選手権」で3年ぶりの国内復活勝利を飾った後、1か月以上のツアー休止を経て臨んだ1戦。この一戦で連勝を飾ったことで、誰もが復活を確信した試合だ。
ただ、この連続写真をベストとした理由は勝ったからではない。あくまでの自らのスウィングを客観視してのものだ。
「とくに、これとこれ。とくにこの(上記の)2コマでのインパクト前後、とくに後の写真は今までの僕にはなかったものです」(石川)
これまでとどこが違ったのか?
「やっぱり重心。今年終盤の11月の『VISA』のときも含めて。それ以前の大会よりインパクトでの重心が下がってきているというのがあります。18年の『東海クラシック』ときは、インパクト後に横流れ(写真下段)がありますよね? 膝の横流れが、写真を見てもけっこうあって、ちょっと重心が高い。(今季序盤の)『中日クラウンズ』のときもそうです」
調子の悪い時期はひざが横に流れ、重心が高かった。それが収まったことが、復活の要因となったようだ。
「コマをいかに速く回せるか。それができれば軸は安定する」
両方の見た目の比較を説明後、石川遼は「コマの回転」を例にさらに深く掘り下げてくれた。
「ドライバーのスウィングは『いかにコマみたいな感じで回れるか』を意識しています。コマって速く回転しているときほど、見た目にもぐらいついていないというか、ブレていませんよね? で、回転が弱まってくると軸もぶれてくる。だから、やっぱり速く回転できるというのは、それだけ軸がしっかりしていることでもあると。そう考えでいけば、速く回転できていれば、軸は安定してくる。そういう考えはできるんじゃないかなと思っています」
そんな「コマの原理」のスウィング理論で、大切になのが「スウィングスピード」という。
「『セガサミー』のときも、成績は悪かったですけど『VISA』のときも、ヘッドスピードは落ちてなかった。自分でも軸が感じながらしっかり振れている感覚があって、ヘッドスピードも53㎧ぐらいで『中日クラウンズ』のときより1.1m/sぐらいは速かったですから」
シーズン後半「回転するコマの軸が‟太く”なっていくのを感じた」
『中日クラウンズ』後は腰痛によりツアーを3試合欠場。この間、患部の完治とともに「さらに患部周辺の筋力強化を欠かさず行ってきました」ことも大きいようだ。
「(復帰した6月の)『ツアー選手権』以降は、不安なく振りつづけられたことで、結果とは別に、ドライバーに関しては、スウィング中の回転するコマの軸がどんどん太くなっているのを感じながら、今に至ることができているので。この流れをこのオフや来年に生かしていける点で『いい終わり方』ができたと思っています」
今季はドライィングディスタンス(12月1日現在)が平均303.77ヤードと昨年の同289.35ヤードから大幅に伸びているが「まだ完成形ではなく、道半ばです」と本人は語る。ただし、近年にはない大きな手応えを確実につかんだ1年にもなった模様。
ともあれ男子ツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」はまさに開催中。来年と言わず、今年の集大成を是非見せてもらいたい。