グリーンの傾斜が詳細に書かれているのが「グリーンブック」
ケンジロウです。アリゾナ州のTPCスコッツデールからお届けしております。今回の話題は、グリーンブックです。試合の中継を見ていて気づいている方も多いと思いますが、選手やキャディは、ヤーデージブックとは別に“グリーンブック”なるものを持っていて時に応じてグリーンの情報をチェックしているんです。
ヤーデージブックと同じ大きさですから、ヤーデージブックを見ているのかどうか区別がつきにくいですが、意外とグリーンブックを見ているケースは多いんです。グリーン上だけでなく、2打目やアプローチなどグリーンを狙うショットで活用しているんですよ。
グリーンブックを作っている会社は二つあって、ひとつはヤーデージブックを作っているマークロングさんが手がける「Green Contours」というグリーンブック。こちらは毎週キャディラウンジなどで1冊だいたい150$で売っています。日本円で1万6000円ぐらいですかね。キャディがペアで1冊を買うケースが多いみたいです(ちなみにヤーデージブックはPGAツアーが選手にタダで配っています)。
写真Aを見てもらえればわかると思いますが、各ホール4つのタイプ別の情報があります。単純な傾斜の度合いによる色分けだったり、傾斜の数字と矢印のセットだったり、同じグリーンですが、それぞれ役割が違うんです。どれを活用するかは選手次第ですが、グリーンを狙うアプローチショットなどでは、色分けのグラデーションの図を活用している人が多いみたいです。傾斜を使ってピンに寄せるときにこの色分けが重要になってくるんでしょうね。
色でだいたいの傾斜をつかんで、ピンの周りなどの具体的な部分を数値で合わせてチェックできるんですね。キャディや選手は、その日のピンポジションを毎日書き入れて参考にしているわけです。
もう一つのグリーンブックは、選手単位と契約をして一週間300$で販売しています。
こちらはピンポジションを毎日入れた状態で選手に渡されます。
試合の前日にピンポジが発表されるや否やピンポジを打ち込んで即座にプリントし、ホッチキスで綴じて翌朝選手のロッカーに差し込んでいます。なんでもプリンターを数台ホテルに持ち込んで夜な夜な作業しているみたいですよ。これだけの作業をするのだから、値段が高いのも仕方ないかもしれないですね。フィル・ミケルソンなどはこちらを使っているようですよ。
では、プロとキャディはどのようにグリーンブックを活用しているのか?
ただいま絶好調のザンダー・シャウフェレのキャディオースティンさんに話を聞きました。
「毎週このグリーンブック(コンツアーズ)を買っています。2打目やアプローチショットでよく見ていますね。グリーンに乗ったときにピンに対してストレートのラインが残るように意識しています。ミスしても変なラインが残らないようにグリーンブックを見ながら話し合って確認しているんです」
あれ、でも二つの情報しか書いてないですね?
「実は僕のはちょっとカスタムしてもらっているんです。情報は二つだけで、ひとつは傾斜の度合の数字。もうひとつは大まかな傾斜の矢印を入れたものです。今週は傾斜の色わけはいらないので、二つの情報だけ入れてもらっているんですよ。そのほうが見やすいでしょ?今週のグリーンは余り必要ないから入れてないんだけど、来週のグリーン(ペブルビーチ)のときは色分けの情報も入れてもらうんだ」
なるほど。選手によってけっこうカスタマイズしてくれるんですね。
ダニー・リーのキャディに聞くとグリーンブックは使わない派で、「自然な自分たちの感覚を優先したい」と言います。
松山英樹ペアはグリーンブック(グリーンコンツアーズ)を1冊買っています。早藤将太キャディによれば「基本的には僕が持っていて、プロの求めに応じてアプローチショットやグリーン上でプロに渡しています」とのこと。
聞けば、グリーンブックを使う人は全体の約75%で、残りの約25%は使用しないとのこと。75%のうちグリーンコンツアーズのシェアが50%ぐらいだそうです。
ちなみにグリーンコンツアーズはフィールド(出場選手)の厚さによって価格は変動するみたいで、出場人数が限られているツアー選手権などはその価格が上がるみたいです。場合によっては300$だったり、500$になったりするようですよ。その値段を高いと思うか、安いと思うか……。
1打を争う競技ですからねぇ、その情報でスコアが変わるなら、やはり欲しくなりますよね。
以上、TPCスコッツデールよりお届けしました。
撮影/姉﨑正