女子ツアーの開幕戦は残念ながら中止となってしまった今週、三重県を舞台にギャラリーのいない“男子プロの試合”が開催されていた。出場したプロゴルファー・中井学が、その雰囲気と、そこで見つけた期待の若手男子プロについてレポート!

「日本プロ」は現在一次予選の真っ最中

三重県の名門コース「伊勢CC」で開催された、日本プロゴルフ選手権の一次予選に参加してきました。春の選抜高校野球大会は無観客での開催が検討されているようですが、この日本プロ予選はそもそもはじめからギャラリー入場不可の試合。「14日以内に中国・韓国に滞在した選手は予選会出場を認めない」という条件のもと、そのほかはほぼ例年の通りに開催されました。

試合会場では、中国・韓国に2週間以内に行っていないことを自己申告し、誓約書にサイン。私たちプロゴルファーは会社員の方のようにテレワークもできませんし、休業補償もありません。体が資本ですから、用心に用心を重ねて、マイカーを運転して伊勢まで足を運びました。

選手のなかにはマスクをしてプレーしている選手もいましたが、話を聞いてみると「花粉症対策です」とのこと。各自、消毒液を使ったり、うがい・手洗いを徹底したりと、感染対策に万全を期しながら、プレーに臨みました。

2日間で争われたこの試合、私は初日こそ強風のなかで粘り、予選通過争いに加わることができていましたが、2日目の雨のなかのプレーでスコアをまとめることができず、無念の予選落ち。個人的には残念でしたが、風と雨、連日の難しいコンディションのなかでアンダーパーでプレーしてきた期待の若手選手たちをご紹介したいと思います。

画像: 悪天候のなか2日間トータル8アンダーを叩き出した竹内廉(写真は2019年の日本ゴルフツアー選手権)

悪天候のなか2日間トータル8アンダーを叩き出した竹内廉(写真は2019年の日本ゴルフツアー選手権) 

まず、トップで通過した93年生まれの竹内廉選手。プロゴルファーであり、空手家でもあるという異色の選手で、2日間トータル8アンダーという好スコアを叩き出しました。私は一度AbemaTV(2部)ツアーで同組になったことがありますが、彼の魅力は平均300ヤードを超える飛距離。そして、ショットの切れ味はツアーでも屈指のものがあります。正直「こんなところに出てくるなよ」というポテンシャルの持ち主で、QT(予選会)ランク24位で迎える今年は飛躍に期待したいです。

そして、2日目に前の前の組でプレーしていた91年生まれの大堀裕次郎選手も印象的でした。後ろから見ていると、難しい場所から打っている姿が散見され、これは苦労しているのかなと思って見ていました。しかし、あがってみたら68のビッグスコア。多少曲げてもスコアを作れる。それはプロとして大きな魅力です。

画像: 大堀裕次郎は難しいライからショットしていたものの、スコアをまとめて上位フィニッシュした(写真は2019年の日本ゴルフツアー選手権)

大堀裕次郎は難しいライからショットしていたものの、スコアをまとめて上位フィニッシュした(写真は2019年の日本ゴルフツアー選手権)

この二人に限らず、実際にプレーするなかで見ていると、シードを持たない選手たちでも細かい技術は本当に上手い。そして、今は男子プロに逆風が吹いていますが、ピンチをチャンスにかえていきたいとみんな思っています。

ただ、逆にいえばその技術だけでプレーしているという面もあります。私が27年前、アメリカに渡った際、初めて所属したゴルフチームのコーチは「これからボールはソリッドになり、クラブはメタルになる。ゴルフは確実にパワーゲームになる」と開口一番言い、「さっそくベンチプレスをやれ。次は水泳だ」と私に告げました。日本では、そのどちらもゴルフのためにはNGと言われた時代です。そして、そのコーチの言う通りの時代を、いま世界のゴルフ界は迎えています。

その流れに正直日本の男子ゴルフが置いていかれているのは事実である一方、そのような状況に危機感を持ち、ハードなトレーニングを積んでいる選手がいるのもまた事実です。松山英樹選手に続く選手は、必ず現れると思います。そのために必要なのは、やはり「試合」です。だからこそ、プロたちはギャラリーのいない試合で、たとえ初日に叩いてしまったとしても、必死にプレーを続けるのです。

新型コロナウイルスの影響が社会を覆うなか、ギャラリーのいない試合でも、なにかをつかもうと必死にプレーする若手たちの姿に、改めて自分も負けていられないと思いました。

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