緊急事態宣言が発令され、感染防止のために人と人の間に適切な距離を保つことが重要となっている。その距離、約2ヤード。「その距離感にゴルフの極意がある」というのはプロゴルファー・永井延宏。伝説のプロたちが脈々と伝える技術論を、改めてひもといた。

感染防止にも、ゴルフにも「2ヤード」の距離が重要

いよいよ新型コロナウイルス感染に対する緊急事態宣言が発令され、ウイルスとの戦いはまた次なる段階へと進んだ感があります。

近い将来、これが勝利宣言に向けての一歩となったと振り返ることができるのを切に願いながら、私もレッスンで使用している都内のゴルフスタジオが休業に入ったので、自宅ベースでいろいろと発信していきたいと考えています。

さて、コロナ問題、日に日に感染者数が増えているということは、それだけウイルスが存在している総数も増えて、より身近に迫っていると理解すべきです。ゆえに、人と人の接触機会を減らすのが目的のこの宣言。人と人の接触を、各自約8割減らすのが目標とのこと。

法的な拘束力によるロックアウトではないので、この宣言下でも2割の接触は想定しています。なので、家から出て人と接触する際の感染予防には、その距離感が大切になると思います。ウイルスの飛沫感染を防止するための人との距離感は、各国によって推奨される数値が違いますが、概ね1から2メートル。ゴルファーなら2ヤード。約ワンピンの距離です。これはソーシャルディスタンスと呼ばれています。

この2ヤードの距離がウイルスから我々を守ってくれるのですが、まさにゴルフでも極意です。

マスターズ6回連続予選通過のレジェンドが伝えた「ワッグルによるチップ」

私が2ヤードと聞いて思いつくのは、陳清波プロから学ばせて頂いた、ワッグルの動作を使ったショートチップ。今から約20年前、週刊ゴルフダイジェストの連載ページ「陳清波のファンダメンタルズ」の聞き手役をやらせて頂き、約2年半ご一緒させて頂きました。

陳先生は、効率のいいスウィングにはコッキングが不可欠と唱え、ピッチングウェッジでのショートチップをドリル的に位置づけています。ワッグル動作による2ヤードのチップで正しい仕組みを理解させ、「ドライバーを飛ばしたい」「スライスを直したい」というゴルファーの声に対して、その解決へと導いています。

画像: コッキングを使ってチップショットする陳清波。ここにゴルフの極意があると永井は言う

コッキングを使ってチップショットする陳清波。ここにゴルフの極意があると永井は言う

実は、このコッキングによるチップショットは、近代ゴルフ史の中を脈々と流れる王道的な技術でした。

陳先生は1963年から6年連続してマスターズに出場し全て予選通過。美しいスウィングと正確なショットで「東洋のベン・ホーガン」と呼ばれました。

その陳先生は、台湾代表としてイングランドのウエントワースでおこなわれたワールドカップに参加した際に、アメリカ代表で参加していたベン・ホーガンをずっと見て勉強したそうで、その時にウエッジショットの練習に励むホーガンから、コッキングの極意を見て盗んだと語っていました。

そしてホーガンの著書の中には、若い頃、トーナメントで先輩のジョニー・レボルタ(1935年全米プロ優勝・通算28勝)と一緒に回った際に、グリーン周りからのショートチップをワッグルの動作でさばくのを見て感銘を受け、そこからコッキングの研究に入ったとの記述があります。

若き日のホーガンは、飛距離は出るものの、フックグリップでのオーバースウィングで、ボールコントロールに難がありました。今、YouTubeで検索すると、その頃の大きなスウィングのホーガンも、たしかに見られます。

画像: 数々のメジャータイトルをつかんだベン・ホーガンの若き日のトップ

数々のメジャータイトルをつかんだベン・ホーガンの若き日のトップ

それが成熟期では、オンプレーンで緩みのないコンパクなトップから、正確無比なショットを放ち、数々のメジャータイトルに勝利します。

そこには、かなり大きなスイング改造の痕が見えるわけですが、スウィングの仕組みから考えると、あれだけ大きな変化を成し遂げたのは、ホーガン自身が語るように「コッキングの研究」に他ならないと思います。

となると、このコッキングという技術は、30年代のレボルタ・40年~50年代のホーガン・60年代の陳先生と、近代ゴルフの歴史の中で、時代のトップ選手たちに受け継がれている王道的な技術となります。

コックを使ったワッグルだけで打つ。そこにゴルフの極意あり

その仕組みを学ぶのが、キャリー2ヤードのショートチップです。コッキングはテコの原理ですが、その仕組みを理解しながら、ヘッドの重さで打つなどゴルフクラブの機能をスウィングに取り込むことも学べ、始動のタイミングやフットワークによるリズムなど、フルスウィングつくりの基礎となります。

陳先生の2ヤードのチップは、「コツン!」と厚いインパクト音がします。これには後輩の若いプロが、「何ですか、あれは?」と目を丸くしていました。2ヤードで学ぶ厚いインパクトが、300ヤードのドライバーショットへとつながるのです。

実戦を想定すると、ゴルフコースをプレーしながら、キャリー2ヤードの状況に遭遇した時、それをソツなくこなすのは、スコアメークの要になります。

プロの試合を見ていても、緊迫した優勝争いの中、ショートチップをミスしてボギーを打ち、流れが変わって脱落していく選手はよく見かけます。

シャローイングや地面反力などもいいですが、コッキングのような本質的な技術は大切にすべきです。みなさんも、コースでショートチップがうまくいかないのに、腰を据えて練習することはないと思います。

こういう小さな技術や仕組みの組み合わせが、結果として効率のいい大きなスイングへとつながります。何か今の社会で求められていることと、同じに感じます。とりあえず、ソーシャルディスタンスの啓蒙と、みなさんのゴルフ上達のキーワードは「2ヤード」です。

画像: オーダーメイドウェッジ研磨の一部始終 youtu.be

オーダーメイドウェッジ研磨の一部始終

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