先週のPGAツアー「ファーマーズインシュランスオープン」の最終日に7アンダーの65と猛チャージをし、逆転優勝を果たしたリーシュマン。勝利の裏側には「少しでも希望を与えられれば」という祖国への強い想いがあった。海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

ファーマーズインシュランスオープンの最終日、首位のジョン・ラームと4打差でスタートした豪州のマーク・リーシュマン。ショットとパットが冴え渡り、最終日は65の好スコアをマーク。ラームを1打差でかわし、逆転優勝を果たした。今大会でツアー5勝目を挙げ、フェデックスカップランクでは49位から一気に7位に浮上。世界ランクも20位に上がってきた。

「すごく素晴らしい気分だ。特にオーストラリアは今、火事で大変なことになっており、多くの人たちが命を失い、本当にひどいことになっている。そんな時にこの優勝がちょっとでもみんなに希望を与えられればいいね」

先々週、ソニーオープン・イン・ハワイでツアー初優勝を果たしたキャメロン・スミスもオーストラリア人であり、祖国の大災害に心を痛めながら、なんとか力になりたいという気持ちで戦っていたというが、リーシュマンにとってもそれは同じこと。たまたまソニーオープンの同週に行われていたアジアンツアーの香港オープンでは同じく豪州のウェイド・オームスビーが優勝、そしてファーマーズと同週に行われていたヨーロピアンツアーのオメガ・ドバイクラシックでは、豪州のルーカス・ハーバートが優勝している。たった1カ月間で世界中で豪州のプロゴルファーたちが4勝も挙げているのも、祖国を離れて戦っていても、常に頭の中では祖国を想い、何か自分たちにできることはないか、少しでも希望を与えられれば、と強く想いながらプレーしている結果が現れているのだと思う。優勝は、その想いが結実したものなのだ。

画像: ツアー5勝目を挙げたマーク・リーシュマン(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

ツアー5勝目を挙げたマーク・リーシュマン(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

さて、今やプレジデンツカップでは常連選手となり、メジャー大会などでも上位に名を連ねることができるようになっている中堅のリーシュマンも、昔はツアーで5勝を挙げるような選手になれるとは思ってもみなかったそうだ。

「ツアーに出てきた頃は、ただシード権をキープしたい、仕事を失いたくない、という気持ちで戦っていた。1勝を挙げると、1勝で終わるような選手にはなりたくないと思った。2勝を挙げたら、もっと優勝できると思い始めたが、それでもまさかツアーで5勝を挙げるとは正直言って思ってもみなかったよ。ラッキーだなと思う。トーリーパインズでは何度か優勝争いに絡んだから、なおさらここで勝てて嬉しい。今年でツアー12年目だが、とても満足している」

マーク少年が17歳の時、初めてファーマーズインシュランスオープン開催コースであるトーリーパインズを訪れた。世界ジュニアに出場するため、初めて母国を離れアメリカにやってきたのがこの地だったのだ。両親が見送る中、一人飛行機に乗り、サンディエゴにやってきたのが彼にとって人生初のアメリカ上陸の日。それから約20年、オーストラリアの建国記念日である1月26日のオーストラリアデーに、アメリカ初上陸の地でPGAツアー優勝を果たせたことは、彼もきっと何か運命のようなものを感じているかもしれない。

「去年は優勝できなかったけど、今年はこうして勝てた。(同郷の)キャメロン・スミスも数週間前に優勝し、来年は一緒にマウイに行けるのはいいね。ルーカス・ハーバートもヨーロピアンツアーで優勝したし、まさにオーストラリアデーだね」

今年の目標は、今年中にまた優勝することだという。そして、今年の夏には東京オリンピックがあるが、リオ五輪に出られなかった彼は、今年こそ、とオリンピアンの座を狙っている。

「オーストラリアを代表し、国のためにメダルを勝ち取りたい」

母国の災害を機に心を一つに戦う彼らは、例年以上に強く、確実に結果を残している。オリンピックもメジャーもオージーたちに注目が集まる1年になるかもしれない。

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