シニア最強のランガーでも「頭が数センチ動いていた」
10年以上に渡りシニア最強の名を欲しいままにしてきたベルンハルト・ランガー。チャンピオンズツアー通算40勝の猛者もときにはスランプに陥る。
「パッティングがダメなときがあってね。ある試合でデイブ(・ストックトン)に5分でいいから見てくれと頼んだんだ。じっと見ていた彼は“インパクトからフォローで頭が数センチ動いている”と指摘してきた。えっ? と耳を疑った。でもそんなつもりはなくてもプロでさえつい基本を忘れてしまう。それを気づかせてくれるところが凄い」とランガーがしみじみ語ったことがある。
10代のころから“ポストタイガー”の一番手として注目され、実際若くして世界ナンバー1に輝いたマキロイだが16年に米ツアーの年間王者になってからスランプを経験した。
17年は優勝がなくフェデックスカップのポイントランクも58位と不本意なシーズンを過ごすことに。そして迎えた18年、彼はある大きな悩みを抱えていた。
「自分のパッティングは自分が持っているショットの技術に追いついていない。確実に足を引っ張っている」
そんなとき住まいのあるフロリダのベアーズクラブでマキロイはファクソンに悩みを打ち明けた。するとファクソンはマキロイに「見る限りキミは感覚派じゃないかな? ならばもっと感性に頼った方がいい」といってきた。
さらにファクソンはパターとウェッジ、それに5番ウッドを練習グリーンに持ってくるようマキロイに指示しそれぞれ3球ずつ打つようにと伝えた。
「パターでは3球中1つがカップイン。ウェッジでは3球中カップに入ったのが2球。5ウッドは3発全部カップインした」(マキロイ)
その結果にファクソンはこんな言葉を贈った。「最近はパッティングがテクニカルやメカニカルに縛られすぎている。道具もやれロフトだ、長さだと細かすぎる。でもいまキミはロフト19度、パターより30センチ近く長い5番ウッドですべてのボールをカップに入れた。もっと本能でゴルフをした方がいい。感性でパットを打つんだ」
その週行われたアーノルド・パーマー招待でマキロイは1年半ぶりに優勝を飾った。しかも大会のストロークゲインドパッティング(スコアに対するパットの貢献度)は驚異の10.027。マキロイ本人も「自分のキャリアで最高のパッティングだった」と振り返っている。
ちなみに16年、17年は三桁台だった同部門のデータが18年末までに97位、19年は24位と急浮上。昨季のプレーヤー・オブ・ザ・イヤー獲得はパッティングが彼の他のゲーム(ショットやアプローチ)に追いついたからといえそうだ。「技術ではなく感性を信じろ」というファクソンの言葉はマキロイにとって運命を変える金言だった。