ティーとは「ティーペグ」の略称
ゴルフは各ホールに設定されたティーイングエリアからのティーショットでプレーが始まるわけだが、その際ティーペグという道具を用いてボールを地面から高い位置へ置き、ショットを打つことが認められている。このティーペグのことを一般的にティーと省略して呼ぶわけだ。
一般的なティーは、先端が尖っている側を地面に刺すことで固定し、もう一方の台座側にボールを乗せて使用する。この一連の行為をティーアップと呼ぶ。ティーアップできるのはティーイングエリア、またはローカルルールによって設けられた特設ティからショットを打つ場合のみ。
材質にもよるが、ショットの衝撃で折れてしまったりどこかへ飛んでいって失くしてしまうこともあるので、ラウンドの際は複数本用意しておくのがベターだろう。
ティーアップするメリット
ティーアップして打つメリットとは、前述したように地面よりも高い位置にボールを置けることにある。
まずボール位置が高いぶんだけ、地面に置くよりも打ち出しが高い。ボール手前の地面を叩くダフリのミスが起きにくいうえボールをアッパー軌道でとらえやすく、結果飛距離アップにもつながる。
また、ライの影響を気にしなくていいのも大きなメリット。たとえばインパクトの際にフェースとボールとの間に芝が挟まってしまうだけでもスピン量や弾道の変化、飛距離ロスにつながってしまう可能性があるが、ティーアップすればそういった面も気にしなくて済む。
ティーの長さはクラブによって変わる
主にティーショットで用いるドライバーはティーアップして打つことが前提のクラブ。ドライバーが適さない短い距離のホールでは通常地面から打つクラブであるフェアウェイウッドやユーティリティ、アイアンをティーアップして打つことも多い。
ティーアップ時のボールの高さは番手によって変わるため、プレーの際はドライバー用のロングティーとそれ以外のクラブで用いるショートティー、長さの異なる2種類を用意する必要がある。ショートティ―に関しては、番手によって地面に刺す度合いを変えることで微調整しよう。また、ロングティーとショートティ―の中間くらいの長さを持ったミドルティーも存在する。
ドライバー以外のクラブであってもティーイングエリアからのショットはティーアップして打つのが一般的だが、もちろん地面にボールを置いて打っても良い。ちなみにティーショットとは「各ホールの第1打目」を指すので、ティーアップしないまま打ってもティーショットと呼称する。
ティーイングエリアのどこにティーアップする?
ティーイングエリアの奥行きは2つのティーマーカーのもっとも前方を結んだ線から2クラブレングス、幅は2つのティーマーカーのもっとも外側の側面の間となっている(画像A)。この中であればどこにティーアップしても良い。
この範囲から、なるべくフラットで、かつ芝生が薄い場所にティーアップしよう。芝が伸びている場所ではティーアップの高さが視認しづらい。また、ライがつま先上がり、左足下がり……とホールごとに違うと毎度スウィングやスタンスを微調整する必要が生じるためだ。
ドライバーのティーアップ、高さの基準は?
ティーアップの高さもゴルファーによって違う。はたしてボールが地面から何センチの位置にあるのが正解なのか。
そもそもティーアップが「高い」「低い」というからには、ある程度の基準がある。ドライバーの場合、ヘッドの形状や大きさ、厚さにかかわらず、「ヘッド上部とボールの赤道の高さが同じ」であることがティーアップの高さの標準。
ここから、持ち球やスウィング軌道によってティーアップの高さを味付けしていこう。フェード系の人、球が低い人、ダウンブロー(アウトサイドイン)軌道の人は、低め=ヘッド上部よりボールの赤道が低くなるようにティーアップしよう。
逆にドロー系の人、球が高い人、アッパー(インサイドアウト)軌道の人は高め=ヘッド上部よりボールの赤道が高いティーアップが合う。
どれくらい高く・低くするのかはゴルファーのスウィングによっても変わってくるので、試行錯誤して自分に合った高さを見つけるのがベストだ。
ショートティーの高さはどのくらい?
ドライバー以外のクラブをティーアップする場合の高さの目安もそれぞれ見ていこう。
フェアウェイウッドの場合
フェアウェイウッドは5~10ミリの高さ。ティーの先が完全に出ている。
ユーティリティ~7番アイアンの場合
ユーティリティ~7番アイアンは5ミリ以下のティーアップで先が少し見えるくらいに。
8番アイアン以下の場合
8番アイアン以下はほんのわずかでOK。ボールを乗せるとティーが隠れるくらいが正解だ。
ティーの種類も様々
ティーの材質は木製、あるいはプラスチック製がポピュラー。後者に関してはゴルフを快適にプレーするために様々な工夫がなされた製品が存在するが、いずれもゴルフ用具規則において定められた以下の要件を満たす必要がある。
『ティーとは球を地面から高く置くためにデザインされた機器である。ティーは下記のようなものであってはならない。
・4インチ(101.6ミリメートル)を超えるもの。
・プレーの線を示すことができるようにデザイン・製造されているもの。
・球の動きに不当に影響を与えるもの。
・その他、ストロークをしたりプレーする上でプレーヤーの援助となるもの。
注:プレーヤーがプレーの線を示したり、その他の方法でプレーヤーのストロークを援助するような方法でティーとティーを並べたり、紐でつなげないことを条件として、芝の状態が厳しい場合の例外として、紐でつないだティーや紐でつないで地面に固定したティーをラウンド中に使うことができる。』
上の要件さえ満たせば形状は自由で、実際に市販されている製品のバリエーションも様々。最後に、いくつか具体例をご紹介しよう。
スタンダードな「ウッドティー」
まずはもっともスタンダードな形状と言えるウッドティー。これでゴルフに慣れ、今も変わらず愛用している方も多いのではないだろうか。木製のため折れやすいが、安価でコースのキャディマスター室に置いてある場合もある。
リフトティー
ボールを支点で支えることで、インパクト時のボールへの抵抗をより少なくした「リフトティー」。種類が非常に豊富で、インパクトの衝撃を逃がす可動式ヘッドタイプや、ショートティーと紐でつながっていて、ティーショットの際にショートティも刺すことでティーがどこかへ飛んでいきにくくなる紐付きタイプなど様々ある。
刺さずに置くだけ「プットティー」
タコの足のようなものが台座部分についており、地面に刺さず芝の上に置くだけでティーアップできるのがプットティー。
置くだけだからとてもスムーズにショットを行うことができる。冬場など、ティーが刺さりにくいときにも重宝してくれるだろう。刺さずに置くことでインパクト時の抵抗も減るという。いつでも同じ高さでティーアップできるのも大きなメリットだ。逆に言えば、地面に刺さないので高さ調節ができないことが欠点だろうか。
折りたためる「ポケッティー」
ポケッティーは折りたたむことができるティー。台座部分にはスリットが入っていて、折りたたむことで地面に刺す軸の部分が収納できるようになっている。
ラウンド中はズボンのポケットにティーをしまうゴルファーも多いかと思うが、ポケッティーは折りたためるのでかさばらないし、取り出すときに指やズボンに刺さってしまう心配もない。この構造は機能面も兼ね備えていて、インパクト時に台座部分が折れ曲がることで、抵抗を少なくする工夫がなされている。
台座部分がブラシの「ブラッシュティー」
ティーの台座部分がブラシ状の素材でなっているのがブラッシュティー。ボールと接する面積が少なく、柔らかい材質なのでインパクト時の抵抗も減る。低スピンで飛距離・方向性アップを謳うティーだ。
斜めに刺す「ナナメッティ」
その名の通り、軸の部分が斜めになっているのがナナメッティという商品もある。ティーアップすることでボールが飛球線方向前方に位置するので、インパクトの際の抵抗が減り、低スピン・飛距離アップにつながる構造となっている。
ボールだけをインパクトできる「オフセットティー」
オフセットティーは、台座部分がアイアンでいうグースネックのようになったティー。ナナメッティとは逆に、ティーの軸よりもボールが飛球線後方に来るように刺すことで、ボールのみをインパクトできるという代物だ。
USPGAツアー使用率No1! 飛んで曲がらない、地球にもやさしい「エポックティー」
USPGAツアー使用率No1(ウッドティー除く)のハイテクティー。2016年のライダーカップの公式使用ティーで全参加プロに配布され、多くのメジャーツアーで推奨ティーとして使用されている。
ボールとの接地抵抗を90%以上軽減し、ディンプルに引っかからないのでサイドスピンがかかりづらい。
素材が麦主体の炭水化物だから、折れて土中に残っても微生物が完全に分解。また、燃やしても有害物質が発生しないので、既存のプラスチック製ティーと比べ環境にやさしいのもポイントだ。
ティー選びに「これが正解」というものは基本的にない。プロのようにウッドティーを使うのもいいが、毎回ティーアップの高さを調節したりするのは手間だし、折れやすいからたくさん用意する必要もある。
なくなりにくさはコスパの良さにも直結するから、それを基準に選ぶのもアリだ。置くだけといったタイプならばストレスなくラウンドできるだろうし、心理的にショットしやすく感じられるティーもなかにはある。
自分のプレースタイルに合わせて、自由に選ぶのが正解だ。