世界的ゴルフ設計家ピート・ダイが去る1月9日、94年の生涯を閉じた。第5のメジャーと呼ばれる「ザ・プレーヤーズ選手権」の舞台TPCソーグラスほかアメリカ国内にとどまらず世界で数多くのコースを設計した鬼才の死にPGAツアーはすぐさま追悼の文章を綴っている。

「ゴルフは公正なゲームではないのに、なぜ公正なゴルフコースを造る必要があるのか?」

PGAツアーの前コミッショナー、ディーン・ビーマン氏がダイにリクエストしたのは「より多くのギャラリーが観戦できるスタジアムコース」。難題に応えたダイは決して条件が良いわけではないフロリダ州ジャクソンビルの南、ヘビが生息する沼地に世界一有名なパー3、アイランドグリーンの17番を有す壮大なコース=TPCソーグラスを1980年に完成させた。

画像: TPCソーグラスの17番ホールは世界一難しいパー3とも呼ばれている(写真は2014年のザ・プレーヤーズ選手権 撮影/姉崎正)

TPCソーグラスの17番ホールは世界一難しいパー3とも呼ばれている(写真は2014年のザ・プレーヤーズ選手権 撮影/姉崎正)

ダイは既成の概念を取り払い荒地さえもゴルファーのチャレンジ意欲を掻き立てる魅力的なコースに仕上げる魔術師だった。その影にはやはりゴルフ設計家だった故・アリス夫人の協力があったといわれている。

画像: ゴルフ世界殿堂入りをした設計家ピート・ダイ

ゴルフ世界殿堂入りをした設計家ピート・ダイ

開場2年後にTPCソーグラスはザ・プレーヤーズ選手権のホストコースとなったが、初代チャンピオンに輝いたジェリー・ペイトは「いじめにも似たタフなセッティング」と奇想天外なダイの発想を揶揄。「仕返しだ」とばかり設計家の手を引き強引に池に飛び込んだのだが、この逸話が長い間ゴルフ界で語り継がれることに。

2年前に小平智が優勝したRBCヘリテイジを開催するハーバータウンGLや全米プロを3度行っているウィスリングストレイツもダイの作品。ダイ設計のコースは枚挙にいとまがない。

ときに巨大、ときに極小のグリーン、ポットバンカーやウォーターハザードを戦略的に配したコースは、挑戦する者を迷わせ消耗させる。そのことに関してダイは面白いことをいっている。

「ゴルフは公正なゲームではないのに、なぜ公正なゴルフコースを造る必要があるのか?」

画像: 千葉県のきみさらずゴルフリンクスもピート・ダイが設計したゴルフ場のひとつだ

千葉県のきみさらずゴルフリンクスもピート・ダイが設計したゴルフ場のひとつだ

日本がバブルに湧いていた時代に国内でも多くのコースを手がけたダイ。実務は主に息子のペリーが行った。余談だが当時は誰もが羽振りが良かった。仕事の合間に銀座のクラブを訪れるとダイ御一行様(主にペリー)は夜毎ホステスひとりひとりに万単位のチップを弾んでいたという。新設コースが造られなくなったいまではそんな銀座豪遊伝説は遠い昔の物語だ。

2008年に設計家として5人目のゴルフ世界殿堂入りを果たしたダイ。最愛の妻アリスさんを2019年に亡くした1年後、彼女の後を追うように天に召された鬼才。ご冥福を心よりお祈りします。

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