昨年、プロ入り6年目にして初優勝を挙げ、その1カ月に2勝目。賞金ランクは11位とキャリアハイのシーズンになった柏原明日架。2019年を振り返り、来週から始まる2020年シーズンへの意気込みを語ってくれた。

焦りは「もちろんあった」

「プロ入りしてからずっと“勝ちたい”とは思っていましたが、“勝てる!”と思ったのは昨年が初めてでした。デサントレディースのときにはっきりと“今年は勝てる!”と思って。その試合は、結果はそんなによくなかったのですが(22位タイ)、「自分の形」みたいなものができた実感があったんです。いいショットが打てる回数が増えてきたり、自分の思ったところに打てたり。その翌週に勝てたのはびっくりでしましたけど。それくらい手応えのあるシーズンではありました」

プロ入り6年目の初優勝。勝ちたいとは思いながらも勝てない自分。そして下の世代の台頭――。「焦りはなかったのか?」と聞くと、「もちろんあった」と前置きをしつつ、意外な答えが返ってきた。

画像: 2019年シーズン、2勝を挙げた柏原明日架が今シーズンの目標を語る

2019年シーズン、2勝を挙げた柏原明日架が今シーズンの目標を語る

「でも、勝てない時間よりも、初優勝したあと、2勝目までの1カ月間のほうがよっぽどしんどかったです」

2勝目が難しいと言われるプロの世界で、初優勝からわずか1カ月後、2勝目を手にした。その1カ月がしんどかったというのはいったいどういうことか?

「まわりの人から『初優勝の翌週は予選落ちをする』とずっと言われていました。その意味がわかったというか……初優勝したときは、持っている力の全部を出し切って終わって、正直抜け殻みたいになってしまった。でも、そのまま次の試合に向かわなければいけなくて。体はめちゃくちゃしんどいけど、気持ちはある。体と気持ちが上手くコントロールできなかったんです。しかも、次の試合が日本女子オープンで、気持ちは『あれだけ言われているから、勝った翌週に予選落ちだけはしたくない!』ってなっていたんです。でも、予選は通りましたが、意気込んでいたわりに、結果があんまりだったので、めちゃくちゃ悔しかったです。このままじゃだめだと強く思いましたね。そう思ったら、体は疲れているけど休むのは不安になってしまって……その期間は自分で自分を苦しめていましたね」

その苦しさをぬぐうためには、“明確な目標”が必要だったと言う。漠然と2勝目を狙うのではなく、もっとはっきりとしたものが。柏原は「マスターズGCレディス優勝」を自身に課したのだ。

「できるだけ早い時期に2勝目を獲りたいと思ったら、普通にやっていたらダメなんだなと思いました。だから、具体的に目標を決め、そこに向かって進もうと考えたんです。マスターズGCレディスにした理由は、4日間競技で賞金が高いというのはもちろんですが、ランキング上位の選手がみんな出る試合だったから。強い選手がいる中で勝ちたかったんです」

画像: 2019年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンで初優勝を挙げ、マスターズGCレディスで2勝目を掴んだ(写真は2019年のマスターズGCレディス 撮影/岡沢裕行)

2019年のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンで初優勝を挙げ、マスターズGCレディスで2勝目を掴んだ(写真は2019年のマスターズGCレディス 撮影/岡沢裕行)

有言実行。“狙って”勝った柏原の目には当然、初優勝のときのような涙はなかった。最終的には賞金ランクが11位、“選ばれし者”のみが出場できる地元開催のリコーカップにも出場した。そして今年、それ以上の成績を自分も、そして周りも、期待する。

「今年はすごく楽しみです。自分にとってはチャレンジの年になります。一番はクラブ(シャフト)を全部替えたことですね。今まではずっと三菱さんにお世話になっていたのですが、このオフに初めて他社さんのシャフトをたくさん試しました。一年を通してどうなるのか、それはわからない。それがすごく楽しみです」

柏原は課題を見つけ出し、解決策を考える。それを自らできる選手だ。そして、彼女の課題は明確だった。「フェアウェイキープ率」と「パーオン率」。昨年のスタッツでは、フェアウェイキープ率は94位、パーオン率は88位と、賞金ランクから考えるとあまりにも低すぎる結果だった。フェアウェイキープできなければパーオンが難しくなるため、このふたつの数字は直結しているが、それにしても、だ。柏原は誰よりもその“弱点”を理解し、そのためのシャフト変更だと話す。

「どれだけ技術を磨いても、マネジメントを考えても、一年終わるとあまり数字がよくない。そんな年が2~3年続きました。でも、だからといってOBが多いわけではないんです。ほんの少しの部分だった。だから、クラブを替えてみようと思ったんです。今年はグラファイトさんの『ツアーAD TP』でシーズンを戦います」

長年同じシャフトを使っているプロがすべてのクラブのシャフトを替えるのは、とても勇気がいることだが、それを「楽しみ」と表現する柏原からは、自信がうかがえる。それは、5年以上ツアーの第一線で戦ってきた自信か、それとも昨年優勝を遂げた自信か。

画像: 「賞金ランクトップ10以内を目指したい」と2020年シーズンに向けて具体的な目標を挙げた(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

「賞金ランクトップ10以内を目指したい」と2020年シーズンに向けて具体的な目標を挙げた(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

来週から開幕する2020年シーズンでは新しい相棒と闘う柏原に目標を聞いてみると、力強い答えが返ってきた。

「昨年の自分を超えることです。具体的には“賞金ランクトップ10以内”を目指したいです。昨年は11位だったのですが、11位と10位では気持ち的にだいぶ違うんです。なんでもう少し頑張れなかったのか、すごく悔しい部分です。そう考えると、優勝することはもちろん大事なのですが、コンスタントに上位にいることがとても大事だと思っています。それが、シャフトを一新した理由でもありますしね。まぁ、期待しててください」

2020年シーズンからは渋野日向子を中心とした黄金世代に続き、昨季アマチュア優勝を遂げた古江彩佳や世界で活躍する安田祐香らが参戦する女子ツアー。新たな武器で戦う柏原明日架は再び輝くことはできるのか、開幕戦から目が離せない。

(後編は2月26日 6時半公開予定です)

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