トッププロたちを“コーチング”する
メキシコで行われたWGC世界ゴルフ選手権ではパトリック・リードが最終日に粘り強いゴルフを展開しツアー8勝目を挙げました。 そして1打差の2位はブライソン・デシャンボーでした。 この1-2フィニッシュの2人には共通点があるんです。2人が通った大学は異なりますが、実は指導した監督は同じ人なんです。
その監督は「ジョッシュ・グレゴリー氏」。 グレゴリー元監督はマスターズで有名なジョージア州オーガスタにある州立オーガスタ大学でパトリック・リードらを率いて2010年と2011年に全米学生団体戦を制覇しました。
その後、自らが通ったサザンメゾジスト大学(SMU)に移り、デシャンボーをスカウトします。デシャンボーは学生時代に全米アマや全米学生個人優勝を果たしました。
デシャンボーがグレゴリー氏が指導する大学を選んだのは「自分らしさを継続させてくれるから」と語っていました。グレゴリー氏は現在パトリック・リードを含めツアー選手10人をコーチングしています。 私はPGAツアー会場で選手やキャディー、そしてインストラクターなどを観察して取材を続けていますが、グレゴリー氏は試合会場で練習エリア/ドライビングレンジでスウィング指導をするティーチングプロとは指導方法が異なります。
「私の役目は選手が試合でパフォーマンスを高めるようにコーチングすることです。フルスウィングの技術的な相談にも応じますが、専門はショートゲームとパフォーマンス向上です。試合のデータをしっかりとチェックし、きちっとした練習メニューを作り、効率の良い練習を選手にさせることです。それぞれ各自のスウィングコーチやキャディと相談を重ねて信頼関係を築き上げていき選手の性格も理解してプランを立てていくんです」とグレゴリー氏は教えてくれました。
グレゴリー氏が教えてくれた練習方法を説明しましょう。まず練習をするエリアを4つに分けます。
【1】フルスウィング
【2】120ヤード以内の距離コントロールショット
【3】ピッチング、チッピング、バンカーショット
【4】パッティング
この4つを練習する時間を常に4等分します。
そしてそれぞれ各分野を練習するときには次の3つのやり方を実践します。
【1】テクニカル(細かいポジションのチェック)
【2】ランダム(同じ所から練習させずに常に状況を変えていく)
【3】コンペティション(ノルマを立てて目標をクリアできるように競わせる)
上記の方法をきっちりやっていけば「必ず上達してスコアは縮まっていくんです」グレゴリー氏の熱弁は続きます。
「ツアープロでもスウィングの細かい部分にこだわりすぎると上達を阻んでしまうんです。 同じ場所から連続でショットを打つことはないでしょうし、反復練習を重ねていても、試合で通用するという保証はありません。異なる状況やプレッシャーを加えることによって1打の重み、本番のシミュレーションをするように練習メニューを考えます。 練習時間を長くして疲れを残しても意味がありません。 効率よく練習をさせてそれをクリアすれば練習は終了。ダラダラと練習はさせませんよ」とツアープロを教える秘訣を説明してくれました。
パトリック・リードの関しては「彼の試合の準備の仕方やデータを収集して各分野のトップとどこが違うのか? という貪欲さや1打へのこだわりは本当に凄い」と話します。
「普段の試合でも1打1打を丁寧に最後まで諦めずベストを尽くします。 これまでの行動や発言で一般ファンには勘違いされてヒール役になってしまっていますが、上達したいという貪欲さは誰にも負けないでしょう。 飛距離や正確性に優れているわけでないですが、アプローチの種類と精度、バンカーショットのテクニックはトップクラス。1対1のサシの勝負は大学時代から本当に強いです。 ミスや負けることを怖がらないメンタル面の強さ、逆境であるときこそ集中力が増し力を発揮します」
先週のWGCでの優勝インタビューでリードは「ツアーのスケジュールで連戦が続いても好調子を維持してプレーを続けられるのはコーチがしっかりとした練習のスケジュールをしっかりと立てているからです。練習のし過ぎで疲労が溜まり最終日に力が出せなかったら意味がないですからね」と説明していました。
世界最高峰のプロが集まるPGAツアーでもやはり本音トークで会話をし、しっかりと導いてあげる存在は大事だと語るグレゴリー氏。 タイプ的には自分でアピールし、スポットライトを好むタイプではないからこそ職人魂たっぷりの魅力を感じました。
どちらかというと教え子はエリートタイプではなく、雑草タイプをレベルアップさせていきます。グレゴリー氏の教え子たちがさらなる飛躍していくのが楽しみですね。
名前を覚えておいて下さい。
【グレゴリー氏が指導するPGAツアープロ】
・パトリック・リード
・チャールス・ハウエル3世(今シーズンから)
・アダム・ロング
・ジェイソン・コークラック
・サム・ライダー
・ケリー・クラフト
・ドク・レッドマン
・キム・シウー
・ヘンリック・ノーランダー
・マイケル・グリーギック
【下部ツアー】
・デービス・ライリー
・ウィル・ザラトリス
他多数