ゴルフクラブのグリップは、スウィングにも影響を与える重要なパーツ。素材や硬さ、太さ、重さによって、握り心地・振り心地はどう変わるのだろうか。まとめて解説した。

ゴルフグリップは「滑り止め」の役割を果たす

ゴルフクラブにおけるグリップとは、シャフトに接着された持ち手部分のこと。スウィングの際にクラブが手から滑ったりズレたりしてしまわないよう、しっかりと握るための道具だ。

画像: グリップには様々なバリエーションがあり、握り心地や振り心地に影響を与える

グリップには様々なバリエーションがあり、握り心地や振り心地に影響を与える

グリップは体とクラブの唯一の接点であるため、非常に重要な道具と言える。グリップの素材、硬さや太さ、重さによってクラブの握り心地や振り心地が変わり、スウィングにも少なからず影響を与えるからだ。

そして、ウッド類やアイアン、ウェッジなどスウィングするクラブに装着するグリップは、ヘッド側に向かうにつれて細くなっていくテーパー形状になっているのが一般的だ。

グリップには寿命がある

グリップはそもそも滑り止めのためにあるので、滑るグリップは論外だ。グリップがつるつるに磨耗していると、滑らないように強く握る必要があり、腕に余計な力が入ることにつながる。そうなれば、当然ながらスウィングにも悪影響を及ぼす。

グリップは使い続けると摩耗し劣化していく。また、素材によって度合いは異なるが、ラウンドをしていなくても経年劣化していく。

そのため定期的なグリップ交換は必須。使用頻度によって変わるが、一例として、ゴルフグリップメーカーの大手ゴルフプライドは『一年に一度、または40ラウンド』を交換の目安としている。

グリップ交換はゴルフショップで専門のスタッフにお願いすることもできるし、道具さえそろえれば自分で行うこともできる。

グリップの素材

グリップにはいくつかの種類がある。まずは素材だ。ゴム素材を主としたタイプと樹脂系素材を主としたタイプがあり、それぞれに特色がある。

ゴム系は、昔から存在するタイプで弾力がありフィット感に優れたモデルが多い。ゴルフプライドのツアーベルベットラバーなどが代表格だ。

画像: ゴルフプライドの代表的なゴム素材グリップ「ツアーベルベットラバー」

ゴルフプライドの代表的なゴム素材グリップ「ツアーベルベットラバー」

対する樹脂系は柔らかめのモデルから硬めのモデルもあり、設計自由度が高いのが特徴。イオミックやNo.1などが樹脂で作られている。

画像: 樹脂素材で作られたグリップは、イオミックなどが有名

樹脂素材で作られたグリップは、イオミックなどが有名

どちらも一長一短あり、どちらが優れているとは言えないが、一番の違いは劣化の仕方。ゴム系は使い込んでいくと徐々に硬くなっていき、ツルツルした感触になっていく。樹脂系は硬さや使用感は変わらないが、削れて行くので指の形などがついてしまう。握り心地はそれぞれ好みがあるので、実際にゴルフショップなどで触ってみると良いだろう。

グリップの硬さ

グリップの好みを大きく左右するのが硬さ。硬め・柔らかめは素材に関係なく存在していて、好みで選ぶことができる。

グリップが硬いと指先の感覚や力がダイレクトにクラブに伝わりやすくなるため、微妙な操作がしやすくなるメリットがある。ミスした時の感触などもダイレクトに伝わってくるのでフィーリングを重視するゴルファーには良いだろう。

反対に柔らかめのグリップは、強く握るとグリップが変形するため力みが分かりやすく、力みづらくなるのがメリット。どうしても力が入ってしまうという方におすすめだ。

種類によっては右手で握る部分と左手で握る部分の硬さ(素材)を変えているというものもある。左手はギュッと、右手は軽く握りたいという人はこのような複合素材系グリップが合うケースもある。後述するように、左手部分だけコード入りで硬い、というモデルもある。

グリップの太さ

グリップの太さもフィーリングやヘッドの操作性に影響を与えるポイントのひとつだ。グリップを太めにすると、手首の動きが抑えやすく方向性が安定しやすい。手首を使い過ぎてしまうといった悩みを抱えている人にはおすすめだ。

反対に細くすると手首が使いやすくなるので、飛距離を重視する方におすすめ。振り遅れなどの症状が出ている方も試してみる価値はある。

グリップの太さは、「M60」「L58R」など、アルファベットと数字の組み合わせでスペック表記される。M・Lはメンズ・レディース用、数字はグリップの内径(ex.58ならば0.58インチ)、末尾のRは後述するバックラインの有無を表す。

同じモデルならば、内径が変わっても外径は変わらない。つまり内径が短いモデルほどグリップは太くなるというわけだ。

ただし、実際のグリップの太さはシャフトのバット径(グリップエンド部の直径)に対してどの程度の内径のグリップを選ぶかによっても変わる。

たとえばM58のグリップはバット径が0.58インチのサイズに挿したときに適切な太さとなるモデルだが、グリップは伸縮する素材でできているため0.60インチの太めのシャフトにも装着することができる。

つまり結果、グリップの内径よりもバット径が長いシャフトに装着すればより太くなり、逆ならば細めの仕上がりになるというわけだ。

グリップの重さ

グリップの重さもスウィングに大きく影響を与える。標準的な重さは50グラム前後だが、クラブ設計によっては純正グリップでも20グラム台の軽さのモデルから80グラム台の重めのものまで幅広い。

グリップ重量が重いほど、相対的にヘッドは軽く感じられる。手元がブレにくいためスウィングは安定しやすい。

一方、グリップが軽量であればヘッドが重く感じられ、ヘッドが返りやすくなる。ヘッドスピードが出やすく飛距離が出やすいが、そのぶん手元の安定性が欠ける。

グリップにこだわり、交換を検討しているなら、安定性と飛距離、重視したい項目によってグリップ重量を選択すると良い。ただし、グリップの重量が変わることでクラブ全体の重量バランスが変わり、振り心地に大きく影響を及ぼすため、交換する際は注意が必要だ。

意図的にバランスや重量を変えるならともかく、握り心地だけを変えたいのなら元のグリップ重量と差が出ないように気を付けよう。同じ商品でも個体差があるため、こだわり派のゴルファーは工房などに依頼して、正確に同じ重さの個体を選んで装着してもらう、なんてこともある。

握りやすさを補助する「バックライン」と「コード」

バックライン

スウィングするグリップにはバックラインと呼ばれるグリップ裏側に真っすぐで盛り上がったリブを組み込むことが許されていて、このバックラインがあるものとないものが存在する。多くのモデルで両方をラインナップしており、選ぶことができる。

画像: 真ん中少し下に見える部分がバックライン。開いてみるとよくわかる(撮影/田中宏幸)

真ん中少し下に見える部分がバックライン。開いてみるとよくわかる(撮影/田中宏幸)

市販されているクラブに標準で装着されているグリップはバックラインがあるものが多いが、シャフトの向きを変えてヘッドの向きを調整するタイプの弾道調整機能を持つクラブには、バックラインがないタイプのグリップが装着されている。シャフトの向きを変えた時に、握り心地が変わってしまうためだ。

このバックラインがあると握った時に盛り上がった部分が指に引っかかるので毎回同じように握りやすくなるというメリットがある。ただウェッジなどでフェースを開いたりして構える時に気になる場合もあるのでウェッジだけをバックラインなしにするケースもある。

コード

グリップの中にコットン繊維などでできたコード材を織り込んだものがコードグリップ。織り込まれたコードの分、グリップは滑りにくくなっているが、硬めの仕上がりになりやすい。

画像: コードグリップ

コードグリップ

グリップ全体にコードが入った「フルコード」、左手で握る部分にコードを入れ、右手で握る部分にはコードを入れず柔らかさを保った「ハーフコード」とバリエーションは様々ある。

パター用グリップは形状の規定が異なる

グリップにはいくつかの種類があるが、『パター以外のクラブは、グリップの横断面が円形でなければならない。』とゴルフ用具規則で定められているため、ウッド類、アイアン、ウェッジなどスウィングするクラブのグリップについては大きく形状は変わらない。

しかしパターのグリップに関しては、ドライバー、アイアンなどスウィングするクラブのグリップと形状の規定が異なっている。ゴルフ用具規則では『パターのグリップは、横断面に凹面がなく、左右対称で、グリップの長さ全体にわたって概して同形であることを条件として、円形でない横断面をもつことができる』とされている。

画像: パターグリップは横断面が円形でなくても良いため、様々な形状が存在する

パターグリップは横断面が円形でなくても良いため、様々な形状が存在する

よって左手で握る部分が傾斜している「ピストルグリップ」や、グリップが太く平らな面を持つ「スーパーストローク」など、スウィング用のグリップとはまったく違う形状を持つモデルが存在するわけだ。

パターグリップも安定したストロークを実現するために絶対にこだわるべきだ。パターグリップのチェックすべき点は握りやすさはもちろん、太さ、重さにとくに注目したい。

太さは、スウィングするグリップ同様、太いほど手首などの動きを抑える効果を持つ。手首や腕の動きを抑えて肩でストロークしたいなら太めが良いだろう。反対にインパクトでタッチの強弱をつけたり、とっさのアジャストをしたいなら細いモデルがおすすめだ。タイガー・ウッズがピンの“ピストルグリップ”を装着しているのは有名だが、今の基準でいえば間違いなく細グリップに分類される。

重さは、振った時のヘッドのバランスに大きく影響する。重いグリップを入れるとヘッドの重さが感じづらくなるため、クイックなテンポで打ちやすくなる。反対に軽いグリップを入れるとヘッドの重さを感じやすくなるため、ゆったりとしたテンポで打ちやすくなる。自分の振りやすいテンポに合わせて選ばないとテンポが狂いストロークの再現性が低くなってしまうのだ。

このようにグリップは自分の欠点を補ったり、余計な動きを抑制したりすることもできる。何でも良いと思っている人は損していると言い切ってもよいだろう。ぜひ次に交換する時は、しっかり吟味をして選んでみてはいかがだろうか。

※2020年4月16日11時05分 文章を一部修正いたしました

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