お店でフィッティングして最高の数値が出たドライバーをコースに持ち込んだら……あれれ、どうにも当たらない。そんな経験をしたことがある人は少なくないはず。「ドライバーは買ってからの『育成』が大事なんです」というプロゴルファー・永井延宏に、自身が実践する“育成法”を教えてもらった。

合うクラブを探すための「フィッティング」と「マッチング」とは?

毎年ゴルファーの心をくすぐるような口上で、新しいクラブが登場します。私もそんなたくさんの新製品の中から、気になる1本を選んで購入し、コースに持ち込んでいますが、本当に使いこなすまでには、けっこう時間がかかるモノです。今回は、そのあたりの「本当のクラブ選び」について、考えてみたいと思います。

さて、ゴルフクラブとゴルファーが蜜月の関係になるまでは、主に3つのステップを踏む必要があると思います。

まずは出会いの段階ですが、ここでは「フィッティング」が必要です。ゴルフ界では既に一般的になったこの言葉。ゴルフクラブメーカーや販売店などで、クラブ購入の際には積極的に行われています。これは洋服選びにたとえると、気になるブランドのシャツがあった場合、サイズを選んだり色味をあわせたりして、自分に合ったモノを選ぶ過程です。

画像: たくさんあるドライバーのなかから自分にピッタリのものを選ぶには……“育成”も重要?(撮影/姉崎正)

たくさんあるドライバーのなかから自分にピッタリのものを選ぶには……“育成”も重要?(撮影/姉崎正)

ゴルフクラブに興味があり勉強しているゴルファーなら、この工程は自分で行えるかもしれませんが、多くの場合はメーカーやショップのフィッターさんに仕立ててもらうことになると思います。

そして、次の段階が「マッチング」です。ここにはゴルファーが「こうなりたい」「こう打ちたい」
という意志がハッキリ関わってきます。この“意志”を明確に持っていない場合は、クラブに合わせて打つようになるので、フィッティングの段階でどれだけ「いいクラブを手にできるか?」が重要です。 いわゆる「一番飛ぶドライバー」の定義もフィッティングとマッチングでは違います。

フィッティングの場合は、最近主流の計測器で一番いい数値が出るクラブが「一番飛ぶ」となります。たしかにこれは間違いありません。しかし、マッチングの場合は、ゴルファーが一番歯を喰いしばって振ることのできるクラブが「一番飛ぶ」となります。

ウェッジ選びなどは特にこのマッチングが重要で、ゴルファーがどんな打ち方をして、どんな弾道のイメージを持っているか? よくプレーするコースのコンディションはどうか? バンカーの砂質や形状は? などとマッチさせることが大切です。

画像: ショップ等の計測器で数値が一番出るクラブを選ぶのが「フィッティング」。コースでその人のポテンシャルを最大限発揮したときもっとも結果が出るクラブを選ぶのが「マッチング」だと永井。その両方が大切だ(写真はイメージ)

ショップ等の計測器で数値が一番出るクラブを選ぶのが「フィッティング」。コースでその人のポテンシャルを最大限発揮したときもっとも結果が出るクラブを選ぶのが「マッチング」だと永井。その両方が大切だ(写真はイメージ)

このマッチングまでを含んでいるのが本当の「フィッティング」と言えると思います。先の洋服選びなら、フィッティングが単なるサイズや色味合わせなら、マッチングはスタイリストがTPOに合わせて「貴方の魅力を引き出すスタイリング」を提案してくれる段階。 これを実践しているフィッターもいると思いますが、極めて少ないのではないでしょうか?

ドライバーを自分にフィットさせる「ペアリング」

そして、この段階を経て、はじめて金銭の授受が発生して、新しいクラブを「自分のモノ」としてコースに持ち込むこととなります。 自分のモノとしてコースに持ち込んでから、最後の作業となるのが「ペアリング」です。

ゴルフコースにおける様々な状況の変化に対応するべく、ゴルファーは反応しているわけですが、その意識に対して正しくレスポンスしてくれるクラブかどうか見極める作業が必要です。

私が多くを学んだ古武術の世界には「気・剣・体の一致」という言葉がありますが、この「剣」を「クラブ」に置き換えると、ペアリングの意味が見えてくると思います。 一時、松山英樹選手のドライバー選びが難航しているという話題をよく眼にしましたが、このペアリング作業がうまくいかなかったのか? と思います。

ペアリングの段階では、もう計測器の数値から離れなければなりません。結果の確認ならいいですが、計測器の数値をペアリングの基準にしてはこの3つのステップが機能しません。 ペアリングの合格ラインは、自分のスウィングイメージどおりに身体が動いたと感じたときに、勝手に芯に当たること。まさに「気・クラブ・体の一致」です。

しかし、ここにたどり着くまでは、意外と時間がかかるモノです。はたから見れば、球は真っすぐ飛んでいるけど、無意識に芯に当たっているかどうか? は本人にしか分かりませんし、計測器でもはかり切れないでしょう。

そこに向けて、クラブとコミュニケーションを取りながら、自分の意思とクラブが一致してくれるまで、いわゆる育成期間が必要です。その間に、鉛での調整やグリップを換えるなど、いろいろと試行錯誤する訳です。

私は2月中旬にテーラーメイドのSIM MAX ドライバーを手にしましたが、そこから育成のラウンドが4回。約1カ月の試行錯誤を経て、やっと芯に当たるようになりました。これで無事一軍定着です。
またここから一軍メンバーとしての微調整が始まりますが……。

画像: フェースに残ったティの痕。どこにどんな向きで痕がついているかをよく確認すれば、打点やフェース向きなどが確認できる。この画像は著者本人のドライバーのもの

フェースに残ったティの痕。どこにどんな向きで痕がついているかをよく確認すれば、打点やフェース向きなどが確認できる。この画像は著者本人のドライバーのもの

これはかなり順調なほうで、過去にはどうにも芯に当たらずに、中古ショップ行きとなったドライバーもあります。

ドライバーのペアリング作業で重要なのは、フェース面を常にキレイにしておくことです。とくに感圧シートを張らなくても、ほとんどのドライバーのフェース面には、ボールがどこに当たったか? の痕が残ります。ティペグの痕もフェース面下部に残るので、それも参考になります。

自分がどんなイメージでティに立ち、それを受けてどんな感じでクラブを振って、何処に当たってどんな球が出るのか? を毎回チェックすることは無料でできます。高価な計測器は不要です。

次回は、より具体的な調整方法を紹介したいと思います。

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