PGAツアーの2020年初戦、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズのゴルフネットワークでの放送で、2日目、3日目とゲスト解説を務めたゴルフスイングコンサルタント・吉田洋一郎が「もっとも印象に残った」と語るのが、プレーオフで敗れたザンダー・シャウフェレのプレー。その理由は!?

ザンダー・シャウフェレ、こんなにいい選手だったのか!

PGAツアーの試合を現地取材するとき、多くの場合、私は松山英樹選手やタイガー・ウッズの組にスタートからホールアウトまでついて歩きます。そして、彼らのホールアウト後に、上位選手や話題の選手のプレーを見る。そういうスタイルで観戦しています。

そんな私が意外とちゃんと見たことがなかったのが、ザンダー・シャウフェレ。今回、解説の仕事を通じて彼のプレーを(モニター越しではありますが)じっくりと見て、「こんなにいい選手だったのか!」と驚かされました。今さらか! とお叱りを受けそうですが(笑)、その理由をお伝えします。

ゴルファーとしては、ボギーを打たない硬いゴルフ、安定感のあるプレーがまず素晴らしい。178センチ、80キロの体格は、PGAツアーの中にあっては小柄といっていい部類ですが、飛距離も300ヤード台半ばを平均で飛ばします。前年度覇者として臨んだ今回の試合でも、3日目途中までボギーを打たない見事なプレーを見せてくれました。

そのプレーを支えているのが、私はアドレスだと思います。とにかくアドレスのバランスが非常にいいんです。

私の目には、彼のアドレスはまるでクラブを持っていないように見えます。アマチュアゴルファーのみなさんの中には、クラブをぎゅーっと地面に押し付けるようにアドレスする方や、クラブを強く握りしめ過ぎて、前のめりになってしまっているという方が散見されます。クラブを持つと、どうしてもそれに影響されてしまうものですが、シャウフェレの場合クラブにまったく影響されず、スッと自然体で立てているんです。

画像: すぐに動き出せる雰囲気のあるザンダー・シャウフェレのアドレス(写真は2019年の全米オープン)

すぐに動き出せる雰囲気のあるザンダー・シャウフェレのアドレス(写真は2019年の全米オープン)

「ゴルフのアドレス」をしているというよりも、運動を行う上で理にかなった、いますぐに動き出せる姿勢が取れている。非常にバランスが良く、次の瞬間にバク転ができそうな雰囲気があります。みなさんも、ぜひ参考にしてみてください。

そんなアドレスからのスウィングは、ダウンで沈み込み、インパクトでジャンプするような動き、すなわち地面反力を使った飛ばしの要素と、腕と体を同調させた安定性の要素のバランスがこれまた非常にいいんです。同じ動きを繰り返せる機械的な部分と、ヘッドを走らせるリリースの柔らかさ、両方を兼ね備えています。

画像: シャウフェレはトップからダウンスウィングにかけて沈み込み、インパクトで地面反力を使って飛ばしている(写真は2019年の全米オープン)

シャウフェレはトップからダウンスウィングにかけて沈み込み、インパクトで地面反力を使って飛ばしている(写真は2019年の全米オープン)

以前、コーチでもあるお父さんに直接話を聞きましたが、飛距離を出すために意識的に地面反力を取り入れていると教えてくれました。地面反力、運動連鎖といった、バイオメカニクスが示す効率の良いスウィングの必須要素をきっちり抑えた、現代的なスウィングといえます。

余談ですが、シャウフェレは18歳になるまで自分のスウィングを見たことがなかったとか。細かい形を気にしなかったからこそ、このような効率の良いスウィングができるようになったのかもしれませんね。

ひいおじいさんがプロサッカー選手、お父さんはオリンピックを目指した10種競技の選手だったというアスリートの血を継ぐシャウフェレ。いいアドレスが生むいいスウィング、そして抜群の安定感で、今年もメジャーで優勝争いに加わってきそうな気配です。

撮影/姉崎正

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