五輪イヤーの2020年シーズン。昨年は今平周吾の史上5人目となる2年連続賞金王や、石川遼の3年ぶりのツアー復活優勝&年間最多賞に沸いた男子ツアー。2020年シーズンの行方を男子ツアーをよく知る識者二人に占ってもらった。

「『ZOZOチャンピオンシップ』に出る日本人選手の‟新顔”に注目」(佐藤信人)

まずはツアー通算9勝、男子ゴルフ界のご意見番でJGTO広報理事でもある佐藤信人プロ。佐藤プロは今年2度目の開催「ZOZO チャンピオンシップ」の「日本人選手の出場枠争いに注目」という

(以下、佐藤)

2019年は女子ツアーで「世代交代」が叫ばれましたが、男子も2020年以降は、徐々に同様のことが起きてきます。男子の場合、その波は大学卒業組から押し寄せてきます。昨年「三井住友VISA太平洋マスターズ」でアマチュア優勝を飾った金谷拓実(東北福祉大3年)だけなく、その前後の層には将来有望な選手がゴロゴロいます。

画像: 18年は「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上4人目のアマチュア優勝を飾った金谷拓実(写真は19年の「中日クラウンズ」撮影/姉崎正)

18年は「三井住友VISA太平洋マスターズ」で史上4人目のアマチュア優勝を飾った金谷拓実(写真は19年の「中日クラウンズ」撮影/姉崎正)

米沢蓮(東北福祉大1年)、中島啓太(日本体育大学1年)、2019年にAbemaTVツアー「石川遼 everyone PROJECT challenge」でアマチュア優勝を果たした杉原大河(東北福祉大2年)、桂川有人(日大3年)など世界レベルの選手になれる優秀な選手が、続々とツアーメンバーに入ってくるでしょう。

そういう意味でも、2020年シーズンは25歳前後の若手プロの躍進や奮起を期待したい。近い将来に自分のポジションを脅かす存在が年下に大勢いる。それを感じることができるか否かーー。ひとつの目安になるのが、今年からは国内ツアーの賞金ポイントには加算されなくなりますが、10月の「ZOZO チャンピオンシップ」です。

画像: 3年連続賞金王の期待がかかる今平周吾と2019年に‟復活”を遂げた石川遼。彼らを脅かす若手は登場するか!?(写真は今平、石川遼ともに19年「KBCライザップ オーガスタ」撮影/姉崎正)

3年連続賞金王の期待がかかる今平周吾と2019年に‟復活”を遂げた石川遼。彼らを脅かす若手は登場するか!?(写真は今平、石川遼ともに19年「KBCライザップ オーガスタ」撮影/姉崎正)

今年も男子ツアーからは13名の出場枠がありますが、このなかにどれだけ割って入れるか。

今平周吾、石川遼、星野陸也、堀川未来夢などの日本人勢に加え、ショーン・ノリス、チャン・キム、ジャズ・ワタナノンド、ガン・チャルングンなどの外国人勢……。その競争のなかに割って入れる若い選手がどれだけ出るかが、来季の男子ツアーの盛り上がりにも影響してくるのではないかと感じます。

たとえば26歳の佐藤大平などは、昨年4月のPGAの下部ツアー・ツアーチャイナの「重慶選手権」に出場し優勝したりしていますので、いずれは海外ツアーで自分を試したいという気持ちが感じられます。国内ツアーで優勝してもおかしくない力はもう十分に秘めていますし、2020年は初の賞金シード選手で迎えますが、それだけで喜んでいるような雰囲気もない。なおのこと期待したいですね。

画像: 2018年はAbemaTVツアーで賞金王、2020年にレギュラーツアー初優勝の期待がかかる佐藤大平(写真は19年の「関西オープン」撮影/姉崎正)

2018年はAbemaTVツアーで賞金王、2020年にレギュラーツアー初優勝の期待がかかる佐藤大平(写真は19年の「関西オープン」撮影/姉崎正)

「ZOZOの出場枠」のような明確な争いがあるというのは日本ツアーにとって、すごくいいことです。あそこに何人の新しいプレーヤーの名前が入ってくるかというのは注目のしどころです。

「‟インシャロー”がスウィングのキーワードになる」(黒宮幹仁)

続いては、松田鈴英や梅山知宏などのコーチを務め、選手会長の石川遼とは同級生でジュニア時代から親交のあるプロコーチ・黒宮幹仁。黒宮は男子ツアーにも最新のスウィングが浸透。これをモノした選手が「ZOZO チャンピオンシップ]でも海外選手に負けない活躍をするのでは? という。

(以下、黒宮)

昨シーズンは石川遼の復活優勝、「ZOZOチャンピオンシップ」、浅地洋佑、堀川未来夢などの若手の活躍もあり新陳代謝を感じました。

画像: さらに飛躍が期待される若手の代表格・堀川未来夢とシャロースウィングをすでに取り入れ2019年はツアー2勝と躍進した浅地洋佑(堀川、浅地ともに写真は19年の「全英オープン」(撮影/姉崎正))

さらに飛躍が期待される若手の代表格・堀川未来夢とシャロースウィングをすでに取り入れ2019年はツアー2勝と躍進した浅地洋佑(堀川、浅地ともに写真は19年の「全英オープン」(撮影/姉崎正))

その中で、スウィングへの意識の変化も見られます。フジモンティこと藤本敏雪コーチが9月頃からツアー会場でコーチをするようになって、「シャローイング」といった動きを男子ツアーで浸透させてくれ、少しづつ新たな方向に向かっている感覚があります。

シャローイングとは、切り返しでクラブを背中側に倒すように寝かせて下ろす動作で、慣性モーメントの大きくなった現代のクラブに対応して、スウィング中のフェースの開閉を少なくし、入射角を浅くするための方法と言えます。

私は、2020年はインサイドからシャローにクラブを入れる「インシャロー」がキーワードになると見ています。実際、2019年10月のZOZOチャンピオンシップでは、多くの海外選手がそのようなスウィングで飛ばしていました。

ZOZOで印象的だったのは、どの選手も体のラインよりも大きく右に打ち出していたことです。「プッシュアウトしているのでは?」という弾道なのですが、それがどこまででも高い放物線を描いて飛んで行くんです。インシャローに振って、意図的にプッシュアウトを打つことで飛ばす姿を目の当たりにして、「自分もやってみたい」と思った選手は多くいたと思います。

片山晋呉さんはいち早くインシャローのスウィングに取り組んでいましたが、2020年はこのスウィングをモノにした選手が、ZOZOなど世界基準の試合で結果を出す姿が見られるのではないでしょうか。

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