今年の女子ツアーは、6月のオリンピック代表決定が最初の山場となるはずだった。米女子ツアーで実績を重ねる畑岡奈紗を中心に、渋野日向子、鈴木愛が代表圏内をキープする状況。他の選手にもまだ望みはある……という状況で、開幕戦からアクセル全開の戦いが展開されるはずだった。
しかし、オリンピックは延期が決定。代表選考がどうなるかはわからないが、もし選考の期限が予定通りに今年の6月ではなく、来年以降のオリンピック直前まで伸びたら……代表争いはますますわからなくなってくる。井上は言う。
「(代表選考が)延期されれば畑岡奈紗ですら出場枠から落ちるリスクはありますし、参加する選手が大きく変わる可能性がありますね。(新型コロナウイルスが収束しない場合)仮にオリンピックが1年後であれば、プラチナ世代などのツアールーキーにも出場のチャンスが出てきます」
ただ、井上は、女子ツアープロを多く指導する立場から「私たちにとっては女子ツアーが開催されない重みのほうが大きい」という。
「今の状況を目の当たりにすると、オリンピックは平和や健康の上に成り立つオプションみたいなものと感じています。日々のツアーがあってこそのオリンピック。通常のトーナメントが開催された上での4年に1度のオリンピックです。通常のトーナメントが開催され、オリンピックの時期も決定されて、初めてそこに目標設定できます。選手たちはオリンピックを目標設定にするというよりはファンの皆様と一緒にこの状況を乗り越えていこうという意識になっていると思います」
オリンピックがどうなるかも気になるが、女子ツアー選手、そしてその関係者にとっては現状はいわばメインの仕事場がクローズしたままといった状態。ウイルスの感染拡大が収まり、ツアーが幕を開けるその日が決まらないことには……ということだろう。
ただ、女子ツアーがいつ開幕するにせよ、それは昨年までと同じようにはいかないだろうと井上は危惧する。
「主催団体であるJLPGA(日本女子プロゴルフ協会)はツアーを開催するに当たって、新型コロナウイルスの感染者が出ることを前提で考えなければならないと思います。朝の検温など当然必要でしょうし、仮に金曜日に(選手などが)発熱し感染が見つかった場合にどうするか。クラブハウスの使用もかなり限定する必要があるでしょうし、発熱があった場合の2週間は出場を見合わせるような強制力を行使する必要があるかもしれません。感染者が選手本人ではなくコーチやキャディであった場合の濃厚接触の範囲の規定を決めるなど、ツアーを1年間開催する上で協会としてどこまで強制力を持った対応ができるのかが大事になると思います」
3日間、4日間開催される女子ツアー。たしかに、その最終日の朝に首位の選手が発熱した場合、どうするのか。前の日に同組でラウンドした選手は濃厚接触者となるのか……等々、たしかに考えなければならない問題、あらかじめ決めておかなければならない事柄は多岐に渡りそうだ。
「サポートする側からすると、自分が発熱したときや感染者になったときにどういうふうに選手に影響が及ぶのかというのは早く知りたいんです。1週間なのか2週間の自粛なのか、選手は2年続けて同じ試合を休んではいけないという規定もあるので、(仮に自粛期間中と当該トーナメントが重なった場合にどうするかなど)そういった細かい取り決めも必要だと思います」
いつから開催できるのか。それだけでも大問題だが、いざ開催! となったときに、いかにスムーズに、かつ安全に運営できるか、道のりは決して平坦ではない。一刻も早く日常が回復し、女子プロたちの華麗な戦いを見たいものだが……。