先週開催された米女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」に参戦した原英莉花と河本結。同組で予選ラウンドを回り、原が予選通過して最終25位タイ、河本が予選落ちと明暗が分かれてしまった今大会だが……。米女子ツアーで戦った2人について、海外取材経験20年のゴルフエディター・大泉英子がレポート。

元世界ランク1位も「(原英莉花は)米ツアーでも通用する」とお墨付き

今年から米ツアーに本格挑戦している河本結と、国内ツアーを主戦場に戦う原英莉花。ともに国内女子ゴルフ界では「黄金世代」と呼ばれる“強カワプロ”の2人であり、同級生同士だ。

画像: 1998年度生まれの黄金世代、原英莉花と河本結。先週開催の米女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」では予選ラウンドで同組に(撮影/岡沢裕行、大澤進二)

1998年度生まれの黄金世代、原英莉花と河本結。先週開催の米女子ツアー「ISPSハンダオーストラリアン女子オープン」では予選ラウンドで同組に(撮影/岡沢裕行、大澤進二)

そんな彼女たちが先週、ISPSハンダオーストラリアン女子オープンの予選ラウンドを同組でラウンド。彼女たちはともにどちらかというとアグレッシブで、強気のプレーが身上の2人だが、この大会においては原が予選通過を果たして25位タイに入り、手応えと自信をつかんだ一方、河本は1打足りずに予選落ち。「夢と現実は違うのかな」と悔し涙を浮かべた。ここでは彼女たちのゴルフを観て感じたこと、今後への期待を記したい。

まずは原英莉花。昨年の女子オープンでは5オーバーで予選落ちを喫したが、その時の悔しさと経験を生かしてさらに腕を磨き、リゾート・トラストレディスでツアー初優勝。黄金世代の1人としてついに開花した。今年は決勝ラウンドを元世界ランク1位でメジャー2勝を挙げている大ベテラン、クリスティ・カーと2日間連続でプレーし、熟練の技を間近で堪能したが、

「カー選手は風の中でもスコアを伸ばし、我慢するところは我慢して、というメリハリのあるプレーを見させて頂いた。自分の反省点をしっかり反省し、国内開幕戦に向けて調整したい」と語った。

画像: ISPSハンダオーストラリアン女子オープンで通算4アンダー、25位タイと結果を出した原英莉花(写真は2019年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/大澤進二)

ISPSハンダオーストラリアン女子オープンで通算4アンダー、25位タイと結果を出した原英莉花(写真は2019年の樋口久子 三菱電機レディス 撮影/大澤進二)

原英莉花のゴルフは、ツアーの大御所の目にはどう映ったのだろうか? クリスティに原の印象を聞いてみると

「飛距離も出るし、あとはコースマネージメントがもう少しできるようになれば、米ツアーでも通用する」とお墨付き。日本人離れした身長の高さと、手足の長さを生かした大きなスイングアークが持ち味の彼女なら、米ツアーの飛ばし屋とプレーしても飛距離では引けを取らないし、爆発力もあるのでツアー優勝もできるのでは? と大いに期待させてくれる。

原自身も語っていたが、コースマネージメントに関しては、日本ツアーと海外ツアーのコースの違いもあるので、今後は慣れも必要だろう。だが、こうした海外遠征を積めば、海外のコースで求められるコースマネージメントがわかってくるはず。まだまだ伸び代は十分ある。

また、私が以前、「アマタフレンドシップカップ」という日本とタイの親善試合のプロモーターを務めた時、チーム入りしてくれた彼女は過密スケジュールにも関わらず全戦全勝を挙げ、チームに大いに貢献した。この時、彼女の「負けたくない!」という気持ちの強さと「日本に勝ち星をもたらすんだ!」という根性に強く魅力を感じたものである。対戦国のプラヤド・マークセンからサインをねだられるというシーンも目撃したが、日本人だけでなく、外国人からも大いに人気が出そうな華のある選手なのだ。

サバサバしていてひょうきんな一面も持つ原英莉花。ノリも良く、外国人からのウケもいい彼女なら、海外に出ればさらに何か大きなことをやってくれそうな予感がする。そして日本人の美徳も忘れない。プレーを終えて、クリスティ・カーと最終ホールで感謝の意を表現する時、通常はハグを交わして別れるところを、頭を下げ、両手で握手した。

クリスティは慣れない挨拶にちょっと面くらっていたようだが、原の日本人ならではの礼儀正しさ、気持ちは十分伝わっていることだろう。大ベテラン相手に軽々しくハグをするのではなく、心からクリスティへのリスペクトを表したいいシーンだな、と思った。

「現実は甘くない」。河本結がぶつかった世界との壁

一方、河本結だが、米女子ツアーメンバーとしてISPSハンダVICオープン、オーストラリアン女子オープンとオーストラリア開催のLPGAツアー2試合に参戦。いずれも1打差で予選通過を果たせなかった。1戦目の予選ラウンドを終えた時、彼女は「途中、心が折れそうだったが、自分の気持ちを奮い立たせて3つ戻すことができた(3連続バーディを奪取)。自分の心が成長できた」と予選通過は果たせなかったものの、未来に向けての明るさと、心の成長を自分なりに感じることができた1週間のようだった。まだこの時、彼女の表情には自信と笑顔があったのだ。

画像: 今年から米女子ツアーに参戦する河本結。ISPSハンダオーストラリアン女子オープンでは1打差で予選落ちを喫した(写真は2019年のエリエールレディス 撮影/大澤進二)

今年から米女子ツアーに参戦する河本結。ISPSハンダオーストラリアン女子オープンでは1打差で予選落ちを喫した(写真は2019年のエリエールレディス 撮影/大澤進二)

だが、2週目の女子オープンの予選ラウンドを終えた時、彼女は開口一番「現実は甘くない。途中、ダボを打った瞬間に夢を諦めなければいけないのかな、と思った」と心情を吐露。そして「去年の調子が悪かった時に比べれば成長しているが、今回は自分の精一杯のゴルフをしたにも関わらず、この結果。力不足ですね」と神妙な面持ちでうつむいた。

私は日頃、女子プロゴルフを取材する機会があまりなく、彼女に会ったのは今回で初めてだった。彼女は初対面にも関わらず明るく挨拶をしてくれ、気軽に話しかけてくれたキュートで素敵な女性。プレー中の態度や話し方などから、アグレッシブで強い人だな、と感じたが、そんな彼女にしては、この時は相当落ち込んでいた。

前週のVICオープンでは、予選落ちをしてもあっけらかんとしていたのとはうって違って、「夢を追いかけているだけではダメ。勢いで来たのは良かったが、ここを超えるか、諦めるかは自分次第。親やマネージャー、キャディさんに申し訳ない」と相当重く、今回の予選落ちを受け止めていたようだった。

「そんなに悪いゴルフはしていないのに、これでも予選落ちするなんて……。夢と現実は違うのかな。この2週間のゴルフで予選を通過できないというのは、自分の力不足もあるけど、世界との差なのかな」……きっと日本に帰る機中でも今回のこの想いが何度も何度も頭を駆け巡り、さぞかし苦しかったことだろうと推察するが、このような気持ちは必ず今後に向けて大きなバネになり、いい教訓になるものと思っている。

「まだ今年は始まったばかりじゃないですか。あと1打だったんですから、また次がありますよ!」……あまりにも落ち込んでいる彼女を思わず励ましたくなり、このような言葉を発してしまいそうになったが、その1打の重みこそがプロの世界で生きる選手たちにとって人生を左右するほど大事なものであり、今年はまだ始まったばかり、というのも素人考えであって、きっとプロたちにとってはシーズンの始めだろうが終盤だろうが時期などは関係ないのかもしれない。

3月にはアリゾナで「ボルビック・ファウンダーズカップ」が開催されるが、この舞台に立つ時には今回の苦しさ、悔しさを乗り越えて、納得いくまで練習を重ねて成長しているはずだ。心機一転、明るく強く自信を持って試合に臨んでほしいと思う。

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