昨年は日本人42年ぶりの「全英女子オープン」を制覇した渋野日向子の活躍など、とにかく華やいだ女子ゴルフ界。さらに見どころ満載となる2020年シーズンの行方を、女子ツアーをよく知る3人のプロコーチに占ってもらった。

「黄金世代が“試される”年になる」(辻村明志)

まず登場するのは小祝さくら、今年からツアーに参戦する吉田優利らを指導する辻村明志。辻村は、2020年は「黄金世代が試される年」だという。

(以下、辻村)

2019年はシード選手の入れ替わりが激しかった1年でした。50人いるシード選手のうち、渋野日向子ら11人が黄金世代の選手。世代が大きく動いた1年と言えると思います。

2020年は、逆にその子たちが“試される”と思います。2019年に賞金シード権を初めてとった選手は13名。今年初めてシード権を獲った選手の3分の1ぐらいは、1年でシード権を失うのでは、と予想します。ゴルフに限らず、プロの世界ではよく言われることですが、3年続けて結果を残さないことには、その先どうなるかは本人でも分からないもの。まさに今の女子のレギュラーツアーに当てはまることのように思います。

画像: プロテストに合格し、ツアールーキーとしてレギュラーツアーに参戦するプラチナ世代の代表格・安田祐香(写真は19年「いい部屋ネットレディス」撮影/大澤進二)

プロテストに合格し、ツアールーキーとしてレギュラーツアーに参戦するプラチナ世代の代表格・安田祐香(写真は19年「いい部屋ネットレディス」撮影/大澤進二)

「ちょっと油断したら、すぐシード落ち」。2019年は、それまでいた世代を“追い出す”ほうだった初シード組が、早くも追い出されるほうに……という現象が起きるのではないかと思います。そのうえで、ツアールーキーとなるプラチナ世代も、安田祐香や西村優菜あたりは、すぐにでも優勝するのではないかと思いますし、シード権を獲る実力はあるのではないかと僕は思います。

一方で、ベテラン組は? と言えば19年ほどの大きな世代交代の波はないと思います。ツアーで5〜10年、またはそれ以上活躍し続けている選手にとっては、1度経験したことは次に同じような現象が起こっても、その対処の仕方・心の持ちようも含めて、自分をマネジメントしていく術を持っているからです。それが、初シード組との経験値の違いとして出る1年になるだろう予想します。

「史上最高レベルの女子ツアーになる」(井上透)

続いては成田美寿々、穴井詩、川岸史果、河野杏奈らを指導するプロコーチの草分け、井上透。井上は2020年シーズンを「史上最高レベルの女子ツアーになる」と予想する。

(以下、井上)

2019年シーズンは多くのシード選手の入れ替わりがありました。今季もその流れも止まらないでしょう。とくに昨年プロテストに合格した選手たちというのは並々ならぬ力を持っている選手たちです。半数近くの選手が今季の前半戦の出場権を獲得していますが、その彼女たちが今季のツアーの主役になってくるだろうと思います。

昨季以上の「史上最高レベルの女子ツアー」になることは間違いないです。平均ストロークに関してもシーズンによってセッティングも変わりますがそこでは推し量れないほど選手の平均的なレベルはかつてないほどのレベルになることは間違いない。シードを獲得するためには、年間平均ストロークが72を切る力が求められるのではないでしょうか。

画像: 19年賞金女王の鈴木愛と全英女子オープンを制した渋野日向子。2020年も女子ゴルフの主役を務めそうだ(写真は鈴木(19年「三菱電機レディス」撮影/大澤進二)、渋野(19年「LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」撮影/岡沢裕行)

19年賞金女王の鈴木愛と全英女子オープンを制した渋野日向子。2020年も女子ゴルフの主役を務めそうだ(写真は鈴木(19年「三菱電機レディス」撮影/大澤進二)、渋野(19年「LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」撮影/岡沢裕行)

賞金女王を争いという局面から見ると鈴木愛、渋野日向子、シン・ジエなどの選手は史上最高レベルとなる今季でもケガさえなければ光り輝くでしょう。またオリンピックもあるので序盤戦から渋野日向子、鈴木愛は全力で入ってくると思います。モチベーションも高く、勝つことでオリンピックに近づくしライバル関係になることからも開幕から全力で入ってくることは想像できます。

また、今季もニューヒロインが誕生して3強の一角を賑わせてくれると思います。たとえば笹生優花はフィリピンのオリンピックランキングでは1位の資格があるのでフィリピン国籍を選択すればオリンピックの舞台に出場する可能性もあります。楽しみな選手です。

「飛距離の出る選手が上位で活躍」(目澤秀憲)

続いては、河本結を指導して2019年一気にトッププロの座に導いた新進気鋭のコーチ・目澤秀憲。今後のツアーを生き残るためのキーワードとして「飛距離」という言葉を挙げた。

(以下、目澤)

非常に面白い一年になることは間違いないでしょうね。安田祐香などQTから上がってくる選手は、少し前まではシード権を獲れたら御の字と言われていましたが、今は優勝してもまったく不思議ではない時代になっています。昨年の渋野日向子選手もQTランクでは40位でしたし、たくさんの選手にチャンスがあるんだと思います。

画像: 元世界ランキング1位の実力者、シン・ジエは今年も賞金女王の有力候補(写真は19年「大王製紙エリエールレディス」撮影/大澤進二)

元世界ランキング1位の実力者、シン・ジエは今年も賞金女王の有力候補(写真は19年「大王製紙エリエールレディス」撮影/大澤進二)

賞金ランキングでいうと15位くらいまでの選手は安定して活躍すると思いますが、それ以外の選手でも急に強くなってトップ5を外さない選手になることも十分に考えられます。そういう意味では安定してシード権を確保している選手でも安心していられないと思うので、見ている側からすると面白いツアーになってきているのかなと思います。

2019年のことでいうと、(指導する)河本結はステップアップツアーの賞金女王という資格でスタートして活躍できました。ステップアップツアーの賞金女王になれば、昨季の河本結くらいの活躍ができる可能性があることを示してくれた。ステップアップツアーからも目が離せないですし、「女子ツアー戦国時代」といえるのではないでしょうか。

画像: 2020年は国内ツアーと米ツアーの「二刀流」となる河本結(写真は19年「LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」撮影/岡沢裕行)

2020年は国内ツアーと米ツアーの「二刀流」となる河本結(写真は19年「LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ」撮影/岡沢裕行)

また、世界に目を向けると、ドライビングディスタンス(飛距離)はどのツアーでも伸びています。PGAツアーのアベレージで言うとボールスピード(初速)が75m/sを越えてこないとシード権も獲れなくなっています。そういう波はこれからどんどん押し寄せてくると思います。ドライビングディスタンスとの関連性を見ていくと、柏原明日香、上田桃子、小祝さくら、河本結、渋野日向子、穴井詩など飛距離の出る選手が上位で活躍しているので、飛距離は重要になってくると思います。

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