主役はミケルソンでもファウラーでもなく、ランドリーだった
49歳のフィル・ミケルソンがトーナメントのホストを務めた「アメリカンエキスプレス」は、テキサス生まれのアンドリュー・ランドリーがエイブラハム・アンサーに2打差をつけ、26アンダーで優勝。連日60台の好スコアを叩き出し、2018年バレロ・テキサスオープン以来のツアー2勝目を飾った。
「やっと勝ててよかった。このコースは好きだし、いい成績を出したこともあった試合。あの時と同じゲームプランで、自分を信じて戦った」
優勝直後のTVレポーターのインタビューに、思わず涙ぐんだランドリー。今シーズンに入って8試合出場していたものの、予選通過はセーフウェイオープンのわずか1試合のみ、と非常に苦しい日々が続いていただけに、今回の優勝は何よりも身にしみて嬉しかったに違いない。
今年に入ってソニーオープン前に病気を患い、体調不良のままハワイの悪天候の中をプレーしたが、予選落ち。だが気分一転、自分が過去、いい成績を残したことのあったパームスプリングスのコースでコツコツと連日60台をマークしながら、徐々に自信を取り戻していった結果、優勝というご褒美が転がり込んでくるとは……何が起こるかわからないのがゴルフだ。
「ゴルフというゲームはクレージーだね。もっともワイルドなスポーツだと思う。ただ頑張るしかないんだから」
彼は優勝前に「自分のゴルフは浮き沈みが激しく、安定感に欠ける。それがフラストレーションが溜まる原因」と語っていたが、そんな彼の目標は世界のトップ30に入ること。だが、毎週予選落ちでは100位に入ることすら難しく、目標からは到底かけ離れていた。
実際、最近の不調ぶりから自信を持てる状態でもなかったようだが、なかなか成績には現れないものの、昨年のオフは特に一生懸命、毎日コツコツと練習を重ね、自分を信じてここまでやってきたのだという。
最終日はフロント9で3つのバーディを奪い、後半に入って3連続バーディをマークしたものの、その直後に3連続ボギー。彼の浮き沈みの激しい波のあるプレーぶりは最終日にも垣間見られ、一時はエイブラハム・アンサーに並ばれたが、17番、18番と上がり2ホールで連続バーディを取り返し、2打差をつけて優勝を果たした。
「今週はずっとスウィングもよかったし、パッティングもよかったんだ。今週のトーナメントの大きなカギとなるショットは、今日の17番ホールのティショットだろうね」
今回、優勝したことで、フェデックスカップも178位から17位に一気に浮上。この調子でいけば、フェデックスファイナルに出場できる30位以内のエリート集団の中に、入ることも十分可能だ。また、プレーヤーズ選手権やマスターズ、全米プロ、来年のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズなどへの出場権も得ることができ、世界の強豪と同じフィールドに立って戦う経験も増えてくる。
だが一方で、ファンから人気のある選手たちを相手に戦うと、彼のような地味なタイプの選手(失礼!)はアウェイ感を感じ、寂しさを感じることも事実。全米プロチャンピオンのスティーブ・エルキントンからは、初優勝の時も今回も「カメラマンやメディア、ゴルフファンたちはみなリッキーやダスティン・ジョンソンといった人気選手に注目し、応援するから、キミはアウェイ感を味わうかもしれないが、そんな人たちのことはすべてやり過ごし、自分がやらなければいけないことを自分のやり方でしっかりやれ」と教わったのだという。「バカげたことだと思うかもしれないけど、テキサスオープンで優勝した時も今回の優勝でも実際すごく役に立ったんだ」
ランドリーは決してツアーの中でも華のある選手、あるいは人気選手とは言い難いが、そんな彼のような選手が、優勝することで大きな自信を得、周囲に応援されなくても自分がやるべきことをしっかりやれば勝てる、と覚悟を決めれば、ますます強い選手に成長することだろう。
今までの浮き沈みの激しいゴルフ人生も、おそらくメンタル面によるところも多かったのではないかと推察するが、優勝できたという大きな自信が、今後の彼のゴルフ人生に安定感をもたらすことは間違いない。