プロやインストラクターでも「縦の力」が十分に使えていないことも
スウィングのエネルギーの源になるのは横方向、回転、縦方向の力の三つ。飛距離の出ないゴルファーは特に縦方向の力(バーティカルフォース)が使えていないという。地面反力とも言われるその力を、どうすれば使えるようになるのか?
セミナーのため来日した、スイスのオリンピックジュニアコーチを務めるグレゴリー・レブラに取材した。
レブラが来日したのは、二日間の日程で開催された米国有名コーチ、マイク・アダムスのバイオスウィングダイナミクスセミナーのため。実際、そこに参加したプロやインストラクターを計測しても縦方向の力を十分に使えていない者が大半を占めた。プロでも十全に使えていないなら、ましてやアマチュアをやである。
セミナーに参加したツアープロコーチ・井上透コーチは、「筋力の弱いジュニアゴルファーは縦の反力を使えていることが多いのですが、大人になってから始めたゴルファーにおいてはその力を使わなくても打ててしまうため使えていないゴルファーが多いのは事実です」という。
では、縦方向の力を使うには一体どうすればいいのだろうか? クラブは7番アイアンを使って打つ場合を基準にして教えてもらおう。
「まずチェックするのはスタンス幅です。広すぎるスタンス幅は横方向へのシフトを助長してしまい、回転力や地面反力を使いづらくしてしまいますから。スタンス幅をいつもより狭くすることで横方向へのシフトを少なくし、回転力を使う準備が整います」(レブラ)
次に地面反力を効果的に使うには、地面を踏み込むタイミングが重要だとレブラは指摘する。
「エネルギーの流れは、バックスウィングからの切り返しで横方向へシフトし、次に体を回転させることでクラブを振り下ろし、インパクトより前のタイミングで踏み込むことでクラブはボール方向に効率よく加速されます。切り返しからインパクトまでの短い時間にこの流れに沿って力を使うことが重要ですが、飛距離不足を感じているほとんどのゴルファーが、地面反力を使う前にインパクトを迎えてしまっているんです」(レブラ)
より具体的に言うなら「左腕が地面と平行な位置からシャフトが地面と平行になる位置までの間で踏み込みのピークを迎えていることが重要だ」とレブラは教えてくれた。
アドレスのふたつの工夫で、縦方向の力を体験しよう
では具体的に、いったいスウィングのどの辺りで踏み込みを始めればいいのか。それを知るために非常にわかりやすい例が、ロリー・マキロイのスウィング(画像B)だという。
トップから切り返し、ダウンスウィングを見てみると、まずバックスウィングで回転の力をタメて(画像B左)、切り返しのタイミングでターゲット方向へのシフトする横方向の動きが入ると同時に体が沈み込み(画像B中)、ダウンスウィングの中盤あたりですでに踏み込みを始めていて左ひざが伸び上がりつつあるのがわかる(画像B右)。
「この一連の動きはほんの一瞬の出来事なので、感覚としては切り返しの前には踏み込みが始まっているイメージですね」と言うのは、同セミナーに参加したプロゴルファー・中村修。
「大抵の人は、縦方向の力を使おうと左足を踏み込んでも、そのタイミングが遅過ぎるようです。そこで少しアドレスで微調整してみます。レブラさんが言うように、まずはスタンス幅を狭めること。そして、左つま先を少し内側に向けてアドレスすると、回転の力を使う動きが制限されます。この2つの微調整だけで、結果的に縦方向の力を使いやすくなりますよ」(中村)
トッププロのように大きく沈み込んで伸び上がる、なんて動きはそうそうマネできないが、細かい微調整だけでも縦方向の力は確実に扱いやすくなる。ぜひ試してみてほしい。
取材協力/PGST