今年は「M5」「SIM MAX」「マーベリック サブゼロ」を実戦で使用
早いもので、今年のマスターズ開幕まで、すでに50日を切った。昨年はタイガー・ウッズのゴルフ史に残る感動的な優勝があったため、多くの人が忘れているかもしれないが、1打差の2位タイだったのが、ブルックス・ケプカだ。5月には、全米プロを制し、29歳にしてすでにメジャー4勝と、世界のトップ選手の中でも、屈指の強さを誇っている。
皮肉なことに、ケプカの強さが発揮されたのは、2016年にナイキがクラブ・ボール事業から撤退したことがひとつのきっかけになった。用品契約から離れたケプカは、自分が好むより良いクラブを選択できるようになった。例えば、アイアンはそれ以降、ずっとミズノを愛用している。
気になるドライバーだが、テーラーメイドの「M2」(2016年モデル)を使用して、2017年の全米オープンに勝利して以降、「M3」、「M5」と歴代の同社のドライバーを愛用し、その全てでメジャーに勝利するという、離れ業を演じている。
ところが、今年はその流れに少し異変が起きているようだ。
2020年初戦の欧州ツアー「アブダビHSBCゴルフ選手権」では、テーラーメイドのNEWモデル「SIM MAX」を使用。しかし、2戦目となる「サウジインターナショナル」では、初日2日目に昨年愛用した「M5」に戻していた。この事実だけを見れば、新ドライバーが上手くフィットしていないようにも見える。
さらに、驚いたことにこの試合の3日目からは、キャロウェイのNEWモデルである「マーベリック サブゼロ」を使い始めた。少なくともクラブ契約を離れて、ケプカがテーラーメイド以外のドライバーを使用したのははじめてのことだ。ケプカは、今年になってはじめてのPGAツアー出場となる「ジェネシス招待」でも、ひきつづき「マーベリック サブゼロ」を使用している。
ケプカが「マーベリック サブゼロ」を選んだ意図を推測するのは難しい。というのも昨年までの「M5」を含め、今まで愛用してきたテーラーメイドのドライバーと形状も打感も似ていないのだ。これまで選んできた歴代のドライバーを並べてみると、ずっとロックを聴いていたのに、急にテクノを聴かされるような、唐突な感じを受ける。
そこをあえて推測するなら、やはり弾道の結果がより好ましいのではないかと思う。今年、テーラーメイドはこれまでの「M」シリーズをやめて、「SIM」へと舵を切った。その2モデル「SIM」と「SIM MAX」は、見た目はやや似ているものの、そのヘッド特性は大きく異なり、大雑把に言うと「SIM」は低スピン性能が高くハード、「SIM MAX」は寛容性が大きくてやさしい。
「マーベリック サブゼロ」は、低スピン性能や寛容性、操作感などがこの2モデルの中間に位置すると感じられる。ケプカの求める弾道イメージや振り感が、よりマッチしたのが、「マーベリック サブゼロ」なのではないだろうか。
ケプカは「M2」使用時からシャフトを変えておらず、今回の「マーベリック サブゼロ」でも同じシャフトを使用している(※「ディアマナ D+ 70TX」。国内では「ディアマナDリミテッド」として発売予定)。同じシャフトで、自分の求める弾道になるヘッドを求めているはずだ。
クラブ契約フリーを崩さず、自分に合ったクラブを選んでいるケプカは、クラブに対するこだわりはかなり強いはず。このまま、「マーベリック サブゼロ」を使用するのか。マスターズでのドライバーを選択するかは要注目だろう。