スウィングを可視化できる!
「スウィングカタリスト」とは、スウィング中の左右の足裏の体重(足圧)のかかり具合から、横方向へ移動する力(ホリゾンタル)、回転力(トルク)、地面反力(バーティカル)の3つの力がスウィング中にどのように変化するかを可視化することができるマット状の器具。
これを自身のスタジオ「エースゴルフクラブ」に導入しているのが、大西翔太の妹・大西葵など多くのツアープロの指導にあたる石井忍。最先端機器でなにがわかるのか、大西が石井に弟子入りした。
「では、さっそく打ってみましょう! 自分でいい感じで打てた、と思えた1球があれば言って下さい」
石井にそう促され、7番アイアンを手に計測を行う大西。「今のはいい感じでした!」と申告したキャリー174ヤードの1球をもとに、石井がスウィングカタリストのデータをひも解いていく。
「自分の体重を100%としたとき、今、どの場所に、どれだけ、どちらの方向に『踏んでいるか?』。スウィング中の左右両足にどれくらい圧力がかかっているかを知ることができるんです」と、スウィングカタリストの機能を説明する石井。大西の計測データを見てみると、
トップ(右48%:左52%)
切り返し(右69%:左31%)
インパクト(右38%:左62%)
という割合で左右の足に圧がかかっていることがわかる。そこからは切り返し以降インパクトにかけて、右から左へと滑らかな体重移動ができていることが伺える。
そして、さらに分析を進めると、大西のスウィングは、横方向へ移動する力(ホリゾンタル)、回転力(トルク)、地面反力(バーティカル)の3つの力のうち、横方向の力と回転力は十分だが、縦のエネルギーが弱いことがわかってきた。
データを使ってスウィングを修正していく
そしてここからが本番。集まったデータを使って、どのようにスウィングを修正していくかの実践に移る。
大西のデータは、左右への移動の力、回転力、地面反力の、スウィングを構成する“3つの力”のうち、地面反力の使い方が弱いことを示していた。実際に、「腰を回転させる意識で打っていた」という大西のスウィングは、データをもとにどう改善することができるのだろうか。
石井が提案したのは、石井にクラブヘッドを引っ張ってもらった状態で、左手一本でクラブを引くドリル。その際、腕や手先で引くのではなく、地面反力を使いながら左脚や背中でヘッドを引っ張ることを意識する。引っ張る力は地面反力を上手く使えた場合に最大となることを体に覚え込ませることで、縦方向のエネルギーの割合を増やすという狙い。
「左脚を伸ばすというより、左サイドを使ってクラブを引っ張る感覚です。左手リードの感覚が凄くつかめました」とドリルをこなした大西。
石井によれば、飛ばそう、強く叩こうという意識が強くなればなるほど、体もクラブも前に出がちになる。それを防ぎつつ、大西の弱みである垂直方向への力を高められるのが、この左手一本でクラブヘッドを引っ張るドリルというわけだ。
これは万人に合うドリルというわけではなく、あくまで大西のようなタイプに合うドリル。このようにタイプに合ったドリルを提案できるのも、計測機器と、それを使いこなす知識があればこそということになる。
さて、このドリルを繰り返したのち、再度、同じ7番アイアンで打って計測してみると、68%だったインパクト時の左足の踏み込み比重は、80%にまでに上昇した。
「可視化したデータがあれば、スウィングの『伸ばしどころ』がわかる。それがわかれば、どこを強く使えばもっといい結果を出せるかがわかるんですね……!」とこの結果には大西も目からウロコ。
「今回は『長所を伸ばす』ことに着目しましたが、逆にミスの傾向を修正する目的にも、もちろん使えます。『こういう動きをしているから、そういうミスが出る』というデータに基づき、フックやスライスが出るスウィング軌道を微調整することにも使えるんですよ」(石井)
最新機器を使いこなし、データをもとに最適なドリルを提案してみせた石井忍。その手際に、感心仕切りの大西翔太であった。