ケンジロウです。サンディエゴのトーリパインズGCよりお届けしております。
「ファーマーズインシュランスオープン」3日目が終わりました。今日は朝からコース内には霧が立ち込めていて、スタート予定時間の7時半ごろ、1番ホールのフェアウェイではコースオフィシャルのカートが鎮座して、霧の状態をジーっと観察していました。
プレスルームが1番ホールの2打目地点の横にあるのですが、我々メディアの人たちも「霧が早く晴れないかな」と1番のティグランド方向をジーっと眺めていました。
10分ディレイ、30分ディレイ、1時間ディレイと徐々にスタートが遅くなり、最終的に松山英樹がスタートできたのは、予定より2時間遅れの10時05分。選手たちは練習をいったん中断して、車の中で待機したり、ロッカーで待機したりして、暖をとっていたようです。
3日目の成績ですが、注目のタイガーは3つスコアを伸ばし、トータル7アンダーで14位タイ。まだ優勝を狙える位置にはいます。ひとつ後ろの組にいた松山英樹はスコアを2つ落として、トータル2アンダーの50位タイ。ジョン・ラームが今日7つ伸ばして単独首位に躍り出ました。
さてさて、今日の話題はというと、松山と同組だったマキロイについてです。なんと、彼のクラブセッティングにある大きな変化があったんです。
「ドライバーをSIMにしたってこと?そんなの知っているよ」という声が聞こえてきそうですが、それもそうなんですが、ドライバーのことではないんです。実は14本の中に、人生で初めて「ウッド型ユーティリティ」を入れたんですよ。契約するテーラーメイドの新しい「SIM MAX RESCUE(シムマックスレスキュー)」を試したところ、すごく良かったみたいで、今週からすぐに実戦投入しました。
我々にとってウッド型UTというのは、やさしいクラブとして今や定番になりつつありますが、プロには意外と敬遠されがち。ウッド型UTを入れている選手は少ないのが現状です。
なぜウッド型UTがプロの間で流行らないのか、その理由を、月刊ゴルフダイジェストの「目黒研究所」の連載でお馴染みクラブに詳しいミスターX氏に語ってもらいました。
「ウッド型UTはプロにとっては実は一番難しいクラブなのかもしれないですね。ヘッド速度が速いとヒール寄りに重心がかかってきやすいので、そうなるとすごくフェースがかぶってきやすい。インパクトで急激にヘッドが返ってしまうんですね。プロにとってはまったくやさしくなく、“レスキューしてくれないクラブ”になってしまうんです」
なるほど、ではなぜ今回マキロイは投入に踏み切ったのか?テーラーメイドの現地レップの方に話を聞いてみました。
「今回のSIM MAX RESCUEは実はトウウェイトなんです。2グラム分トウ側を重くしています。急激にヘッドが返ることはなく、左へのミスを気にしなくていい。またUTはトウ側に重さがあったほうがMOI(慣性モーメント)が上がって、安定感が高くなるんです。無理に自分で上げにいかずに、高さが出せるようになりました。ローリーもそこを気に入ってくれたんだと思います」
今日の3日目のラウンドでは6番パー5の2打目、ピンまで247ヤード地点でこのユーティリティが登場。2オンこそならなかったものの、グリーン横までもっていって、バーディのきっかけを作りました。
試合後、マキロイ本人にそのUTの話を聞いてみました。
「自分でもウッド型ハイブリッド(ユーティリティ)を入れるなんて思っても見なかったから驚いているよ。だってすごく簡単だからさ、7番アイアンの感覚で260ヤードを打てるからね。球が高く出て、グリーンでも止まってくれるさ」
なるほど~。スウィングを無理に変えずに楽にグリーンを攻められるとあっちゃあ、それは14本の中に投入したくなりますよね。近年はPINGのユーティリティなど、プロから評価を受けるウッド型UTも増えていますよね。前出のミスターX氏にいいウッド型UTが増えつつある背景を解説してもらいました。
「ドライバー、フェアウェイウッドは正直もう進化しきっていますが、意外とユーティリティは進化してこなかった。でもPGAツアーでいまいちばん大事な距離と言われる230~250をカバーするクラブとして開発の面でもとても注目されているんです。まだ進化の余地のあるゾーンなんですよね。今まではその距離をロングアイアンやアイアン型UTでカバーしていましたが、それだと高さがなかなか出せなかった。高さを出すにはカットで入れるか、ロフトを自分で増やすかして、技術で出さなければいけないですからね。プロは球の高さを落とすのは簡単にできるんですが、距離感をコントロールしながら技術で高さを出すのは本当に難しいんですよ」
実はこの「SIM MAX RESCUE」、松山英樹も今週テストしていて練習場で見ている限り、感触は良さそうです。エースの「G410 UT」にとって変わる勢いで、実戦投入も近そうな予感がしましたよ。
そういえばダスティン・ジョンソンもマキロイと同じく、ウッド型の「SIM UT」を人生初投入したと聞くから、このクラブ、人気が出そうな匂いがプンプンしますね。早く我々も使ってみたいですよね。
写真/姉﨑正