切り返しでクラブを寝かせる動きシャローイング
切り返しでクラブを寝かせることでヘッドの入射角を浅くし、スウィング中のフェースの開閉を抑えて飛距離と方向性を向上させる「シャローイング」という動き。ゴルフのティーチング界隈では昨年からある種の流行語となっている言葉だ。
マシュー・ウルフらを教える人気コーチ、ジョージ・ガンカスの提唱するスウィング理論が代表的で、ガンカスに師事したコーチ・藤本敏雪が日本ツアーでも選手たちにレクチャーするなど、洋の東西を問わずに一大ブームの様相を見せている。
PGAツアーではタイガー・ウッズやアダム・スコットなども似たような素振りをする姿が見られ、国内ではジョージ・ガンカスのレッスンをYouTubeを通じていち早く見ていたチャン・キムや石川遼、片山晋呉、浅地洋佑などが取り入れている。
クラブを寝かせて下ろすことでインパクト付近では勝手にスクェアに戻りオートマティックにインパクトできるという考え方で、体の動きとしては切り返し以降左ひざを積極的に動かしていくことで、下半身を回していく。
今回、YouTubeでのレッスンが人気の“キウイコーチ”ことクロスセテリアと、クラブの動きを物理的解析する“ジェイコブス3D”の専門家であるマツモト・タスクの二人が主宰したセミナーでは、このシャローイングについて詳細に語られた。
その参加者の中にはツアー2勝の横田真一の姿も。横田は、キウイコーチにこんな質問を投げかけていた。
「ドライバーの飛距離を伸ばすためには、最近のシャットに使って(バックスウィングでフェースを開かず)、(ダウンスウィングで)シャローに入れる動きを取り入れたほうがいいのでしょうか? 自分では体の正面でとらえる(ダウンスウィングで体を開かない)打ち方を長くやってきていて、やろうとしてもなかなかできないんですよ。それでも最近の選手を見ているとシャローイングの動きを取り入れている選手が多いですよね。トライする価値があるのかな?」(横田)
これはまさに、多くの人が抱えている疑問だろう。バックスウィングでフェースを開かず、切り返しではクラブを寝かせて左ひざをターゲット方向に動かし、あとは体の回転でクラブを引っ張り、インパクトを迎える。どうやらそのようなスウィングが世界のスウィングのメインストリームになっていきそうな気配があるが、自分もその流れに乗ったほうがいいのか!? 横田の疑問に対するクロセテリアの答えは明快そのものだ。
「新しいことにチャレンジすることはいいことだけど、それが横田さんのスウィングですし、今まで積み上げてきたものの7割は失うことになると思います」(クロセテリア)
な、7割……! それくらい「シャローイング」を取り入れたスウィングは、従来のスウィング理論とはかけ離れた理論ともいえる。
では、もし7割の犠牲を支払ってシャローイングをモノにしようと思ったら、どのように行えばいいのだろうか? クラブの動きの物理的解析の専門家であるマツモトは、「クラブを寝かして動かすだけではシャローイングは成立しない」と説く。
「クラブに加わる力の観点で言うと、クラブをコントロールするためには押す力ではなく引く力を使うことが大切です」(マツモト)
引く力を意識するには、グリップエンドにどの方向に力が加わっているかを意識するとわかりやすい。トップからの切り返しではターゲットと反対方向に力が加わり、ダウンスウィングでは地面方向、インパクトでは体方向にクラブを引く力が加わり続けることで、クラブヘッドは円運動を描き、大きなエネルギーを得てヘッドスピードが上がり、ボールを遠くに飛ばせることにつながっている。
「シャローイングの動きを安易に取り入れると、クラブは寝て手元が浮きシャンクする原因にもなりかねません。シャローイングをどのようにさせるかにより不必要なクラブの動きを発生させる場合も多く、インパクトまでに様々な方向の力を加えて相殺させなければならなくなります。そこでは高度なマッチアップさせる(自分のスウィングに合わせる)技術が必要になります」(マツモト)
シャローイングが世界中のツアーで大きな流れとなっているのは紛れもない事実。ただ、それを取り入れようとして、形だけをマネするのは非常に危険だというわけだ。
まだまだ生まれたばかりの考え方で、日本における現状はプロやインストラクターが学んでいる段階。やがてはこの動きがスウィングの“常識”となる日も来るかもしれない。みなさんも、やってみたい! と思ったら、専門家の指導のもと取り組むのが吉だろう。
取材協力/Gサルースゴルフクラブ
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