昨年はケプカが池につかまりタイガーの復活優勝をお膳立て
オーガスタの12番は世界でもっとも有名なパー3といって過言ではない。背景にはピンクと白に咲き誇るアゼリア、グリーン手前に白砂のバンカーとクリーク。そして左手に優美な曲線を描くホーガンブリッジ(橋)が静かに佇み戦況を見守っている。
距離は短いがピッチングウェッジから7番アイアンまで幅広い選択肢がある。厄介なのは風のジャッジ。同じ組の選手が9番アイアンでオーバーしたのを見てピッチングで打つとクリークの餌食に、なんてことは日常茶飯事だ。
記憶に新しいのは2016年、ディフェンディングチャンピオンのジョーダン・スピースが3打リードで迎えた最終日の12番。連覇は確実と思われながら1打目をクリークに入れてからまったくスウィングのリズムが狂いこのホールで『7』。ダメージから立ち直ることなくダニー・ウィレットに勝ちを譲った。
しかし上には上がいるもので12番のワーストスコアは『13』。世界一美しいスウィングといわれ現在はコース設計家としても有名なトム・ワイスコフが1980年の第1ラウンドでクリークに5回打ち込み『13』という数字を歴史に刻んだ。
60年前(1959年)にはアーノルド・パーマーが最終日5打リードしながらここでトリプルボギーを叩き優勝を逃したことも。
そして昨年はグリーンジャケットを争う有力選手が右手前のピンに翻弄され次々とクリークの餌食になった。最終日の11番を終えてトップと2打差につけていたメジャー3勝(当時)のブルックス・ケプカもクリークにつかまりダブルボギーを叩いている。
フランチェスコ・モリナリ、トニー・フィナウも同様に手前に落としてダブルボギー。結果としてタイガー・ウッズの世紀の復活劇のお膳立てをしている。
ケプカは上がり6ホールで3アンダーと巻き返しタイガーに1打差まで迫ったが「(12番のティショットは)狙い通りに打った。ただ思ったより少しだけ右に飛び上空で巻いていた風に押し戻された。あそこは風がどんないたずらをするかわからない。一瞬空中で球が浮いてそこから落ちてきた」。もし12番のダブルボギーがなければメジャーキラー、ケプカの頭上に栄冠が輝いていたかもしれない。
だがそうはならなかった。昨年に限っては気まぐれな風さえタイガーの味方。ある意味宿命的勝利を演出したのは12番ホールだったといえるかもしれない。
ちなみにタイガーは恒例のチャンピオンズディナーが行われる火曜日に家族との会食風景をツイッターにアップしている。ガールフレンドのエリカさんと2人の子供とともにテーブルを囲み「家族といるのが至福」と笑顔。11月に連覇したとき改めてこの笑顔が見たい。