あらためて「スウィングプレーン」について考える
前回は、ダウンスウィングの軌道には、スティープダウン、オンプレーン、シャローダウンの3つがあり、それぞれスティープダウン/オープンフェース、オンプレーン/スクェアフェース、シャローダウン/シャットフェースといったように、フェースの使い方との相関があるとお伝えしました。
最近の流行りはシャローダウン/シャットフェースですが、これは飛距離特化型。スティープダウン/オープンフェースは安定型で、ショートゲームに強い。そしてオンプレーン/スクェアフェースはバランス型。どれが正解ということはなく、選手のタイプによって異なります。
それをふまえて今回は、スウィングプレーンについて考えていきたいと思います。
スウィングプレーンといえば、ベン・ホーガン。著書「モダン・ゴルフ」のなかでホーガンは、「首とボールを結んだガラスの板」を割らずにスウィングしていると述べました。これが有名なホーガンプレーンです。
ですが、いま、一般的にスウィングプレーンといえば、構えたときのシャフトの角度、すなわちシャフトプレーンのことを言います。
このシャフトプレーンからスウィング中にクラブがほとんど外れないのが、ブライソン・デシャンボーです。
デシャンボーのアドレスを見るとハンドアップに構えたグリップエンドの延長線上に胸椎があり、その胸椎を回す動きでスウィングをしています。それに加えて飛距離の源である股関節の折り込みを使い、さらにはプロレスラーのように肉体そのものをパンプアップすることで、飛距離も出ます。
あまりカッコいいとは言えませんが(笑)理にかなっていて、私は21世紀型の1プレーンスウィングと呼んでいます。
それに対してバックスウィングとダウンで大きく軌道が異なる2プレーンスウィングの選手もいます。かつてはジム・フューリックがその代表ですが、現代でいえばやはりマシュー・ウルフの名前が挙がります。
バックスウィングではアウトサイドにクラブを上げ、切り返しでシャットな状態をつくり、インサイドからシャローにダウンスウィングするのが、その特徴です。
デシャンボーとウルフのスウィングは現代的なふたつの例。では、タイガー・ウッズの場合はどうでしょうか。実は、タイガー・ウッズとベン・ホーガンのスウィングを並べて比べてみると、どちらもオーソドックスなオンプレーンスウィングで、驚くほど似ていることに気付かされます。
ただ、両者にも違いはあります。それはトップでのフェースの向き。ホーガンがオープンフェースなのに対し、タイガーはそれよりもややシャット。これは、現代のドライバーがホーガンの時代に比べて大きく、約1センチも重心が長いからです。重心の長いクラブはフェースの開閉を行いにくいため、あまりフェースを開かないスウィングが合います。
デシャンボーやウルフなどの現代型スウィングの選手と異なり、100年前から続くゴルフスウィング理論に忠実なスウィングをしているタイガーですが、このように現代のクラブに合った動きを取り入れてもいるのです。
そしてタイガーといえば、その魅力はなんといってもスピンコントロールにあります。フェアウェイでもラフでも、芝が順目でも逆目でも、芝の種類がなんであれ、抜群のスピンコントロールでグリーンをとらえることが彼はできます。
昨年のZOZOチャンピオンシップの37ホール目、タイガーはティーイングエリアで思い切り左を向いて大きなスライスを打っていきました。“勝ちにきた”ときのタイガーのティショットはこのようにつねにスライス。それは、スピン量の多い弾道のほうがフェアウェイの幅に収まるからです。
勝負どころでアドレナリンが出たなかで、思ったよりもぶっ飛んでしまうスウィングではなく、優勝争いのなかでも球筋がコントロールできるスウィングをタイガーはしています。44歳になった今も、体調さえ良ければ彼がすごく強いのは、オーソドックスなスウィングでスピンをコントロールし、七色の球筋を操れるから。
100年前からある技術論をもとに、最新のクラブ、最新のドライバーに合わせたものがその時代のゴルフスウィング理論です。最新の道具でスピンを自在に操るタイガー・ウッズこそ、その体現者と言えるかもしれません。