デビュー当時のタイガーの6勝分の賞金を1試合で稼げるようになった
日本中がバブルに沸いたころ「日本に行けば稼げる」と海外の大物選手がこぞって来日したもの。そんな時代はとうの昔に去り、いまや国内男子ツアー(ZOZOチャンピオンシップを除く)でもっとも高額な大会でさえ1試合の総額2億円。ところがPGAツアーでは優勝者ひとりがその1.5倍を稼ぐ時代がやってきた。
「どんどん上がるね。素晴らしい。我々に文句はないよ」というのは16年のプレーヤーズ選手権覇者ジェイソン・デイ。
昨年優勝したローリー・マキロイが獲得したのは225万ドル(約2億5千万円)。前年比で今年は約5千万円の上積みとなる。また賞金総額ベースでいくと18年に50万ドル(約5500万円)、19年に150万ドル(1億6500万円)、そして今年150万ドル増額され1500万ドル(約16億5千万円)まで跳ね上がった。デイのいうように「どんどん」上がり天井知らずの勢いだ。
タイガー・ウッズがデビューしマスターズを21歳で制した90年代終盤、テレビ放映権料が高騰し一気に賞金が倍増され“タイガーバブル”が到来した。ライバルたちは「タイガーがいなければもっと勝てたけれど、タイガーがいたから皆が(バブルの)恩恵を受けた。彼には感謝しているよ」(アーニー・エルス)といっていた。
当時でさえタイガーがデビューした96年と翌97年(ツアー6勝)の獲得賞金を併せるとおよそ3億円。それだけの額を1試合で稼げる時代がやってきたということだ。
裏にはジェイ・モナハンコミッショナーの巧妙な計算がある。「プレーヤーズはツアーのフラッグシップトーナメント。そこが上がればメジャー大会もバランスを考えるはず」とザンダー・シャウフェレがいうように、同大会の賞金が抜きん出たことで今後メジャーの主催者も賞金アップを検討せざるを得ない。そうすればツアー全体の底上げになるというわけだ。
昨年の実績はUSGA(全米ゴルフ協会)主催の全米オープンが賞金総額1250万ドル、マスターズ委員会が主催するマスターズは1150万ドル、PGAオブアメリカ主催の全米プロが1100万ドル、R&
A主催の全英オープンが1075万ドルだった。
プレーヤーズが1500万ドルに上げたいま、メジャーの沽券にかけそれぞれが賞金総額を再検討することになるだろう。
「ZOZOチャンピオンシップでは潜在的ゴルフファンの多さが浮き彫りにされた。大会成功の流れを活かせば日本ツアーも活性化する」とモナハンコミッショナーはいった。しかし繁栄するのはPGAツアーのみとは…。